最弱ヒーロー×ＨＨ

06.家庭教師の正体(イルミ視点)

父さんが元老院に呼ばれた。暇だった俺は無理やり連れて来られたそこで変な男に会った。

黒髪の人が良さそうな普通の青年。

むしろ普通すぎて怖いを通り越して悍ましい。

ゾルディックを束ねる父さんを前にして何でこんなに普通なのか意味が分からない。

青年は父さんを見付けると親しい友人にでもあったように満面の笑顔で手を上げた。




「やぁ、シルバ＝ゾルディック」

「・・・クロロ＝ルシルフェル」

「おや、そこの君は・・・」

「息子だ」

「へぇ」




楽しげに会話していたクロロという男が俺に視線を向けると父さんが少し前に出た。

あ、やっぱりコイツやばい奴だ。

俺も仕事じゃない所でやばい奴とやり合うつもりはないし、一先ず様子見だね。

そんな俺を見て父さんは身体をずらして少し後ろに下がった。




「ところでお前がなぜここにいる？」

「元老院に聞きたいことがあったんだが、ゾルディックに会えたならもう必要ない」

「・・・・・」

「あんたがこの前殺したあの盗人が持っていた赤い宝石はどこにある？」

「・・・あの仕事で鉢合わせたのはその宝石が目的だったか」




コクリと頷いたクロロに俺は宝石の行方を思って溜め息を吐いた。

あの宝石はすでにに渡った上に、その本人は霧のように消えてもういない。

どうすんのコレ・・・？

父さんは全く表情の変わらない顔でしばらく黙りこんでから答えた。




「あれを手に入れるつもりはなかったが、すでに宝石は譲り渡してしまった」

「・・・嘘だろ。まさか、銀髪の金の瞳の男か？」

「そうだが、アイツを知ってるのか？」

「くそ、最悪だー・・・」




頭を押さえてブツブツ言ってるクロロは完全に俺達を忘れて拗ねている。

どうやら聞くまでもなくを知っているらしい。

完全にゾルディックに興味を失くしたクロロに父さんも視線を逸らして元老院の元に行って来ると俺に告げた。

え、何それ俺は？

父さんは俺の肩を叩いて行ってしまった。

俺にこいつの相手とか無理なんだけど？




「・・・なぁ、ダメ元で聞くが、アイツは今どこにいる？」

「宝石を貰ったら溶ける様に消えたよ」

「だよなぁ・・・。また逃げられた。逃げ足が速すぎるんだよのやつ！」




どうやら赤い宝石というよりを探していたようだ。

それよりとどういう関係なのかが気になる。




「はうちの家庭教師として雇ってたんだけど、君とどういう知り合い？」

「が家庭教師？！・・あぁ、まぁそういう奴だしな。は俺達の親代わりだよ」




親・・・？！

目を瞬く俺にクロロは余計なことを言ったと口を噤んだ。

それはこいつを育てたってことでしょ？

、何やってんの、ヤバいでしょそれは・・・。




「を追い掛けてるの？」

「あぁ。だが全く捕まらない。また違う宝石を狙うか・・・」

「何？って宝石集めてるの？」

「・・・知らないのか？アイツはだぞ？」




・・・？！

噂には聞いていたけどまさか宝石狂いのがだとは思わなかった・・・！

。奴に狙われた奴は生きて帰れないために素性が全く知れない人物だった。

男とも女とも知れず、ただひたすらに宝石ばかりを狙う極悪非道な盗人だと聞いている。

狙った宝石は逃さず手に入れ、その反面数日後には裏取引で宝石が売買されるため金銭目的とされているが

謎が多い人物である。

まさかハンターサイトにも情報がない世界屈指の大泥棒があのだとは思わなかった。

唖然とする俺を見てクロロも一つ頷くと言う。




「まぁ本人はトレジャーハンターとか言っていたがな」




そんな訳あるか！

俺と同じことを思ったのかクロロも不機嫌そうな顔をしていた。

話は終わったのかクロロは俺に背を向けると、が見付かったらまた呼んでくれと言って立ち去った。

しばらくすると、父さんが戻ってきて帰るぞと言った。




「父さん、ってなんだってさ」




隣りを歩いていた父さんの足が僅かに止まる。

無理もない。顔には出てないけどこれは相当驚くネタだと思う。

の情報は驚くほど何もなかったから、人でさえ捨てられるゴミの街、流星街の人間だろうと母さんは読んでいた。

だけど、あの最強最悪なご先祖様と戦ってケロリとしているを見れば有り得なくはない。

どうやったらあんな化け物と対峙出来るのか、何度爺ちゃんと父さんと話し合ったことか。

今思い出しても寒気が消えない。

あの尋常じゃないオーラをぶつけられて平然と立ち、おまけに俺達を逃がす時間稼ぎすら出来る始末。

何をしたのか知らないけど、あのご先祖様を悠然と引き連れて戻ってきた時の笑顔の恐ろしさは記憶に刻まれている。

いいよな、キルは。恐怖でほとんど記憶がぶっ飛んでて。

父さんはどこか納得した様子で歩みを元に戻した。




「ところでさ、さっきのアイツ何者？何かに育てられたって言ってたけど？」

「が幻影旅団を育てただと・・・」




今度こそ父さんは言葉を失って足を止めた。

え、幻影旅団って最近話題の犯罪集団の？！

、何してるの本当に？！




「・・・父さん、何か凄いのがうちの家庭教師だったみたいだね」

「どうやらそうらしい」




どちらからでもなく深く溜め息を吐いた俺達はまたゆっくりと歩き出した。

またどこかでに会えるかな？

会ったら一言言ってやらないと気が済まないね。