ドリーム小説

俺の不在は関係各所にすごい迷惑を掛けたらしい。

執事に懇々と怒られて並盛でしばらく大人しくしているようにと厳命された。

すると何でか続々といろんな人が俺に会いに来て俺の無事を確かめては愚痴られた。

半年くらいで大袈裟だなぁと漏らすと、三倍返しでなじられるから口を噤むことにした。

俺は賢い大人なのだ。

それからみんなの顔を見て帰りたがるのだが、ファーストインパクトは相当なものがあるらしい。

今日も今日とて誰かとんでもない人が来たようで、チャイムに対応したが悲鳴を上げて帰って来た。




「父さーん!!何か黒くて怖いのが玄関に居た!!」




俺を盾にするを宥めながら玄関に向かう。

家のチャイムを鳴らす律儀な敵襲はないはずなので、多分いつも通りの来客だろう。

でも我が家に来るやつらなんて大概怖い顔ばっかだから仕方ないよなぁ。

開け放たれたままの扉の前に立ち尽くす黒ジャケットの男に俺は思わず笑ってしまった。

目を丸くしてじっとを見つめる姿が意外すぎる。




「とりあえず入れよ、ザンザス」




俺はきちんとチャイムを鳴らしたザンザスにしみじみとしていた。

だってこいつ以前は住宅街にある我が家にヘリで乗り付けて瓦を飛ばして怒られたり、

チャイムが押せなくてウロウロしていたらご近所さんに通報されたりしてたもんなぁ。

とりあえずザンザスを家に上げると、俺は玄関からジッと外を窺った。

うん。とりあえずご近所さんには迷惑かけてなさそうだ。

いやしかし、何で我が家に来るやつみんな我が物顔で俺の部屋目指すかな・・・?

ズンズン歩いていくザンザスの後ろ姿を見ていると、俺にくっ付いてたが不意に俺の服を引いた。




「ねぇ、父さん。あの人、何か付けてない?」




そう言われて俺はが指差す方に視線を向けると、確かにザンザスの背中に何か付いていた。

ハッとして見つめる先には小さな青虫がいた。

嘘だろ、お前何で背中に青虫乗せてんの?!




「・・・良く気付いたな。あれは虫だな」




この辺りは並木道多いからなぁ。

その下を通って来た時にでも連れてきてしまったんだとは思う。

けど、これどうするよ?

お前、青虫付けてるぞ?なんてザンザスに言えるわけないよな。

言われたら恥ずかしいだろうし、当たり障りなくこの状況を回避するにはやっぱここは子どもの力がいると思うんだ。




「お前、何とか出来そうか?」

「む、無理だよ!」

「そうか?ただの虫だぞ?」

「俺は貧弱なの。父さんと一緒にしないで」




えー?最近の子どもは案外虫とかダメらしい。

俺も得意ではないけど、青虫くらいならまだ平気だ。

仕方ない。俺がやるか。

意気込んでザンザスの背中を見つめた瞬間、ザンザスが咽喉を鳴らして笑って振り返った。




「ククッ。やっぱテメェのガキだな、




何の話だとと二人で首を傾げるとザンザスはゲラゲラ笑って虫の話だと言った。

え、何、お前気付いてたの?!

気付いてて背中に青虫乗せてんの?!マジか!!

俺とは目を丸くして背中の青虫を見つめる。




「気にすんな。ジジイん所からついて来てるやつだ。放って置け」




えーーー?!9代目の所から付けてんのその青虫?!

というか、我が家に青虫連れて来ないで欲しいんだけど?!

え、これどうしよう。本人が放って置けって言うんだけど、全然よくないんだけど?




「全然よくない。ウチにそんなもの連れてくるなよ」

「まぁ、テメェの所の番犬が何とかするだろ」




意味不明すぎて首を傾げてる俺にが小声で多分あの人勘違いしてると呟いてきた。

うん。そうだよな。ウチには犬なんていないもんな?

意味が分からないのは俺も一緒だよと俺は息子を慰めるように頭に手を置いた。

しかし、困った。青虫どうするか?

すると向こうからキーンがタタタタと走り来てザンザスの背中目掛けて跳んだ。

思わぬ事態にあんぐりと驚いていた俺達はその瞬間を見てしまった。




「( キーンが青虫、食ったーーーー?! )」




ザンザスの背中を足蹴にその尖った嘴で虫を咥えて廊下に着地したキーン。

とんでもないものを見て固まっていた俺達を余所に、キーンは不機嫌そうに嘴を振って青虫を豪快に吐き出した。

あ、うっかり本能で捕まえたものの不味かったんだ・・・。

庭の植え込みに消えていった青虫を視線で追い、興味を失ったように走り去るキーンを見送る。

微妙な沈黙の中、が声を漏らす。




「あ。キーンが退治したのかな・・・?」

「・・・違うな。もっと手の早い奴だ」




何だか分かり合ってるように話す二人に首を傾げるしかない。

何の話してるの??ねぇ?

いつの間にか距離が近くなってる二人は、お土産の肉を焼いて食おうと楽しそうに話していた。

あれー??最近こういうの多くない??

この後、バーベキューのはずが調子に乗って死ぬ気の炎で着火させたザンザスにより、

バーベキューならぬキャンプファイヤーに強制移行していろいろ怒られることになったが、

まぁが楽しそうだったからよしとしようか。


* ひとやすみ *
・ご無沙汰してます!皆様いかがお過ごしでしょうか?
 久々にボスが出ました!そしてデジャヴな虫の話です。息子はちょっと毛色が違いますが
 楽しんでいただけたら幸い!次は息子視点載せられるかなー??
 更新の遅いサイトですが、ぜひまた遊びに来てやって下さいませ!                       (19/05/06)