ドリーム小説

目の前にガルガルと牙を剥き出して怒る少年がいる。

どうしよう。イザーク勝手に勘違いして物凄い怒ってんだけど。

大体、ナイフ使用の模擬戦って何よ?

ナイフ使って勝てばいいの?

何も分かってない俺を余所に着々と用意が進められていく。

そんな中、鋭い眼光を見せていたイザークが唸るように呟いた。




「プロテクターは?」




ん?プロテクター?

そう言えば、お前ら確かにいつもの軍服じゃないし、胸にプロテクターつけてるじゃん!!




「付けていいのか?」




俺のがあるなら欲しい!!付けていいなら欲しい!!

だって俺、ラウから着ていた白軍服しかもらってないんだもん。

お前らが着ている戦闘用のスーツ動きやすそうだし、俺もそれ着たい!!

俺なんて一枚脱いだらアンダーと、動きにくいピチピチのズボンとブーツだぞ。

流石にブーツは軍のロングブーツでなく履いてきたコンバットブーツに履き替えたが。

俺の素直な疑問にイザークは答えることなくなぜか息を呑んで、再び鬼の形相に戻った。

何で?!




「貴様ぁ!!付けなかったことを必ず後悔させてやるッ!!」




えぇぇぇぇぇぇ?!

何でさらに怒ってんのー?!

てか、ついに敬語も吹き飛んで、貴様扱い・・・。

プロテクター云々に関しては俺のせいじゃないよ!!

知ってて用意しなかったラウのせいだぞ?!

恨みを込めてラウを睨めば、口元を愉しげに歪ませて肩を竦めていた。

あの仮面、必ずモぐ・・・!!


武器を装備して構えているイザークを見て、泣きそうになりながらも俺も武器を選ぶことにした。

訓練用だから刃が潰してあるが、なかなか面白い形の刃物がたくさんある。

まぁどれも使えないことはないが、ナイフ俺は苦手なんだよねぇ・・・。

サバイバル、トレンチ・・・・・んー、小さめのダガー一本でいいか。

放り投げては掴んで重さやグリップを確かめる。

その間にイザークを観察していたのだが、どうやらアイツは数本のナイフを持っているようだ。

手に持ってるのはサバイバルナイフ、腰にはダガー、おそらくブーツにも何か仕込んでるな、あの動きは。

・・・お前、やる気満々じゃん!!




「では、始めっ!!」




えぇーーー?!

何かテンパってる内に始まっちゃた!!

開始と同時にナイフ振り上げて接近してきたイザークに俺は完全に動揺していた。

そのせいで持っていたダガーを手汗で滑らせてツルリと落とすとダガーが床で跳ねた。




「もらったぁッ!!」




何してんの、俺?!

唯一の武器を落として慌てていた俺は、ダガー拾おうと足を踏み出したのだがそれが悪かった。

跳ね上がったダガーの柄を俺のつま先が蹴り上げたのだ。

げっ・・・・!!!




「なにぃッ?!」




蹴り飛ばしたダガーは走り来ていたイザークに一直線に飛んで行く。

顔に直撃するかと思われたが、さすが赤服を着てるだけはあるというのか、

イザークは踏み切り足を僅かにずらして横に転げてダガーをギリギリ躱した。

な、何かすげー転げ方したけど、大丈夫か、アイツ・・・。




「な、んだ、今の・・・」




聴衆から何か声が聞こえるが、飛び起きたイザークはナイフを構え直して足を止めた。

どうやら突っ込むのは止めにしたらしい。

どうしよう、いきなり最低なミスを犯したよ・・・。

俺の唯一の武器、イザークの後ろに転がってるんだけど・・・?

あれ拾わない限り、終わらない気がするんだけど、どうしよう。

冷や汗を掻きながらジリジリと距離を測っているイザークを見て考える。

ない物はしょうがないし、とりあえずアイツの利き腕を押さえて、急所を狙うか。

こちらから攻めると決めた俺は、イザークが瞬きをした隙に地面を蹴った。




「ッ」




飛び込んだ俺は突き出してきたナイフを腕ごと内側から払い避けると、

イザークはそれを読んでいたようにすぐさま肘を曲げて俺の咽喉元を狙った。

身体を後ろに反らせてナイフを避けた俺は目の前を通ったイザークの腕を掴んで外側に捻ると

イザークは舌打ちをして仰向けに捻られた手を開いてサバイバルナイフを真下に落とした。

掴まれた右腕の下に待機させていた左手でナイフを掴むと、イザークはそのまま俺の腹を裂く様に横に薙ぎ払った。

避けるには掴んでいた手を離さざるを得ず、俺は仕方なく三歩分後ろに飛んだ。




「流石だな」




軍人ハンパねぇな・・・。

今の間なら関節押さえられると読んだんだけどな。

多分コイツ恭弥より決断力と技術力は上だ。

ナイフ落として逆の手で一閃とか、先読みが甘ければあの一瞬では出来ない。

直情型の癖して判断は冷静だ。

ただ恭弥より非力みたいだな。

汗を滲ませて息を吐くイザークは険しい顔を一瞬、右腕に向けた。

だが、何事もなかったようにナイフを右手に持ち替えている。

うーん、どうしたものかな。

先程の衝突でイザーク寄りではあるが、俺と奴の間にダガーが落ちている。

何とかあれを拾えたら勝てると思うんだけど。

・・・・・・あ、いいこと思い付いた。




さんが先に動いた!」




誰かの声が聞こえる中、俺は走り出し、イザークも釣られるように走り来る。

俺がスピードを落として誘うとイザークは誘い出されて狙っていたポイントに来た。

ダガーがイザークの真後ろに来た時、奴はナイフで俺の腹を刺そうと突き出した。

ここだ・・・!!

俺はイザークの右腕を左手で掴み腰に固定すると、右腕を奴の脇下から背後に回した。




「クソッ・・・!」




両腕を固められたことに気付いたが、もう遅い。

俺はイザークの足の間に右足を割り込ませ、後に合ったダガーの先端を思いっきり踏んだ。

ピンと回転しながら跳ね上がるダガーを背に回していた右手で掴んで首元に突き付けた。

これだけ至近距離で抱き合う形になればもう身動き出来ないだろう。




「降参するか?」

「〜〜〜〜〜〜ッするから、はなれろぉ!!」




耳元で大きな声を出すので顔を顰めながらイザークから離れると、真っ赤な顔で怒っていた。

負けたからってそんなに真っ赤になって怒らなくてもいいだろうよ。

ダガーを元あった所に返して、ラウの所に帰れば何だか周囲の視線が痛い。




「君は恐ろしい奴だな・・・」

「?」

「敵には回らないでくれたまえよ、




はぁ?

意味の分からないことを言うラウに俺は首を傾げたが、周囲はなぜか皆同意しておりますます謎が深まった。

ギリギリで無様な戦いを見せたにも関わらず、なぜかその後引っ切り無しに模擬戦をすることになった。

何で?


* ひとやすみ *
・「あ、おちたな」慌てるイザークを見て全員の意見が一致した瞬間。笑
 自分の美醜に頓着しないのがデフォです。こうして信者を増やしていきます。笑
 戦闘シーンは書いててかなり楽しかったです。相変わらずのテキトークオリティですが、
 スピーディーに書けたので満足。久しぶりに大きな勘違いが発動しそうで楽しかったです!   (14/01/19)