ドリーム小説

ふわりと身体が浮く感覚がしてヒヤリと背筋が震えた。

足先から何かが頭へと駆け抜けて、ようやく自分が落下していることに気付いた。

宙を掻いて足元を確認しようと空中でクルリと体勢を整えた瞬間、そこは地面だった。

ダンと豪快に地を踏み鳴らす音がして着地した先は鬱蒼とした森だった。

何で俺落ちてたの?!えーと、さっきまで俺幻影旅団と鬼ごっこしてなかったっけ?!

思い出した恐怖にブルリと身体を震わせると足に残る違和感にハッとする。

つーか、やっべぇ、今何か蹴ったよ、俺?!

足先に何かが当たった感覚が残っており、俺は慌てて飛び退るとそこに人が倒れていた。

げッ!!俺、人を蹴り倒しちゃった!!

目を回したままピクリとも動かない人にオロオロして、すぐさま助けを呼ばなきゃとハッとした。

俺のケータイ文字化け中だし、倒れてる人持ってるかな?

倒れている男の胸元を探れば、何か硬い物が見つかり引っ張り出す。

宝石・・・しかも俺が探してるやつじゃん!・・・貰っとこう。

あとは・・・げッ、ナイフ?!

しかも何か凄い嫌な感じ!禍々しいとはこのことだな!

俺は嫌な物を触ったとそのナイフを茂みに投げ捨てた。

すると、茂みから素早い何かが飛び出した。

猫のような動きを見せたそれに俺は呆然とした。




「人の家の庭で何してんの?それ俺のなんだけど」




サラサラの黒髪を靡かせて淡々とした表情で首を傾げる青年に心底驚いた。

うわ、今の動きといい、顔つきといい、コイツ本当に猫なんじゃね?

俺が蹴倒した男を指差す青年は表情を変えることなく頬に手をやり息を吐いた。




「あーあ。爺ちゃんに怒られるな、これ」




その言葉にドキッとした俺は、今の状況を鑑みて冷や汗を流した。

もしかしなくても俺ヤバい立場にいるんじゃ・・・?

さっきのセリフからして、多分俺今、不法侵入中の上に、コイツの知り合い蹴倒しちゃった感じだ。

ど、ど、ど、どうしよう!!

つーか!!どう考えても俺、悪くない!

一体、何でこんな所に放り出されたんだ?!

全部クロロとあの馬鹿神のせいだ!

腹が立ってギリリと奥歯を噛み締めた途端、青年は物凄い跳躍力で飛び退り、ドンと空気が急に重さを増した。

重厚感が一帯を占めた気がしたのは、何やら凄いお年寄りが現れたからである。

うわー、お年寄りが穴にハマってんだけど?爺ちゃん、落とし穴に落ちたのか?!

次から次へと展開する事態に俺はただ黙っているしか出来なかった。




「子どもの戯れじゃ、ここは許してくれんかの。そちらもそちらで家に無断で立ち入ったわけじゃしなぁ」




え、許すも何も俺の方が圧倒的に悪いだろう?

手の掛かる孫がどうとか話しているが、これってつまり孫を苛める俺を怒りに来たんだよね?!

俺の不法侵入の罪をチラつかせて脅してくる辺り、やる気満々で泣けてくる。

どんなお叱りを受けるのか項垂れていると、お年寄りに最後通牒を突き付けられた。




「お主のようなのは久々じゃ。とにかく、一度家に上がっていくとよい。歓迎するぞい」




それってつまり、顔貸せやコラッってことですよね?!

断りきれない俺は嫌々ながらぎこちなく頷いた。

お年寄りはニンマリと嫌な笑みを見せて、付いて来いと言わんばかりに森の中を歩き出した。

それに付いて行く俺の後ろを青年が離れて付いてくる。

・・・つーか、すっげぇ見られてるんだけど。

穴が開きそうなくらい見られてる背中にダラダラと汗が流れる。




「そうじゃ。お主、名を何という?」

「・・・・・・・だ」

「そうか。わしはゼノ。これ、お前も挨拶くらいせい」

「・・・・・・・・イルミ」




突然、振り返ったお年寄りはゼノと名乗り、俺の背後で黙り込んでいた孫に声を掛けた。

つーか、何だろう、このおかしな空気。

それに何か聞き覚えのある名前な気がするんだが・・・。

こういう時の俺の悪い予感はよく当たる。

ガンガン鳴りっ放しの警鐘に口をへの字にしていた俺にゼノさんは笑って言った。




「ゾルディック家にようこそ。歓迎するぞ、




・・・・・・・・・・・ですよねぇ。

屋敷の前に勢揃いする黒服に歓迎されて、俺は恐怖の館であるゾルディック本邸前で立ち尽くしていた。

逃げられそうもない状況に一気に血の気が下がる。

おい!旅団の次はゾルディック家かよ!!

俺はどうやらあの世に片足突っ込んでるらしく、背中に刺すような視線を向けてくるイルミに泣きたくなった。

あの黒い神、マジ駆除してやる!

ゾルディックに神の暗殺依頼出してやると不毛なことを考えながら、俺は泣く泣く屋敷の中に足を踏み入れた。




ハンターとはつまり狩人。何かを狩る者のことである。

それぞれが各分野で魅力を感じるものを追い掛け得ようとする者のことを総じてハンターと呼ぶ。

それがプロであろうとアマチュアであろうと、ハンターという職にはある程度の強さが求められる。

そのためこの世界には常に危険が纏わりついている。

賞金首や盗賊団、暗殺一家など物騒極まりない世界なのだ。


そして、俺は今、その世界の中でも特殊な暗殺稼業を営むゾルディック家にいた。

それも不法侵入の咎で現行犯逮捕されて。

泣いてもいいよね・・・?




「まぁまぁまぁまぁ!お義父様、この方が?!」

「そうじゃ、キキョウ。世話してやってくれ」

「えぇ!・・・なんてお世話のし甲斐がある素敵な男性」




ドレスを着た黒髪の綺麗な女性が両手を合わせてウットリと俺を見つめてくる。

こんなあからさまに好意を向けられることはないので、ドキドキしちゃうのは無理ないよな?

でも、この場合、ちょっと意味合いが違うのだと俺は知っていた。

この女性は暗殺一家の当主の嫁でイルミの母、キキョウである。

息子に刺されて成長を喜ぶようなぶっ飛んだ人だから、つまり「素敵な男性」は「素敵な玩具」という意味だろう。

キキョウの熱烈な視線に心底震えあがる。

屋敷に入ってすぐに俺の存在がすでに伝わってる時点で、俺の裁きは始まっているのだ。

コイツが我が家に侵入した不届き者なのかとゼノに聞いてるに違いない!

キラキラした視線を見つめ返せず、ソッと顔を逸らすと廊下の角から銀髪の大男が出てきた。

・・・ご、ご当主出たぁーーーーー!!

姿を見せた瞬間から物凄い存在感。

暗殺一家の現当主、シルバ=ゾルディック。

筋肉質な巨体のくせに歩く音が微塵もしないとか、怖すぎて言葉にならない。




「キキョウ」

「あらアナタ、オホホホホ、別に浮気とかではありませんのよ」




妻を咎めるような声を出したシルバに何やら恐ろしげな返答をするキキョウ。

冗談でもそれは心臓に悪いよ、奥さん!

小さく溜め息を吐いたシルバは次の瞬間、熱のない目で俺をジッと見つめてきた。

うッ・・・!蛇に睨まれた蛙ってこういうことか!




「名は?」

「・・・ッ

「フッ。親父、よく見付けて来たな」

「そうじゃろう。しばらく家に滞在するでの」

「そうか。俺はシルバだ。息子を頼むぞ、




うえぇぇぇぇぇぇ?!

何か俺、しばらく滞在することになってるーーーー!!

え?!え?!それって逃がす気はねぇぞってことですか?!

アナタの所の物騒な息子さんを任されても困るんですが、何がどうなってんの?!

俺の混乱を余所に話は進んでおり、キキョウがニッコリ微笑んで言った。




「息子達の家庭教師よろしくお願いしますね、先生?」




はぁぁぁぁ?!

どうなってんの、と、ゼノを見れば、茶目っ気たっぷりに視線を返された。




「そういうことにしておいてくれると面倒がないんじゃが、のぅ」




俺にだけ聞こえるように呟いた言葉に俺は顔を引き攣らせた。

・・・それって拒否権ないですよね?

俺は顔を歪ませて、酷い心労に溜め息を吐いた。




「・・・あぁ」




こうして俺は不法侵入の罪と引き換えに、成り行きでよく分からない家庭教師の任を引き受けることになった。











***










俺は与えられた部屋のドデカク雅やかなベッドの上で一人傷心を抱えて唸っていた。

一体、何でこんなことに・・・。

やっぱどう考えてもあの神が悪いよな!

俺は持っていた荷物をベッドに並べて頭を抱える。

ここにあるのは相棒のと文字化けケータイ、ボロっちい鞄と『コレ!(04/07)』と書かれた不気味な宝石の欠片。

神に言われた通り、宝石の欠片を鞄に入れてみたものの何の変化もなかった。

つまりやっぱり7個見付けて鞄に入れなければ意味がないらしい。

探し物が見つかるまで迎えという名の助けが来ることが無いと悟った俺は項垂れた。

どうやってこんな恐ろしい屋敷で生きて行けと?!

家庭教師ってどうやんの?!

つーか、誰、教えんの?!

以前の家庭教師の経験が生かせそうもなく、俺は深々と溜め息を吐いた。

とにかく、俺の目標は生き残ることだ!

頑張るぞ、おぉー!




部屋の設備を片っ端から試したりした後、よく分からないスケスケシャワー室を体験した。

最初は落ち着かなくて居心地が悪かったが、シャワーを浴びてる内に変な開放感が出て来て困る。

どうすんのよ、俺が露出狂にでもなっちゃったらさ。

シャワー室を出た途端、誰かが居る気配がしてズボンだけ穿いて部屋を覗いた。

すると、誰かが俺のベッドの上のボロ鞄を掴んでいるのが見えた。

やっべ!!それがなきゃ俺、元の世界に帰れねぇんだよ!!

慌てて地面を蹴ると、そいつの首根っこを掴んでベッドに押し付けて、鞄を取り返す。

呻り声が少し高くて驚いた俺はすぐに手を離した。

え、子ども・・・?!

銀髪を跳ねさせた小さな男の子が、咽ながら俺を猫のような大きな目で睨んでいる。




「げほっ、何しやがる、こんにゃろう!ころすぞ!」

「・・・そういうこと言うな。弱そうに見える」

「はぁ?!ふざけんな!ぜったいころすー!!うわッ、はなせよ、おっさん!」




おっさn・・・?!

このクソ生意気な子どもの言うことなんて気にしなくてもいいが、全く、殺す殺すと最近のガキは本当に物騒だ。

ベッドで驚いて手を離した途端、ゆらりと不気味な動きをしたので、何となく再び首根っこを掴んだのだが、

ブラブラと揺れながらプンスカ怒る姿は本当に猫のようだ。

俺が子どもをブラブラさせていると、また誰かが勝手に入って来た。




「ねぇ、食事だから来いって、母さんが・・・、あれ?そこで何してんの、キル?」

「兄貴!こいつ不審者!」

「あ、それ、俺達の新しい家庭教師だって」

「はぁ?!またころしちゃうだけだって!」

、それ、キルアね」



えーーーーーーっと?

これキルア。

俺の教え子、イルミ&キルア。

そんで、またころされちゃう家庭教師。

もうぶっ飛びすぎてて感覚が麻痺してきた俺はとりあえず生意気な子猫を殴っておいた。

いろいろふざけんなよ・・・?


* ひとやすみ *
・猫目兄弟の家庭教師になりました!相変わらず不運しかない!笑
 ミルキが入ってないのは仕様です。ごめんね、仔豚君!笑
 あとH×Hの世界上、人の生死がペランペランです。紙より薄いです。
 出来る限りグロ様にならないようにしてるつもりですが、内容は酷いです。苦手な方は自衛お願いします!
 もう少し続くので付き合って下さると光栄であります!!                          (17/11/05)