ドリーム小説

「並盛に帰ろうと思う」




そう言った瞬間のの顔色はとんでもない色だった。

すっげぇ不安そうな顔で俺を見てくるけど、これはもう決定事項だった。

を引き取ってから半年間あちこち旅しながら逃げ回ったけど、

コイツの秘密を知ってから俺には慣れてくれたみたいだし、もうそろそろ良い頃合いだと思う。

並盛を嫌がったのは原作の舞台だってことみたいだったし、俺のことを嫌ってないのなら問題はないはずだ。

あとは不安があるとしたら・・・。




「いくら恭弥でもいきなり子どもに噛み付いたりしないぞ?気に入った奴くらいだ」

「それのどこに安心すればいいの?!」




あいつ気に入ったやつにはとことん喧嘩売りに行くからなぁ。

のツッコミに少し悩む。

うーん。確かには頭を抱えていたが、これは決定事項だ!









「その前に、やり残したことがある」




何も知らされずイタリア某所まで連れて来られてたはただ呆然としていた。

途中俺が買ったバラの花束のせいか、それとも彼女の知人を装いアパルトメントに侵入したことか、

それとも出会った瞬間に彼女を抱きすくめたせいか、どれのせいかは分からない。

どこかぐったりとしている彼女をエスコートしながら、息子を見て笑う。




は知らないだろうが、彼女はこんなにもか弱い女性なんだよ」

「・・・父さんが強すぎるんだよ」




何でか頭を抱える息子を連れて彼女の部屋に俺達は入り込んだ。

完全に一般女性の部屋には目を見開いていたが、俺は名残惜しくも息子そっくりに頭を抱える彼女を離す。

批難する視線を感じるも俺は突然訪れたことを謝る気はない。お互い様だ。




「俺はを連れて並盛に帰る。一緒に帰らないか、この子の母として」




その一言にも彼女もギョッとして俺を見た。

同じ反応を返されたことに苦笑した瞬間、ローテーブルが飛んできた。

ゴンと思いっきり額で受け止めて目の前に星が飛ぶ。

他にも花瓶やら椅子やら近くにある物が片っ端から飛んできた。

ちょ・・・めっちゃ痛い!!

彼女は容赦なくその辺にある固い物で俺をぶん殴る。

彼女は俺を何だと思っているのだろうか?!

いくら俺でもそんな物で殴られたら死ぬ!!

一瞬にして危機を感じたは俺達から離れて青い顔で事態を見守ってる。




「わ、私がどれだけ、苦労して、あの子を守ってきたと・・・!」




涙目で物で殴り続ける彼女に俺は負けた。

すぐに抱き止めて謝る。完敗だった。

彼女は母だと名乗り出るつもりはないようだった。

それはこれからもの柵を減らして弱みを作らないためだ。

母の愛情の深さを俺は身を以て知った。

母の愛は超痛い・・・。









彼女の呼びかけに息子は異常なほど驚いて固まっていた。

無理もない。

は彼女の愛をとんでもなく勘違いしていたようだったから。

彼女は微笑んでの頬を撫でると再び酷い言葉を吐く。




「あなたの母は死んだわ。次に会った時は他人よ。どうか元気で」




その言葉に傷付いたのは誰なのか。

彼女は血反吐を吐くような想いで最愛の息子に別れを告げた。

コクリと頷いた息子を撫でて、彼女を抱き締める。

酷い結末だとは思うが、俺は彼女の愛を疑わない。

俺達はただ静かに部屋を出た。

そしてその足で懐かしい並盛へと帰ったのだった。








***







懐かしい並盛は平和だった。

ジュニアを抱き上げて足早に雲雀家に向かうと、珍しくも恭弥が家にいた。

ビビるを宥めるように背を叩くと、恭弥に向き直る。

どうやら街を歩く俺の姿にすでに連絡がいっていたようで、見慣れた顔がいくつも集まっていた。

紹介するにはちょうどいいか。

俺は息子を地面に置いて言う。




「息子だ。面倒見てやってくれ」




恭弥が目を真ん丸にして固まってる。

おや珍しい。

どうするのこれと息子の視線を感じるが気にしない。

このまま逃げたら俺怒られないんじゃね?

超絶良い考えな気がして俺は寝ると言ってそそくさと逃げた。

ま、は大丈夫だろう。

すると背後でとんでもない悲鳴が上がり、驚いて振り返ると鬼の形相をした息子が飛び込んできた。




「父さんの馬鹿!!雲雀恭弥が倒れたよ!!」

「は?」




小さな手に引かれて逆戻りした俺は、ぐったりと倒れる弟に血の気が引いた。

な、何?!何で倒れてるの恭弥?!

慌てて抱きかかえて部屋に寝かせると草壁Jrが説明してくれた。

つまり俺のせいらしい。

えー・・・?



恭弥が起きるまでの間、俺とは時間を潰しながら喋っていた。

途中、散々息子に置いて行ったことを怒られた。

おかげで近くから全く離れなくなってしまった。




「父さん、そのけが大丈夫?」

「あぁ。彼女はすごいよな」

「うん」




強くない自分が息子の足を引っ張らないように関係を断つと言い切れる強さが本当に凄い。

彼女は本当に強い母親だ。

こうしても彼女の思いを理解してる。




「うん。やっぱりすっごく怖かった」




あれー?

何か思ってたのと違う。

首を傾げていると、恭弥を覗き込んでいたが起きたと慌てて帰って来た。

恭弥を警戒するを落ち着けと宥めるよう撫でて、目を覚ました恭弥を覗き込むと目を細められた。

うわ。すっげー怒ってる。




「・・・兄さん、半年も連絡なく何してたの?」

「悪い。已むを得ない事情があった」

「それで、説明してくれるの?」




説明?一体どこから何を言えばいいんだ?

彼女のことは言えないし、ううーん。

俺が口籠っていると恭弥は大きな溜め息を吐いた。




「・・・兄さんの子ども?」

「あぁ。・・・まぁ、俺に子どもがいたことを知ったのは半年前だがな」




それだけは答えられるな。

コクンと頷けば、何でか物凄く冷たい目で見られた。

え、何でそんな怒る?!

頭が痛そうに額に手を置く恭弥は諦めたように話を変えた。




「母親は?」




そう言われた瞬間にブワリと痛みと共にローテーブルの恐怖が甦った。

お前、それがバレるととんでもないことが起こるんだぞ!




「・・・死にたいのか?」




俺は次こそ死ぬかもしれん。

彼女は本気だぞ。死にたいのか?

遠い目をして息子を見ると、彼女の言動を思い出してかが青くなっていた。

だよなー。他人として接すると言ってたもんな。

関係バレたら怖いよなぁ。

黙り込む俺達に恭弥は何かを感じたのか首を振って言う。




「兄さんの子どもとして扱えばいいんだね?」

「あぁ」

「・・・ねぇ、君、名前は?」




話し掛けられたは酷く怯えていた。

恭弥の眼光強いけど頑張って答えろよー!

するとは詰まりながらも頑張って呟いた。




「・・・ジュニア」




何でだーーーーーー?!

まさかここでの逃げが出ると思わなかった!

おい、それ名前じゃねぇんだって!

焦る俺を恭弥がすんごい目で睨む。

俺のせいじゃねぇよ!!

そう言いたかったのは山々だったけど、恭弥の目が怖すぎてつい視線を逸らす。




「・・・しばらくはそう呼んでやってくれ」




そう言わざるを得なかった俺は悪くない!

むしろお前が怖いのが悪いんだよ、恭弥!!


* ひとやすみ *
・え、嘘でしょ?10周年?すっかり忘れてた私は教えられて思い出しました!
 そんな訳でお礼と感謝を込めての更新です!皆様本当にいつもありがとうございます!
 我が家はそうした皆様の愛に支えられております!どうぞ今後もよろしく願います!
 さて、そんなわけで並盛に帰ります!彼女出て来たけどあんまり気にしないで!もう出ないから!笑
 想像はお好きにどうぞ!そして心底恐れられる狂犬恭弥!笑
 よければもう少しお付き合い下さい!またお暇な時に是非いらして下さい!                        (18/11/05)