ドリーム小説

庭で何か大きな物音が起きるのは日常茶飯事だったから、別にその日が特別だったわけじゃない。

ククルーマウンテンにあるうちにはいろんな生き物がいるし、俺も含めて家族全員賞金首だから侵入者も多い。

だからまたうちの番犬のミケが遊んでるんだと思ったし、たまたま近くにいたからそこに向かっただけ。

だけど特別じゃない何でもない日が、そこで急速に色を持つ特別な日に変わった。


俺がそこに辿り着いた時、そこには男が一人立っていた。

あ、うちから逃げ出して俺と追いかけっこしてた奴、倒れてる。

あーあ、あれ首の骨折れて壊れちゃってるね。

物はいずれ壊れるから別にそれはどうでもいいけど、ヒリヒリした感覚が俺をそこに縛り付けていた。

警戒してるのか、この俺が。

それ程までの実力者なのだろうと男を見た瞬間、眼前までナイフが迫っていてとっさに顔を逸らす。

全く気付かなかった!

むしろここに隠れてるのがバレてる!

絶で気配を断っていた意味はなかったようで、警戒したまま男の前へと出て行った。




「人の家の庭で何してんの?それ俺のなんだけど」




もうすでに死んでる物に興味はないけど、切欠として男に話しかける。

正面から見た男は整った顔をしていたけど、纏う空気が親父そっくりで驚いた。

ここに立ってみて分かる。

この男はヤバい。ここは逃げなきゃいけない所だろうけど、多分動けば瞬殺される。




「あーあ。爺ちゃんに怒られるな、これ」




興味本位で覗いて命を落とすなんて、教えに背いた俺は多分拷問部屋送りだな。

まぁ、その時まで生きてないだろうけど。

さっきのナイフが撫でて行った頬に残った傷を押さえて溜め息を吐いた。

すると、氷のような目をしていた男は爆発的なオーラを出して俺を睨んできた。

あまりの鋭さに思わず飛び退るが、身体に走った寒気は消えない。

それを感じてか、気が付けば爺ちゃんが俺の前に立っていた。

凄い勢いで来たから足元にクレーターが出来てる。

あ、爺ちゃんの目が怒ってるや・・・。




「子どもの戯れじゃ、ここは許してくれんかの。そちらもそちらで家に無断で立ち入ったわけじゃしなぁ」




まぁ、ちょっと調子に乗ってたのは違いないけどさ。

さすが、爺ちゃん。

こんな強烈なオーラ出す奴に喧嘩両成敗だから許せってゴリ押ししてる。

男はジッと爺ちゃんを見た後、小さく息を吐いた。

するとその場の空気が一気に軽くなって、許してくれたのだと俺達はホッとした。

これと戦うと爺ちゃんも怪我くらいは覚悟しないとダメかもしれないしね。




「お主のようなのは久々じゃ。とにかく、一度家に上がっていくとよい。歓迎するぞい」




どうやら気に入られたらしい。

何を考えているのか全く分からないけど、男は頷いて爺ちゃんの後に付いて行った。

あーあ、俺、完全に舐められてるよね?

こんな堂々と背中見せられちゃってさ。

何でこんな奴がうちに居たんだろ?

歳いくつかな?

どんな戦い方するんだろ?

念どんなの使うのかな?

何かいろいろ考えてたら、爺ちゃんが振り返った。




「そうじゃ。お主、名を何という?」

だ」




ふーん。ね。覚えた。

俺はイルミ。










***









が執事に案内されて部屋へ向かうと残された俺は親父と爺ちゃんに声を掛けられた。

あ、やっぱ逃がしてくれないか。

真剣な顔をしている二人に耳を傾ける。




「この馬鹿モンが。ようアレの前に飛び出して行けたもんじゃい」

「イルミ、アレと向き合ってどうだった」

「・・・うーん、何で生きてんのか分かんないね、俺。視線だけで滅多刺しにされた気分だった」

「アレとはヤリ合うなよ、イルミ」




分かってるよ。

を教える側の教師としたのは、俺達を一方的に殺させないためだって。

教え子にしたことで、殺せばの非になるし、ゾルディック一族で囲えば

流石にも俺達をヤッた後に逃げ出すのは不可能に近い。

まぁ、から学べるものは多いし、ここは素直に教えてもらうつもりだよ。

頷いた俺に満足した二人は、立ち去ろうとした俺を掴まえて拷問部屋へ連行した。




「いててて、容赦ないな、爺ちゃんは。母さんに伝言まで頼まれるしさ」




大して痛くもない怪我を擦りながら、の部屋へと向かう。

まぁのおかげで反省時間が短くなったけど。

軽い足取りで部屋に着くと、室内から何か音が聞こえる。

首を傾げながら部屋に入ると、なぜかは上半身裸でキルを猫の子のようにぶら下げていた。




「ねぇ、食事だから来いって、母さんが・・・、あれ?そこで何してんの、キル?」

「兄貴!こいつ不審者!」




キルは馬鹿だなぁ。

実力差も分かってないからか怖いもの知らずというか、無謀にも見慣れないに突っかかって行ったんだな。

うーん。細いのにちゃんと筋肉付いてるなぁ。

俺ももう少し付けたいんだけど。

の身体を見ていてキルに答えるの忘れてた。




「あ、それ、俺達の新しい家庭教師だって」

「はぁ?!またころしちゃうだけだって!」

、それ、キルアね」




がキルにやられることは有り得ないからその心配は必要ない。

まぁこれまでの教師役はみんなあの世に行っちゃったから、そう思っても仕方ないけどね。

キルはちびのくせに結構やるから、少し調子に乗ってる。

この機会に家族以外にも出来る奴は居るのだと知っておくべきだよね。


は持ち上げてるキルを不審そうに眺めていたが、どうやら暴れて騒ぐキルに腹が立ったらしい。

あ、叩いた。けど全然、見えなかった。

予備動作なしとか反則っぽいよね。

キルも全然見えなかったようで、目を白黒させてる。

うん。何だかいい先生になれそうだよ、


* ひとやすみ *
・イルミ視点でした。まだまだ幼い子どもです。
 相変わらず他者を挟むと兄様は途端に別人になる!笑
 ちょこっとワクワクしてるイルミとか貴重ですよ!笑
 短いですが少しは楽しんでもらえたでしょうか?続きはまた今度!           (17/11/05)