ドリーム小説

険しい顔をしたが俺に向かって身構えている。

その背後には涼しい顔をした恭弥がいて、何でこうなったんだっけと今ものすごく俺は戸惑っている。

よく分からないが、恭弥に何かアドバイスを貰ってそれを試してみたいのだと思う。

何をする気か分からないけど、いつの間にか仲良くなったみたいだしまぁいいか。




「いつでもいいぞ」




ちょいちょいとを煽ると、迷いなく真っ直ぐに突っ込んできた。

鳩尾狙いでひたすら繰り出される拳を右手で払いのけて避ける。

うーん。やっぱり愚直と言っていいほどに単純な攻撃だなぁ。

それだけだと右手だけで避けられるよ。

おまけとばかりに、左手でデコピンしてやったら後ろに仰け反っていた。




「うわっ、何それいってぇ!」




額を押さえて呻くに小さく笑う。

デコピンくらいで大袈裟だなぁ。

恭弥も昔同じようなこと言って騒いでたっけ。

懐かしさに微笑ましく思ってほのぼの見てたら、恭弥が真面目な顔をしてに頷いていた。




「兄さんのアレは他が疎かになると飛んでくるよ。きちんと避けないと死ぬよ」

「分かった」

「・・・大袈裟だな」

兄さんは黙ってて」




え、何で俺たかがデコピンで責められてんの?

しかもお前ら何でそんな理解不能な物を見るような目で俺を見るの?

何か仲間外れで寂しい・・・。

は再び気合いを入れ直したのか、キリっとした顔になると突っ込んできた。

今度はいろいろな攻撃を混ぜ込んできたので、両手両足使わざるを得なくなった。

ちゃんと考えて偉い偉い。

すると膝蹴りを繰り出したを上体を反らして避けると、そこからつま先が胸元に伸びてきてビビった。

だがまぁ、子どもの足なので顔には届かないしと俺は完全に油断していた。

首を反らして避ける手段を取ったことが裏目に出た。

次の瞬間、さらにそこから思わぬことが起きた。




「( 靴を飛ばした・・・?! )」




蹴り出された伸びた足から靴がすっぽ抜けて顔面めがけて飛んで来たのだ。

とっさに伸びた腕で靴を弾いた瞬間、顔面に砂が降り注いできた。




「(せっこ・・・!!靴の中に砂を仕込んでやがった・・・!)」




視界を邪魔する砂に目を細めながらの背後で意地悪く笑う恭弥が見える。

全くろくでもないこと教えやがって。

靴を弾いた腕で砂を払いのけながら、降りゆく息子の片足を掴む。

焦って慌てて繰り出したの拳を腹に貰うが、腰が入ってないのでほぼ無傷だ。

そんでちょっとばかし腹の立った俺は足を掴んで宙吊りにしたをそのまま恭弥に向かって放り投げた。




「ちょ、うわぁ!」

「・・・っ」




普段の恭弥なら余裕で避けられるだろうけど飛んで来たのがだった事もあり、

とっさに受け止めて一緒にすっ転んでいた。

ふふん。計画通りだ。ざまあみろ!

転んでる二人を見て溜飲を下げた俺は髪に着いた砂を払って二人に手を差し伸べた。




「靴の砂は驚いた」




すると二人はなぜかしばらくの間、難しい顔をして俺の手を掴んで立ち上がった。

二人で何か話していたかと思うと恭弥がしかめっ面で言う。




「しばらくの間、ジュニアとの手合せは僕がやるからね」

「なぜだ?」

兄さんは教えるのが下手だから」




ガーーーーーン!!!

え、マジで・・・?俺、下手なの・・・?

否定してほしくて呆然とを見るとコクリと頷かれた。

嘘だろー?!

お、大人げなかったのが悪かったのか?!

ううう。戦い下手なのがバレたこともそうだが、まさか恭弥とにこんなこと言われるなんて・・・。

ショックのあまり固まっていると、足元にやって来たキーンが翼を広げて慰めるように俺の足を叩いた。

そう、だよな・・・?

まだ父親としてやれることあるよな?




「・・・風呂に入るからお前も一緒に来い」

「うん」

「僕も一緒に入る」

「恭弥は来るな」

「いやだ」




何言ってんのこの子は。

普通に考えて狭いし、何でいい年した男が一緒に風呂入るんだよ?!

意味分かんないし、何より俺はの父親業まで譲る気ないからな!!

だから付いて来るな!!

結局、入る気満々だった恭弥を兄の権限で締め出し、父の尊厳を俺は守り抜いた。

だけど、二人の言葉通り、毎朝の訓練は恭弥とで行うようになり俺はお役御免となった。

ホント、いつの間に仲良くなったんだろうね、この二人。

俺は寂しいよ。ぐすん。


* ひとやすみ *
・兄様のデコピンは超痛い。そんな共通認識でした!笑
 敵が強大すぎると敵の敵は味方というか、案外すぐに仲良くなった叔父と甥っ子です。笑
 ちなみに我が家の設定では雲雀家のお風呂はそんなに小さくもなく大きくもなくな感じ。
 というより狭いのは兄様の心の方なのであります。残念だったね、恭弥!笑                       (18/12/22)