ドリーム小説

シルバ達は元老院を通した依頼の調査に出ており、ゼノさん達は一族の問題に当っている。

何でもゾルディックの何か大事な物が盗まれたらしく忙しそうだ。

キキョウさんは別件の仕事で、俺達には一番簡単なマフィアと遊ぶお仕事が回ってきた。

虫の知らせというやつなのか、一族総出で出払ってる今、泥棒の入った家に子どもを残しておきたくなかったキキョウさんが

無理やり俺を子どもの仕事に捻じ込んだということらしい。

一番楽な仕事なんだって!うわーい、ラッキー!!




「おらぁ!死にさらせぇぇぇ!!」




機関銃がバラバラと音を立てて俺の隠れている壁に突き刺さる。

柄の悪い黒スーツが情け容赦なく武器を手に俺とキルアとイルミを亡き者にせんと向かってきている。

砂埃と硝煙の中、俺はこれのどこが一番簡単な仕事なのかゾルディックに問い合わせたい気持ちでいっぱいだった。

おいおいおいおい!相手は子どもだってのに、そりゃないだろう?!

こっちは三人しかいないっていうのに、対するマフィアが五千人くらいとかどうすればいいわけ?!

一騎当千でも足りねぇよ!!

そんな中、当の子供二人は不満タラタラである。




「マフィアくらいだったら俺一人でもいけたのに心配性だな母さんは」

「えー、もっと強いのいないのー?おっさん達よわすぎだぜー」




メンタル強すぎる。怖いよゾルディック・・・!

サクサクと流れ作業のようにマフィアの人生を終わらせるこの兄弟を尻目に、俺は淡々とマフィアを無力化する。

致命傷じゃなくても人を動けなくする方法はいくらでもある。

そんな甘い闘い方をする俺に二人は呆れた視線を向けて来たが、知ったことか!

見知らぬ人間の命を背負えるほど俺は丈夫に出来ちゃいねぇんだよ!!

というか、この仕事。確かとある豪商から中規模マフィアのボスを消して欲しいって依頼だったはずだけど、

一体これだけの数どこから・・・?

その答えはイルミが知っていた。




「あれ?こいつ違うファミリーの幹部じゃん。確か結構大きい所のだったと思うけど何でこんな中規模な所に交ざってんの?」




その瞬間、何だか嫌な予感がした。

強い奴が弱い奴に従う理由は力で負けたからに違いない。

今まで中規模だったマフィアが一体何を手にしたのかは分からないが、

キキョウさん、俺を付けたの正解だったかもよ。ヤバい臭いがプンプンする。

というか、むしろ家に残した方がよかったかもよ?!

屋敷の中を走り回り派手に奥の扉を開けば、マフィアのボスらしい男達が居る部屋にぶち当たった。

俺の横をキルアとイルミが走り抜けてボス達を一撃で仕留める。

その瞬間、風が舞いツンと鼻を突いた腐敗臭に眉根を寄せる。

何だ・・・?何かがおかしい。

鎮まり返った部屋の中でイルミが呟く。




「ターゲットがいない」

「うわ!何だこれ!、こいつ死んでる!」

「キル、殺したんだから死んでるのは当たり前でしょ?」

「そうじゃなくて!俺達がころす前から死んでたって言いたかったんだよ!」




俺とイルミはキルアの指差すボスを見て事態の異常さを理解した。

どのマフィアもみんな腐敗が進んでおり、とても今命を落としたとは思えなかった。

でも、確かにさっきまで動いて・・・!

有り得ない動きで立ち上がった遺体がキルアに襲い掛かろうとしてるのを見て、

俺はとっさにキルアを抱きかかえて跳び退った。




「うげぇぇぇ!ゾンビかよ?!」

「どうやらそのようだ」

、これ不味くない?」

「・・・あぁ」




ひぃぃぃぃ!ムリ!怖い!キモい!怖い!ホラー無理!

なのに怖がる暇も与えてくれない状況とかホント勘弁して!

ゆらゆらと立ち上がるマフィアのボス達の急所に慌ててで鉛玉をぶち込むも効果はない。

本当に困ったことになった。

おそらくターゲットのファミリーが急激に力を付けたのはこのせいだろう。

他のボス達を殺して操っていたのであればあれだけの人数を動員出来た理由に説明がつく。

多分、ターゲットは念能力者。

キルアは念を知らないし、イルミもほぼ初心者だ。

しかも、明らかにゾルディックとは相性が悪い。




「おい、イルミ、キルア。一応確認までに聞くが、お前達、ここに来るまで何人殺した・・・?」

「・・・数えてない」

「えぇー・・・それも入るのかよー」




最悪を想定すると今まで戦った奴らが不死身になって押し寄せてくる。

これで生きてる人間も安易に始末できなくなった。

おまけにこのゾンビの弱点が全く見えてこない。




「・・・ねぇ、これどうすんの?」

「どうするも何も、ターゲットをやらなきゃ依頼は終わらないよ」

「だよなぁ。あ!もう!またやっちゃったじゃんー!」

「キルア、無駄な殺しはするなって言っただろう」

「だって、うじゃうじゃ来るからうっかり間違えるんだもんー!」




襲い掛かってくるゾンビと生きてる下っ端マフィアを慎重に倒しながら対策を練る。

イルミは物理的に下半身をぶっ飛ばして歩けなくさせ、キルアはとにかくこれ以上死人を出さないように苦心していた。

でも、多分これ能力者相手だからそいつを何とかしないとダメなやつだよなぁ。

その瞬間、とんでもない気配がして俺は勢いよく吹っ飛んだ。




!!」




くっそ・・・!とっさにガードしたけど、左腕の骨折れたよコレ。

受け身を取り瓦礫から瞬時に身体を起こして身構えて目を見張った。

え、ゼノさん・・・?!

いや、これは死んでる。違う、誰だ・・・?

俺をふっ飛ばしたムキムキ野郎は顔はどう見てもゼノさんだったが何かが違う。

警戒しながら俺の側にやって来たイルミがどうやら何かを知っているっぽい。




、最悪の事態だね。あれウチのご先祖様。どうやら爺ちゃんが言ってた盗まれた物ってウチの先祖の遺体らしいね」




イルミ曰く、基本ゾルディックに墓はないらしいけど、あのご先祖は特殊な殺され方をしたらしく

遺骸を始末出来ず、外に持ち出すわけにもいかずゾルディックで厳重に保存されていたらしい。

それがここにあるということは、そういうことなのだろう。

・・・どう考えてもこの仕事、割りに合わない。




「イルミ、勝てるか?」

「ムリ。瞬殺だね」




キルアはというと、ご先祖様が出てきた辺りから真っ青になって冷や汗と震えが止まっていない。

マジでピンチだなこれ・・・。

嫌だけど相手が出来そうなの居ないし、嫌だけど仕方ない。




「イルミ、キルアを連れてターゲットを探せ。ここは俺が何とかする」

「・・・、死ぬよ?」

「死ぬかよ」




死んでたまるか!俺には可愛い弟達が待ってるんだよ!

イルミに目配せしてご先祖様に殴りかかった瞬間、キルアを抱えたイルミは部屋を飛び出して行った。

この爺ちゃんマジで強いよ!痛いよ!怖いよ!!

残像を残して動き回る拳を僅かな動きで避けるも、掠るだけであちこちが切れた。

折れた左腕を庇おうものなら容赦なく狙われる。

息吐く間もない攻撃の応酬にこちらの集中力が切れかけてすぐさま退避する。

体力や気力を必要としないゾンビとか反則すぎるよ!!

はっきり言って普通に戦えば俺が負ける。

とにかくゾンビを止める方法を考えないとジリ貧だ。


敵は死体を操る操作系。

ゾンビに肉体的致命傷はないに等しく、目や心臓を撃っても俺達をきっちり認識して襲ってくる。

どうやって俺達を見分けている?

・・・オーラか!

ならばオーラを絶てば奴らには見えないか?

試してみる価値はある。念の修行に含まれる「絶」を行うとご先祖様は俺を見失ったように空を殴った。

ビンゴ!

だけど、これだと念の存在を知らないキルアは逃げられないよな。

悩む俺に足払いをかけてきたご先祖様にヒヤリとする。

げぇ?!マジかこの人見えてないんじゃ?!

他のゾンビは明らかに俺が見えていないのに何でこの人だけ?!


すると今度は馬鹿でかいオーラを手に練り始めた。

ちょ、ちょ、まさかゾンビなのに念も使えるの?!

てか、それどうする気?!

冷や汗を掻く俺を横目にご先祖様は遠慮もなくその馬鹿でかいオーラを俺の居る方にぶっ放した!

ぎゃー!!そんなの避けきれねぇよ!!

とっさに壁を崩してガードに利用したが、思いっきりふっ飛ばされて瓦礫に隠れる。

ちくしょう、いてぇよーーー!!

・・・でも、これで分かった。多分だけど、やっぱりあれは見えてない。

だけどご先祖様のポテンシャルが高すぎて絶も見分けられるから居ると思う方にオーラを放出したんだ。

あれだけオーラがデカけりゃどこに居ようが全部ぶっ飛ばせるもんな。

どうするよ俺・・・。あんなデタラメ怪物倒せるとは思えねぇんだけど。

せめてもう少し誤魔化せたらなぁ。

・・・ん?




「・・・誤魔化す?」




あ。閃いちゃったかも。

誤魔化すとか俺の得意分野じゃね?

俺は思い至った瞬間に、オーラもとい炎を指輪に灯して一気に周囲に広げた。

ご先祖様に居場所がバレたけど、もはや関係ない。

炎を屋敷全部に広げてイルミとキルアの場所を把握した。

どうやらボスには辿り着いたらしい。

幻覚を発動させ俺のオーラをボスのものに換え、ボスに俺のオーラを張り付ける。

もちろんイルミとキルアのオーラも別人に書き換えることも忘れない。

俺の勝ちだと目を開ければ、目の前に迫ったご先祖様の拳があり、風圧で髪が揺れる。

ギ、ギリギリだった・・・!!

混乱しているご先祖様にボスを倒しに行くように炎で指示すると素直に踵を返した。




「うぅ・・・死ぬところだった・・・」




くたびれて崩れ落ちた俺だけど、早く仕事を終わらせたい一心でボロボロの身体に鞭打ってイルミとキルアの元へ向かった。

再びご先祖様と遭遇して警戒している二人を余所に、俺は安心させようとヘラヘラと室内へ入った。




「無事か二人とも?」

「「!」」




青褪めたままの二人は、俺達を無視してボスにズンズン進んでいくご先祖様に視線をやりつつ困惑した視線を向けてくる。

終わったことだから気にすんなと、二人の肩を叩く。

ご先祖様にいじめられてどれだけボスの喚き声がしようと俺は知ーらない!

ボスの声が聞こえなくなった頃に幻覚を解くと、周囲のゾンビは倒れ、ご先祖様の巨体も崩れ落ちた。




「依頼完了だな」




不思議そうにしている兄弟を横目に、ゾルディック家の者にご先祖様を引き取りに来てもらい、

俺達は依頼者の元へ報酬を受け取りに行った。

イルミはなぜ振込にしないのかと首を傾げていたが、俺には依頼者に用があった。

現金で受け取ったイルミが金を運び出している間に俺は依頼者の豪商のおっさんに声を掛けた。




「今回の依頼、どう考えても割りに合わなかった。追加報酬をよこせ」

「は?!い、一体何を・・・」

「ゾルディックにはゾルディックを。良く考えたものだ。ゾルディックから遺体の持ち出しにお前も絡んでいるだろう?」




この豪商のおっさん、ゾルディック御用達の商会らしい。

どうやらその伝手を使って屋敷にゾンビを潜り込ませて遺体を盗ませたと思われる。

あの屋敷に入れるのは本当に僅かな人間しかいないからな。

多分、当初あのゾンビ野郎とコイツはグルだったのだろうが、

大方仲間割れして命を狙われて困った豪商がゾルディックに依頼を出したんじゃねぇかな。

白い顔でこちらを窺うおっさんに溜め息を吐く。




「黙っててやってもいい。ただしそこの箱とあっちの箱の中身をくれ」

「・・・へ?」




そんなことでいいのかと目を丸くするおっさんに目を瞑る。

だってその箱にデカデカとコレ!と矢印が付いてるんだから仕方ねぇだろ?!

本当は許すつもりで来たんじゃないんだけど、まぁいいか。

おっさんは恭しく箱を俺に手渡してご機嫌で俺を見送った。

派手で悪趣味な館を後にしながら俺の中の天邪鬼が言う。

確かに俺は黙っているとは言ったが、ゾルディックが気付いていないとは言ってない。

そしてあのゾルディックが亡きご先祖様を虚仮にされて黙っているとも思っていない。

俺は新たに手に入れた二つの欠片を陽に透かして小さく笑った。







***







ゾルディック家に帰るとシルバとゼノが出迎えてくれた。

事のあらましを知ったらしく、物凄く何とも言えない顔で見られた。

一連の事件は繋がっていたらしいが、そこに幻影旅団と遭遇してシルバはシルバで大変だったようだ。




「すまなんだのう、。ご先祖様と戦う羽目になるとは骨が折れたろ?」

「・・・あぁ、まぁ問題ない」




素直にお宅のご先祖様最悪だったとか言えるはずもなく。

微妙な返答をすれば微妙な顔をされた。

あぁごめん!顔に出てたかな?!




「報酬の件だが、何か欲しい物はあるか?可能な限り応えよう」

「・・・じゃあ遠慮なく」

「何が欲しい?」




実は再会してからずっと気になってたんだけど、シルバの胸ポケットにある奴が欲しい。

そう言えば、目を丸くされて真っ赤な宝石の欠片が出された。

頷けばすんなり渡してくれる。

やったー!これで全部揃ったーーー!

というか何でこれをシルバが持ってたのかが気になる。




「元老院を襲った盗人が持っていた物だったんだが、なぜか蜘蛛も盗人を狙っていて鉢合わせた混乱の中持ってきてしまった」

「そうか」




それ絶対幻影旅団も宝石狙ってたよね?!

マジありがとうシルバーーーー!!

とにもかくにもこれで最後。欠片を全部合わせると一粒の大きな宝石になった。

俺はそれを古ぼけた鞄に放り込むと、ゾルディック家の面々に向き直った。




「じゃあ俺はこれで帰る」

「えぇ?!、もう行くのかよ!」

「ご飯くらい食べて行ってもいいのよ?」

「遠慮しとく」




毒食べたら死んじゃうもん。

黙って見つめてくるイルミの肩を叩き、キルアの頭を撫で回す。

何だかめちゃくちゃ物騒な経験したけど、仲良くなれて良かったよ。

見計らったように迎えが来て俺はとける様にその場から消えた。

それじゃ、お前ら元気でな!


* ひとやすみ *
・一先ずこれで終わりかな。オマケが付くか付かないかはちょっと考え中!笑
 一気に走ったから分かり難いかもごめんなさい!ゾンビはちょっと楽しかった!
 ご先祖様超強かった!ムキムキマッチョなゼノさんが未だに想像できない、私。笑
 霧の能力強くて良かったね、兄様!誤魔化すの超絶に巧いもんね!(言い方
 少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいな!皆さん、今年も何卒よあけうたをよろしくお願いします!     (18/01/01)