ドリーム小説

「ほんでの、これが大杉の下で見付けたもんでぇ、あれが麓で拾ったもんじゃな。それから・・・」

「・・・いや、だから、このガラクタは何なんだ」

「何って、おんしの失せ物探しとるんやろが!」




心底不思議そうに首を傾げるこのむさ苦しい山伏まがいの大男とガラクタを運び込む小人達。

何なんだろう、コレ・・・。

俺の作った家を囲むようにガラクタが積まれ、俺は逃避するかのように視線を空にやった。

この怪しげな大男が俺の元へやってくるようになったのは、あの陰陽師と別れたすぐ後だった。

風のように現れ、気が付けばいつもここにやって来る。

奴はこの山に住んでる変人山伏だった。

日本人にしてはやたらとデカい体格をしており、豊かだけど真っ白な髪をザンバラに後ろに流している。

ポツリポツリと話していたはずが、次第に怒涛のように喋りかけてくるようになり、ついには遠慮の欠片もなくなった。

ここに至るまでまさかの2日である。

何て順応の速さか。




「その小さいのは式か?お前、陰陽師なのか?」

「はぁ?!阿呆!わしが陰陽師なワケあるかぁ!コダマじゃ木霊!木霊に手伝ってもらわんと

 おんしの失せ物なんぞ、一人でよう運べんわ!見てみいこのガラクタの山」




おい!やっぱお前もガラクタって思ってんじゃねぇかよ!

人んちにいらない物ばっか運び込みやがって。

ぶすーと奴を睨めば、また首を傾げられた。




「じゃあどないして失せ物見付けんのや?は物も分からんし、その癖おんし探す気あらへんやろ?」




深い溜め息を吐いた山伏は腕組みをして話し出した。

わしかてこないなこと言いたないけどな、と始まった話はこうだ。

俺がここに住み始めたせいで、ここいらに住んでた脆弱な妖が全て逃げ出したそうだ。

そんで里に下ったものの、弱いのは山を求めて散ったが、そいつらが乱入してきた他山は大迷惑。

ついには愛宕山から苦情が来たと奴は唸った。

つ、つまり、コイツもしかして俺ん家のオーナーなの?!




「えぇか。さっさと失せ物見付けて出て行ってくれんとわしが困るんや。ちったぁやる気出しんしゃい!」




うっ・・・。何か家賃滞納してる苦学生の気分なんだが。

怒られて少しやる気になった俺はガラクタを眺めるが、やっぱり全然わかんない。




「ここにあらへんのやったらこの山にはもうありゃしまへんな。ほれ、さっさと人里降りい!」




シッシと追い払うように手を振る山伏に俺は泣きそうになった。

魑魅魍魎が蔓延る恐ろしい京に放り出された挙句、せっかく作った家まで追われるとは・・・。

くそぉ!!




「・・・アンタ、名前は?」

「名ぁ?いろいろあるけどどれがいいかの?・・・天馬でどうじゃ?」

「・・・その名覚えておく」

「そんな!別にええんやで!名を覚えてまで礼なんてせんでも!!」




違 う わ ! ふ ざ け ん な !!

この恨み、忘れてなるものかー!!

俺は天馬に背中を向けて足音荒く、山を下った。










***









困ったなぁ。

この街って本当に碁盤みたいに縦横に道が走ってて、今どこに居んのか分かんねぇな。

そういう割に俺はそう中心部には向かわず、町の外れをグルグル歩いていた。

いや、だって、俺、白シャツと黒パンだし、見つかったら完全に変質者だよなー。


完全に積んだ状態で俺は心底困ったと、立ち尽くしていたら、不意に笛の音が耳を突いた。

すっげぇ綺麗な音・・・・。

どっから聞こえてるんだ?

思わず音に釣られて小路を曲がれば高い塀にぶち当たった。

この中から聞こえてんだけど、この塀どこまで続いてんのかね?

すっげぇ立派な屋敷で敷居が高いしなぁ。

ちょーっと覗くだけなら許してくれないかな?


俺は音が気になってそう高くもない塀をひょいと登って、塀の上から笛の奏者を探した。

すると屋敷の廊下みたいに突き出した所、確か釣り殿って所で厳めしいおっさんが笛を吹いていた。

すんげー上手いんだが、何だこれ力が抜けるんだけど。

吹き終えたらしい男が口元から笛を下すと、塀の俺と目が合った。

やべ、逃げるつもりだったんだけど!

目を丸くしてる男から逃げようとした俺は、少し思い至って背中の荷物を解いて男へ放り投げた。

男は驚きながらもきちんと受け取った。




「え、たけのこ・・・?」

「やるよ。演奏の礼だ。腹減ってんだろ?」

「え?!」




山で見付けたたけのこだが、あれは美味い。

非常食で持ち歩いてたんだが、良い物を聞かせてもらったからな。

ただ次は腹が減らないように、もっとハッピーな曲が聞きたい。

さっきの曲はどうも物凄く哀愁漂う腹減りソングだった気がしてならん。

切々と訴えてくるもんだから、ついたけのこを出しちまったよ。

あばよ、と背を向けた瞬間、ちょび髭のおっさんがとんでもない声を上げた。




「まッままま待って下さい、たけのこ明神殿ぉーーー!!」




はぁぁぁぁぁぁ?!

振り返った俺が吃驚しすぎて池に落ちたのも無理はないと思う。


* ひとやすみ *
・たけのこ明神・・・、今思ったけど、これパクリになるんじゃ・・・?焦
 キノコに変えるかと悩んだけど、あんまりに格好つかないので開き直ってそのままです。
 書き終えてしばらくしてから気付くとか、もういろいろ終わってます。
 それから天馬とか謎の笛男とかいろいろオリキャラ出張ってます。楽しいから押し通しますが。(え             (14/08/05)