ドリーム小説
年の暮、新年を迎えるまであと数十秒という頃、俺は実家で家族と共にテレビを見ていた。
恭弥も興味なさそうにしながらも、暖かい部屋から出ることなく座っている。
今年も大きな病気なく無事に過ごせたなぁ。
来年も無事生きてられるかなぁ。
始まったカウントダウンを聞き流しながら俺は暢気にそんなことを思っていた。
さて残り十秒。
しみじみと今年の事件を振り返る。
―― 四秒。
悲惨なことしか思い浮かばないのが悲しい。
―― 三秒。
来年はいいことあるといいなぁ。
―― 二秒。
そう言えば、餅買ってきたっけ?
―― 一秒・・・
明けましておめ・・・・って、あれ?
「・・・いってぇ!」
「は?」
新年を祝う声より先に、何だか聞きなれない声が部屋に響き渡った。
リビングをすごい勢いで黒い塊が転がり、痛そうに呻いている。
一体、何が起こったんだ?
ていうか、誰、この人?!
黒い袴を着た黒髪蒼目の美男子がウチのリビングに転がってるー!!
きょ、恭弥、この人知ってる・・・って、あれ、え、恭弥?
振り返った恭弥は読んでいた本を閉じた瞬間のまま、微動だにしてなかった。
え、何で止まってるの?!
ていうか、俺とこの黒い人以外が全て止まってる!!
人もテレビも秒針さえも動いてないリビングで俺は大混乱していた。
「あのバカっ!容赦なく放り込みやがって・・・・、あ?お前、誰だ」
つーか、アンタこそ誰だよ・・・。
コイツ、すんげーガラ悪い人だー!!
のっそりと起き上がったその人は袴の裾を直して頭を掻いた。
「浅田、いや、雲雀か。つーか、その名前どこかで・・・、あぁ!元老院のジジイ共のお気に入りの特異点か!」
俺を見てスゴイ納得した様子を見せたソイツは、すぐに不思議そうに何でここにいるのかと首を傾げた。
いや、それ、俺のセリフ・・・。
言ってることは謎だけど、俺のことを浅田と言った時点で大体の予想は着いた。
・・・何だ、神か。
「シトの仲間か?」
「まあな。急に悪かったな」
「いや・・・」
謝ったよ、驚いた。
そんな悪い奴じゃないのかも。
今までどうしてもシトのこと思い出せなかったのに、なぜ急に思い浮かんだのかは置いとくとしても、
一体ここに何しに来たのだろう。
「つーか、、何でここにいんの?ここはM系列の世界・・・は?何でリボーン?!うっわ!俺、間違えた?!」
一人で急に慌て出した男を俺はただ呆然と見ているしか出来なかった。
何なんだろこの人。
もう何か残念な人にしか見えなくなってきたよ。
「・・・俺に何か用が?」
「に用はねぇ!!」
えぇー・・・。
もうどうしたらいいのか分からないんですが。
おかしな状況に巻き込まれた俺が遠い目をしていると、しゃがみ込んでいた男と目が合った。
あ、何か嫌な予感。
「・・・おい!これも何かの縁だ。お前、俺の仕事を手伝え!なに、簡単な探し物だ!」
「断りたいんだが」
「この状況で断れると思ってんなら大バカ野郎だな、お前」
ですよねー・・・。
世界が静止している中、俺が何とか出来るとは思えない。
厄介なことに巻き込まれたと深く溜め息を吐いて俺は顔を上げた。
「・・・で、何を探せばいい?」
「いろいろなもんだよ」
「・・・・・・・。」
言っちゃ悪いが、コイツ、バカなんじゃないの・・・?
それじゃ何にもわかんねーだろうが。
仕方ないので切り込む角度を変えて質問をした。
「どこに行けばいい?」
「いろいろなとこだよ」
「・・・・・・・。」
コイツ、バカ確定・・・!!
何言ってんの?!それどこだよ?!
さっぱり説明する気のない馬鹿男は悩むふりをして言う。
「見付けたらこの鞄に入れろ。俺に転送されるようにしとく。足も気にするな。送り迎えくらいは俺がしてやる」
やっぱり意味の分からない話をして、男はボロボロの鞄を俺に押し付けた。
あとなんか話してないことあったかと男は首を傾げて俺に聞いてきた。
いやいや、全部話してねぇよ!!
何とかなるかと勝手に自己完結した男は満足そうに笑って、付け足した。
「あ、能力者には気を付けろよ。死んだら送り迎えできねえぞ?」
・・・・・・は?
能力者ってなんだよ?
ちょっと待て、死ぬような所に送るつもりか、貴様ぁっ!
「じゃ、頼んだ!」
爽やかに片手を上げて笑ってんじゃねぇ!
その転送、ちょっと待・・・・っ。
* ひとやすみ *
・タイトルのまんま。他に言うことなし!いや、ある!笑
気が付いたら兄様書いてた!気まぐれに更新します!付き合ってくれると幸い! (14/01/19)