ドリーム小説


「うわっ?!何か踏んだ!」




先に部屋を出たが突然叫んだので、覗き込むと廊下にしゃがみ込む息子の姿があった。

言葉通りに何か踏んだようなのだが何だろう?

拾ったそれを見つめるの手元を覗き込んで二人で困惑する。




「ちくわ・・・?」




え、何でこんな所に・・・?

そして顔を上げて廊下の先を見てさらに驚く。

何か廊下に点々とちくわの輪切りがあからさまに置いてあるんだけど?!

ちくわと言えば執事だけれど、実家に彼女はいないしこんなことはしない。多分・・・。

となると、この意図的でしかないこれはまさか恭弥か?




「ちくわはロールの好物だが、」

「え、雲雀恭弥、何か実験でもしてるの?」

「知らん」




何なんだろうなコレ。

恭弥は別にそこまでロールを可愛がってる印象はないんだが・・・。

というか、それよりも他に気になったことがある。




「そろそろフルネームで呼ぶの止めてやれ」

「だって、何て呼べばいいか分かんないんだよ・・・」




何でかはまだ恭弥のことをフルネームで呼ぶ。

何て呼ぶか。うーん。恭弥叔父さん・・・?

あ、何か駄目だなコレ。

でもフルネームは他人行儀で現実味がない呼び方だからそろそろ何とかしてほしいんだけどな。

困ったような顔をしてちくわを細かく千切るの足元にいつの間にかロールがいた。

え、お前何でそんなに懐かれてんの?

の手のひらからちくわをはくはくと食べるロールを呆然と見つめる。

俺なんて未だに手から食べてくれないのに。

しょんぼりして視線を逸らすと、廊下にあったちくわを転々と食べ歩くキーンの姿を見つけた。

おい、お前もか!

深々と溜め息を吐くと、俺達は当初の予定通り中庭に出て訓練をすることにした。

並盛に帰って来る前も毎日訓練してたからその延長上なんだけど、身体を動かさないと気持ち悪いらしい。

は結構頑張り屋さんだからなぁ。




「いくよっ」




地面を蹴って飛び出してきたを片手で受け流して捌くと、回し蹴りが飛んできた。

子どものリーチじゃ怖くないので仰け反ることで簡単に避けられる。

ついでに伸ばした足で軸足を払ってやると何か面白い声を上げて転んだ。

動きや発想が子どもらしすぎる。甘い甘い。

すると、地面に転ぶが身体で隠して砂を掴み、投げ付けて来た。

意外な攻撃にあえて背を向けて目に入るのを避けると、拳が飛んできた。

ま、予想通りだわな。

背を向けたまま突き出された腕を掴むと、しゃがみ込んでそのまま前方にぽーいと投げる。

べしゃりと体勢を崩して着地したは息荒くそのまま地面に大の字になった。




「くそー!ダメだー!」




うんうん。いろいろ考えて偉いぞー。

今回の攻撃、発想としてはそんなに悪くなかった。

俺が無手で攻撃してるからも自然と無手でやってるが、俺は別にそうしろとは言ってない。

例え手ぶらでも相手がいつも武器を使わないなんてことは絶対ない。

道具を使うことは悪くないが、とりあえずは身体を巧く使う練習をするべきだと思ったから俺は無手を選んだだけだ。

経験としていろんなことをやってみるのは良いことだ。

呼吸を整えながらぶつくさと一人反省会をするをほのぼのと見つめていると、近くにあった気配が動いた。




兄さん相手に、砂を使うのは悪くないよ」




その声が掛けられた途端、が飛び起きて姿勢を低くする。

うわー。完全に危険察知した小動物だ。

近寄って来た恭弥にはそそくさと俺の後ろに隠れるので苦笑しかない。

ちくわの件からずっとこっちを窺ってたのは知ってたけど、どうやらあのちくわはがめあてだったらしい。

そんな気の引き方あるか・・・?!

相変わらずおかしなことを考える恭弥に内心爆笑しつつ、俺も息子に答えてやる。




「あぁ。あの砂は驚いたな」

「ホント・・・?」




陰からチロリと顔を出して見上げてくる可愛い息子に頷き返せば、ぱあぁと顔を明るくさせて喜んでいた。

うん。俺の息子可愛い。

あ、何かキラキラの流れ弾が恭弥にも行ったらしい。

顔を抑えてすごい険しい顔をして悶えてる。

無理やり顔を整えた恭弥は咳払いをして何事もなかったかのように続ける。




「砂を投げた後、わざと背を向けた兄さんに誘われたね。敵から視線を逸らすのは馬鹿がすることだよ」

「え」

「背を見せるのは余程の能無しか策士だけだ。接近は気を付けないといけない。安全を取るなら遠距離攻撃がいいよ」




僕ならそんな方法は取らないけどねと付け足す恭弥の悪い顔ったらない。

俺は知っている。

幼い頃の恭弥はもっと酷かった。

砂なんて可愛らしい物で正攻法とは程遠かったからな・・・。

使える物は何でも使う恭弥を思えばはまだまだ可愛いものだ。

何かとんでもないことを噴き込んでる恭弥だが、案外食いつきは良かったようでも真面目に聞いていた。

まぁ強さが欲しいのは本当だろうからな。

何やらこそこそ話していた二人は最後に俺を見て再戦を申し込んできた。

全く、何を考えてるんだろうな・・・。


* ひとやすみ *
・ご無沙汰してます!息子が雲雀家に馴染むまでをお送りしています!笑
 もう少し兄様視点が続きますが、この男相変わらず戦闘に関しては化け物級です。笑
 気が弱いので分かり難いですが、子ども云々とか関係なく強いのでいろいろ敵とみなされます。笑
 さて恭弥叔父さんは何を吹き込んだのか。次回をお楽しみに!笑                      (18/12/06)