ドリーム小説
気が付いたら俺はそこで土砂降りの雨に打たれていた。
真っ暗闇に目が慣れた頃には俺は濡れ鼠で、辺りの状況を把握し始めて頭を抱えた。
俺なんで深夜にこんな深い森の中に居るの?
暗くてよく分からないが木々が周囲を取り囲み、俺は大きな平たい岩の上に立っていた。
こういうのを石舞台というのかな。
激しく当たる雨粒が目に入るのが鬱陶しくて目を細めた。
だんだん雨脚が強まってる気がする。
とりあえず何か恐れ多いのでこの石舞台から降りよう。
トンと岩を蹴って地面に降りた瞬間だった。
バリバリバリバリッと世界が割れるような音がして、森が一瞬昼間のように明るくなった。
「ッ?!」
衝撃波で背中が押されて肌が荒々しい空気に粟立った。
石舞台に雷が落ちたのだと悟り、振り返るとそこに露出の激しい変わった人が居た。
違う。多分だけど人じゃない。
刺すような重々しい気配をヒシヒシと感じながら顔を引き攣らせた。
何が起こってんだ、これ・・・?!
癖のある黒髪をうなじで纏め、肩や胸元を晒したどこか古めかしい白い装束と大きな宝玉、
そして瑠璃の瞳はまるで射殺さんとばかりに俺を睨み付けている。
『・・・このような夜更けに何用じゃ、ソトツカミノシンシよ』
え、ソト・・・シンシ?は、なんだって?
紳士?とか言われたけど、多分これは皮肉られたのだと思う。
だって超おっかねぇ顔で睨まれてるもん、俺!!
よく分かんないけど、ここは丁寧に返事しといた方がいい気がする。
俺は膝を折って頭を下げた。
「そのような立派な者ではありませんが、名をと申します」
『ふん。して貴船の祭神であるこの高淤を叩き起こしてまでの用向とはなんじゃ』
ッッッッ?!
祭神って神様かよ!!!
そして間抜けにも俺はこの土砂降りの雨がその高淤神を弾いて少しも濡らしていないことに気が付いた。
紳士の国を見習って慇懃無礼なほど下手に出て挨拶しといてよかったーー!!
冷や汗を掻きながら俯いてた俺の視界にボロボロの鞄が入った。
これって確かあの自称神とか言う男に持たされた奴だよな?
すると急にズッシリと重さを増して、鞄が膨らみを持った。
どうやらあの疫病神もこの高淤神は敵に回したくないようだ。
「こちらへは神の落し物を探しに参りました」
『貴様も厄介事を引き受けたものだ。そのように神の力ある落し物ならばおそらく晴明の手に渡るだろう』
「・・・晴明?」
『稀代の陰陽師、安倍晴明だ。あんなのでも貴様の役には立とう』
・・・い、今何と?!
安倍晴明とか平安時代の人じゃないかよ!!
え、ちょっと待て、まさか、俺、今、平安人なの?!
俺は動揺をひた隠して、一先ずご機嫌伺いのために鞄に現れた酒瓶を取り出した。
「この酒を献上しますので御納め下さい」
『ふん。今後霊峰貴船に貴様が入ること罷りならん。私は貴様と関わるつもりは毛頭ないし、この地を荒らすなら容赦はせぬ』
えーと、何か怒られてるけど、酒は分捕られたから多分許してもらえたんだと思う。
だって、あの酒は多分あの疫病神が用意した奴だから、良い酒なのだと思うし。
高淤神はぶすくれているが、とりあえず頭下げとこう。
「感謝します、貴船の祭神よ」
『ふん。勝手にせよ』
高淤神は俺に背を向けると、再び雷鳴が轟き、光の中を白銀の大きな龍が天へと昇って行った。
うわー・・・、龍神とか言うけど、初めて見たよ・・・。
雨粒を光らせるその様は優麗で荘厳で何とも言えない。
その時、俺の耳に確かに声が聞こえた。
――昌浩に迷惑掛けるでないぞ
マサヒロ・・・?
その姿をほけーっと見送っていた俺は周囲が再び暗闇に包まれてハッとした。
俺、今すぐ貴船の山から出て行かないとだし、もしかしなくても家なし子なのでは?!
ずぶ濡れになりながらようやくそのことに気付き、ガーンと俺は打ちひしがれた。
俺は歩きに歩いた、暗い山道を。
貴船の神域から出たのはすぐに分かった。
あの刺すような空気の張り詰めた感じが消え失せ、俺はホッと息を吐いた。
しかし、これからどうするよ?
あまりこの天候だし、遠くへは行けない。
仕方ないから、隣山の軒先でも借りるか。
ここに来てサバイバルとか、ちょっとワクワクするな!
執事に習った知識がここに来て役に立ちそうだ。
その前に、まず隣山で雨宿り出来そうな所を探すか。
俺はぐしょぐしょのブーツで足元の悪い山道へ踏み出した。
* ひとやすみ *
・はい。そんなわけで陰陽師とクロスオーバーです!やっちゃった!やっちゃった!
ちょっと素敵な作品を拝見して滾ったのですよ!いろいろ盛り上がっちゃったので
長くなりそうですが、しばらくお付き合い下さると嬉しいです!!
最初は高淤様の機嫌を損なってからのスタートです。オリキャラ多くなりますが
そこは皆様の器量と広ーい心を以て許していただけると助かります!! (14/08/05)