ドリーム小説

子供ってもっと素直で可愛い存在だと思ってた。

ディーノや恭弥も少し変わってる所もあったが、それでも兄に優しく可愛かった。

だけど、コイツはちっとも可愛くない!




「ほら、!客なんだからもっと食えよ!これやるからさ!」

「好き嫌いするやつは大きくなれないぞ、キルア」




俺の皿に移された葉っぱやキノコに顔を引き攣らせた俺はすぐさまフォークでそれらを突き刺して

キルアの大きな口に放り込んでやった。

流石の俺でも皿に移された見慣れない食べ物の意味に気付く。

お前、今の全部毒あるやつだろ・・・!

どうやら刺激物だったらしくキルアが吼えているが、俺はお前と違って毒なんか食えねぇんだよ!

まぁキルアが毒物を全部勧めてくるので、おかげでどれが食べられないのかすぐに分かって助かるが。

俺の皿にあるさっき見た葉っぱとキノコを避けて、無難な物を細切れにして飲み込む。

これが不思議なことに美味いんだよなー。

スープは怖すぎてチャレンジ出来そうもないが。




「ウフフ。もうキルと仲良しになったのね、先生」

「これなら大丈夫そうじゃな」




え?!今のどこを見てそんな結論に?!

お宅のガキんちょに毒物盛られてんだけど?!

・・・あぁ、最初から食事には毒盛られてたっけ。

ゾルディック一家団欒の食事中になぜか相伴する俺。

激しく違和感を覚えるのは俺だけか?

すると黙り込んでいた家長が口を開いた。




「息子は他にもいるが、出会ったらアイツらにも指導してやってくれ」




シルバの淡々とした視線が向けられて、どうして俺が断れよう?

カクリとぎこちなく頷いた俺はしつこく毒物を皿に運ぶキルアを阻止すべくフォークを手にした。










***










「それで俺は具体的に何をすればいいんだ?」

「今、やってるんじゃ、ないのッ」

「これが?」




イルミの回し蹴りを避けて死角から飛んできた針を掴むと、クルリとターンして針を投げ返す。

修行部屋に移動した俺達はとりあえず組み手を始めたのだが、そこで俺は気付いたことがある。

イルミの動きがとにかく遅いのだ。

キルアの年齢とかから考えても今は原作開始の数年前であるが、

それにしても動きが鈍い気がするんだが、どうなってんだろう?

まだ20歳にも満たないイルミだが、時々死ぬ気の炎のようなモヤッとしたものを纏う時がある。

そんな時は超人的な強度を誇るため、多分アレが念と呼ばれるものなのだろう。

キルアが俺達を睨むように見ているのでこの場で大っぴらに使ってこないが、

念が使えるか使えないかで物凄い差があると思う。

念とはプロハンターになるために必要な能力のことで、基本的な身体能力の向上はもちろん、

極めれば途轍もない強さを手に入れることが出来る。

念能力によって武器や生き物を作れたり、人の記憶を読んだりと、その形は人によって様々だ。

イルミは操作系であの針が媒体となってるようだが、刺さらなければ意味がない。

俺の背中から襲い掛かってきたイルミを一本背負いで放り投げると、奴は地面に大の字で倒れたまま言った。




「あーやっぱり無理だねー」

「イル兄ッ!何でだよ!そんな奴ぶっ飛ばせよ!」

「無理」

「ッ」




イルミの弱気発言にカッとなったキルアはそのまま俺に突撃してきた。

うおっ!吃驚した!

足運びや技術はまだ肉体も成長しきってないため拙い所はあるが、

何ていうかキルアの発想というか格闘センスはイルミを上回る物がある気がする。

ほら、また予想もつかない動きを絡めて来てやり辛い。

でもまぁ素早い動きでぴょこぴょこ跳ね回っているが、基本空中では直線的な動きしか出来ないし、

単純に急所ばかり狙ってくるから対処法は考えられる。

だから、次に地面を蹴った時に、首根っこを掴んで俺の腕を肘で折ろうとした時に手を離せば、




「捕まえた」




キルアの肩を押さえるように俺は腕で地面にキルアを叩き付けた。

コンクリートがベコリとキルアを中心に円を描くようにめり込んで、ハッとした。

しまった、やりすぎた!!

つい勢い余って・・・!!

腕の下にいるキルアは気絶しており、俺は申し訳なく思った。




「実力差を身を以て体験出来てよかったね、キル」




おいおい。気絶してる弟に掛ける言葉がそれって・・・。

何とも言えない歪な兄弟関係に引きながら、俺はとりあえずキルアを抱き上げた。

さて、どうすっかな・・・。






どうも力が有り余りすぎてる気がする。

全然力入れてないのにキルア押さえ付けたらコンクリートにめり込んだよ・・・。

多分、キルアだったから気絶くらいで済んだけど、あれ普通の人にしてたら頭蓋骨とか陥没してたかも・・・。

あれ、もしかして俺ってこの世界では強い?

力加減に悩みながら、俺はベッドで未だ寝こけているキルアを眺めてチョコムースを頬張った。


うん。分かってる。1つずつな?

まずキルアは俺の部屋に連れ返って来た。

いやだってさ、あの後イルミは仕事があるから執事にでもソレ預けといてと言い捨てて立ち去ったんだもん。

なぜか執事には全然会わないし、キルアの部屋とか知らない上に勝手に入るのも気が引けるしなぁ。

そんでここにいるんだけど、これが全然起きない。

待ってる内に無性に腹が減った俺は、厨房に押しかけて飯とデザートをちゃちゃっと作って戻ってきた。

いや、だってさぁ、ゾルディックと飯食ったけど、毒ばっかで選んで食べたら少ないのなんのって。

かといって、ここの人間に食べ物頼むの怖すぎて、だから自分で作ればいいと思い立ったわけですよ。

何かすっげーシェフにガン見された上に頭下げられたけど、気にしない。

変な人だと思われるの慣れてるからな!

・・・・・・・・うぅ。

貴重な食料を部屋の冷蔵庫に突っ込んだ時になっても、キルアはまだ寝ていた。




「生きてるのか、これ・・・」




呟いてみて血の気が下がった。

ムースを食べていた手をストンと下してプルプルと手が震えた。

そうだよな。いくらキルアでも普通あれは死んじゃうかもだもんな。

心底焦り出してキルアを覗き込んだ途端、幼い子供の目が開いた。




「勝手にころすなよな」




プリプリと怒りながら痛む頭を押さえて起き上がったキルアにホッとした。

い、生きてたー!

殺人の罪まで問われたらマジで終わってたよ!

ぶすぅと不機嫌そうなキルアは口を尖らせた。




「イル兄がムリっていう意味はよく分かった。オレじゃまったく歯が立たないってことも」




ゾルディックってやっぱ実力主義なんだなぁ。

まだこんな小さいのに身の丈って奴を理解しようと頑張ってる。

まぁ感情が追い付かないのは丸見えだが。

それでも、目は腐るどころか爛々と俺を見据えている。

俺をキッと睨んだキルアは言葉を続けた。




「でも!今はムリでもいつか絶対ぶっ倒してやるからな、!」




・・・・・・あぁ、恭弥も俺と手合せするたびにこんな顔してたっけ。

前しか見てない眩しいキルアの姿に俺は小さく笑った。

お前は強いよ、キルア。




「あぁ、楽しみにしてる」




キラキラのキルアが可愛くてそう返すと、何か酸っぱい物を飲んだかのような顔をしてキルアは震え出した。

え?え??何か悪いこと言ったか、俺?!

真っ赤になって怒り出したキルアに首を捻るしかない。




「バッカじゃないの?!何だよそれ?!お前もう反則だよ、バーカバーカ!!」




えぇぇぇー・・・。

よく分からないままに罵られる俺。

マシンガンのように文句を言っているキルアに俺は成すすべなく、持っていたチョコムースを食べることを再開した。

するとなぜか嘘のように黙り込んだキルア。

驚いてよく見ていると、どうやら奴の目は俺のチョコムースにくぎづけである。




「これで機嫌直せ」




冷蔵庫から新しいムースを出してやると、すぐさま奪われた。

お、お前、今の動きが今まで一番キレがあったぞ?!

呆然としている俺を余所にキルアはそそくさとムースにスプーンを突っ込んだ。




「ふんッ。これで許してやらないこともないけどな!」




ぶつぶつ言いながら口に頬り込んで、奴は目を丸くしてムースを見た。

すると急にガツガツと食べ出したので驚く。

お前、わっかりやすいなぁ・・・・。

目をキラキラさせてニンマリしながらムースを食べてるお子様は可愛い。

もうどうしような、コイツ。




「ほら!ゆるしてやるからもう一個出せ!」

「はいはい」




頬を染めて目を輝かしておかわりを要求するキルアにもう一個差し出せば幸せそうに頬張っていました。

この甘党め!

この後、俺が作ったとバレてまた作れと脅しのようなおねだりをされた。

そこまでは良かった。そこまでは良かったんだよ・・・。




先生、少々困ったことになりまして、課外授業という名のお仕事をお願いしたいんですの」




キキョウさんのぶっ飛び発言に血の気が引いたのは無理もない。

曰く、ゾルディック家に泥棒が入って一族総出で出払ってる上に、手が足りず代わりに俺に仕事の依頼をしたいそうだ。

簡単な仕事だからついでに子ども達にも手伝わせて実地訓練をさせて欲しいと言われた。

ゾルディックの課外授業って言葉だけで何でこんなに恐ろしいの・・・?!

俺、もうやだ・・・!!

しかし、チキンな俺がそう簡単に断れるはずもなく、俺はこの仕事で家庭教師を辞めることを条件に仕事を引き受けた。

でも、考えてみて欲しい。

幼い頃から強かったイルミが単独でなく、俺とキルアをセットにして仕事をしなければならない時点で、

楽な仕事じゃないことなど想像に難くないのだが、この時の俺は間抜けにも家庭教師を辞めれることに浮かれ切っていて

この先の危険に何一つ気が付いていなかった。


* ひとやすみ *
・つづき。弟達とは種類の違うチビッ子です。かなり毛色が違うので兄様も苦戦中!
 兄様ここではめちゃ強です。ですが根は変わらずのチキンなので大した差はないかと。笑
 いわゆる、空気プロテインってやつでしょうか?笑
 ついでに兄様の笑顔はスペシウム光線並みにヤバい奴です。キルア超逃げて!笑
 ここから急展開をみせますが、あと少しお付き合い下さると光栄です!               (17/12/04)