ドリーム小説

身体が不規則に揺れる感覚がする。

直前に何が起こったのか順を追って思い出し、ハッとして目を開けた。

すると視界に広がる白い壁。

思わず手をついた瞬間、俺の身体はいとも簡単に壁から離れ、宙を舞った。




「え、は、何で俺浮いてんの?!」




流されるまま壁から離れた俺は、今の壁が天井だったことを知る。

仰向けで床に向かって流れていた俺は、体勢を変えようと空をもがくがこれが難しい。

まともに動けるようになったのは、しばらくしてからだった。

ようやく部屋の状況を見渡せたが、意味が分からない。




「これって無重力ってやつだよな・・・」




シンプルな室内はどこか無機質で、目の前に機能的な大きなデスクとパソコン、そしてソファ、

向こうには別室が続いているようだ。

確かにこうも無重力なのであればシンプルにならざるを得ないのだろうが、なして無重力?

全く状況のつかめない俺は腰に手を当てて、そこにあった鞄にハッとする。

そうだった。

あの神ならぬ馬鹿男に無理やり仕事を手伝わされて、どこかに飛ばされたんだった。

探し物を見付けてこの鞄に放り込めばいいとか言っていたが、説明不足にもほどがある。

ボロボロのショルダーバッグを開けると、中に手紙が入っていて俺は食い入るように読んだ。




『大事なことを忘れてた。探し方だが、・・・・・見たらすぐ分かるようにしといたぞ。あとは任せた』




何の役にも立たねぇな・・・!!

全く好転しない事態に俺は深く溜め息を吐いた。

俺は年末の時のままの恰好で黒のパンツと白のインナー、

靴とジャケットはいつの間にか着てたけど、ほぼ丸腰の普段着だ。

相棒のは腰のホルスターに入っているが、正直何が起こってるのか分からない現状では心もとない。

ここは一体どこなのだろうか。

デスクに触れて立った時だった。

パシュンと空気が漏れるような音がして、部屋の扉が開いたのだ。




「・・・おや、ここは私の部屋のはずだが、君は?」




俺は突然現れた人物を見て思わずホルスターに伸ばした手を固まらせた。

あぁ、最悪だ・・・。

そこには白い軍服を着た男が変な仮面を着けて立っていた。

仮面も意味不明だが、何が最悪って、

俺には男の目の上で大きな赤い矢印が『コレ!』と指しているのが見えたからだ。

コレ!って・・・・、見たらすぐ分かるようにとは言ってたけどさぁ、

それはないだろうそれは・・・ッ!!

よりによって仮面とか、喧嘩売ってんのかー?!












***











「諸君らには紹介が遅れたが、この度受領した戦艦ヴェサリウスに共に乗艦することになった

 特務隊所属の・ヒバリ君だ。ナスカ級への乗艦は初めてだそうなので、案内してやってくれ」




なーんでこんなことに・・・?

仮面隊長、基、ラウ・ル・クルーゼに見つかった後、ここが宇宙で戦艦の中だと説明を受けた。

そしてよく分からないが面白がった仮面が、一般人を艦に入れるわけにはいかないと言い出し、こんなことに。

ラウの予備軍服が入っちゃった俺の身体が憎い。

堂々と俺の偽経歴を語るラウに顔が引き攣る。

新生クルーゼ隊は新たにこのヴェサリウスを受領し、今回初めて乗艦したらしいので、

どさくさに紛れちゃえとラウが軽く言いやがったのだ。

不審者の俺を何で傍に置いてるのか全く理解出来ないが、ラウの着けてる仮面が欲しい俺にしては助かった。

・・・が、なぜ、指揮官クラスの白服なんだ?!

ほーら、ザフトレッドと呼ばれるトップガン共が胡乱気に俺を見てるんですけど・・・!




「えーと、ヒバリさん・・・?」

でいい」




というより、ただの一般人の俺が偉そうにさん付けとか言わせられねぇよ・・・!

後の方にいた緑服の金髪の男が俺に声を掛けてきた。

つーかこいつらなんでこんなイケメンなの?!

しかも何か髪の毛カラフルだし。




「あ、自分はミゲル・アイマンであります!部屋をお教えした後、私が案内しますよ」




ミゲルの一言でとりあえずその場は解散ということになった。

しかし空気はやっぱりカラッとしたものではなかった。

ま、謎の上官が増えたらそうなるわな、普通。

解散後も最後まで俺を睨み付けていたのは、赤服を着た銀髪オカッパ少年だった。

友達に宥められていたが、ありゃ不満タラタラだぜ。

話したこともないのにあんまり周囲が名前呼ぶのでお前の名前覚えちゃったよ、イザーク・ジュール君。




「では、部屋にご案内します」

「・・・慣れない口調なら使わなくていい」

「あー・・・そんな分かりやすいっすかね、俺」

「話し方が硬い。表情もな」




ミゲルは肩を落として深く溜め息を吐くと頭を掻いた。

まだまだだなと言いたい所だが、実はイザークの次にこいつからの視線がきつかったから良く見ていただけだ。

イザークより年上だからか、不満などは顔には出していなかったが、目が完全に疑っていた。




「俺がここにいるのが不満か?」

「・・・いや、不満ていうか、知らされたのが唐突すぎて驚いただけですよ。ちなみに何のためにこの艦に?」

「特務隊の任務をバラすとでも?」

「ですよねー」




ちょっくら特務隊の名前を借りて誤魔化したが、未だ怪しんでいるミゲルに小さく笑った。

不満があっても上官の指示に従って、俺の相手をするミゲルは偉いな。

艦内の施設を一通り案内したミゲルは最後にドッグを見せてくれた。




「この艦は最大6体のモビルスーツが収容可能で、現在はジンが4体置いてあります」

「・・・・・ガンダム」




宇宙艦に乗ってる時点から薄々おかしいなとは思ってたんだが、ジンを見て確信してしまった。

俺、ガンダムの世界にいるの・・・?

な ん で さ ?!

信じらんねぇ!!

探し物が異世界だなんて聞いてねぇよ!!

あの神、次会ったらぶっ飛ばす・・・!!

俺の怒りの形相に引いたのか、ミゲルは何だかおかしな顔をしていて、俺は慌てて顔を戻した。

いかんいかん、俺、普通人。




「ん、あのオレンジの機体は?」

「あぁ、俺の機体ですよ。許可貰ってパーソナルカラーのオレンジに染めてるんすよ」

「へぇ。優秀なようだな。今度、中を見せてくれ」

「まぁ、機会があれば」




あ、コイツ見せる気ないな。

ヘラリと笑って言ったミゲルの頑なさに俺は呆れを通り越して面白く感じてきた。

いいねぇ、やっぱこういう芯の強い奴がいないとな。

俺は口元で笑うとそのまま先程案内された部屋に戻ることにした。

すれ違い様に俺はミゲルの肩をトントンと叩いた。




「お前はそのままでいろよ、ミゲル」

「は?」




首を傾げてるミゲルをその場に置いて俺は部屋へと歩き出した。












***









「それで、何か見付かったかね?」

「人をスパイみたいに言うなよ」

「ふっ。君の存在の怪しさは並みではないから仕方ないではないか」

「・・・お前が言うか、ラウ」




全くこの仮面は面白がっていやがるな。

しかも俺を傍に置く癖に微塵も信用していないのだ。

探し物をしに異世界からやってきたと説明したが、コイツはきっと信じていない。

まぁ、それはお互い様だからいいんだけど、この狐は尻尾を見せても掴ませないズルさがある。

化かし合いは疲れるし、さっさと仮面手に入れて迎えに来てもらおう。




「しばらく離艦は出来そうもないので、付き合ってもらうことになる。その間は頑張ってくれ、特務隊の・ヒバリ君」




顔の上半分を隠す仮面のせいで表情がよく分からないが、口元が笑っていて何かムカつく。

だが、ラウに言われるまでもなく当分ここからは逃げられないのだから、やるしかないのだ。

俺はおざなりな返事を返して、天を仰いだ。


* ひとやすみ *
・やっちゃった!大好きな種をかけちゃった!後悔はしない!
 リマスター版見て再熱。かなり話変わってるよね、あれ。
 特務隊のとこ無茶したけど気にしないで下さい。白服着せたかっただけなの!笑
 ラウと腐れ縁的仲良しこよししてるといいいなという願望で出来た話。         (14/01/19)