でたらめギミック

15. What is the password?

あぁ、親愛なるとリーマスへ。
どうしてこのクラスは問題ばかり起こすのでしょうか。
あ、そう言えば二人に手紙出すの忘れてた。


飛行訓練の授業でネビルの思い出し玉をめぐって、なぜかハリーとマルフォイが言い争う事に。
ヘリコプターをギリギリでかわすほど飛行上手なマルフォイが思い出し玉を投げ捨て、ハリーがそれを見事キャッチ。
それを見ていたマクゴナガル先生にハリーは連れて行かれた。



「ねぇ、ハリーは大丈夫かしら？」
「大丈夫だよ、いくらマクゴナガル先生が厳しいからって退学はないでしょ」



ハーマイオニーは何でかハリーとロンと仲が良くないらしい。
おかげではあれ以来、彼らとまともに話が出来ていなかったが、どうやら心配しすぎだったようだ。
何だかんだ言いながらもハリーを心配しているハーマイオニーに微笑んで返した。







***






結局、マダム・フーチもハリーも帰って来なかった。
もう授業は再開されないだろうとみんなそのまま散り散りになり、も部屋に戻った。
そして食事の前に二人に手紙を書こうとペンをとったのだった。



へ。

ちゃんとご飯食べてますか？
私は元気です。ちなみにグリフィンドールになりました。
初めの内はいろいろ慣れるまで大変そうですが、ギリギリやってきてます。
サラは相変わらずフラフラやっていて団体行動が取れないようですが元気そうです。　
授業の方は「無礼な態度で減点」とか言っちゃうお前の方が無礼だよって感じの理不尽な教師がハリーを苛めているんですが、魔法界ではこんな理不尽ありなんですか？
友人のハーマイオニーがご飯だと言っているのでこれにて。　　
また手紙書きます。

より



リーマスへ。

顔色よくなった？
私は元気です。ちなみにグリフィンドールになりました。
の手紙に書き忘れたから書きますが、ハリーもグリフィンドールです。
サラの馬鹿がつけた傷は治りましたか？
授業はリーマスの方がやっぱり楽しかったです。
今時の闇の魔術の防衛術の先生ってみんなニンニク臭くないと出来ないからリーマスは先生になりたくないの？
ハーマイオニーがお腹を空かせて本気で怒ってるのでこれにて。
また手紙書きます。

より




「！　ご飯！」
「今行くってばー」



……ハーマイオニーを怒らせると本気で怖い。







***






大広間のご飯を見るとたちまちお腹が減ってきた。
は席に着くとポテトサラダを大量にお皿に盛り、食いついた。
何だかよく分からない料理も並んでいたけれど、そこは勢いでいろいろ食べていたら気付けばハーマイオニーが隣にいなかった。
見渡すとハリーとロンと何やらまた言い合っていた。
片手にチキンを持って。



「何やってんだろ、チキンの取り合い？」



がさっきまでハーマイオニーが座っていた隣の空席に目をやると、付近のチキンは全てなくなっていた。
その後、不機嫌そうに帰ってきたハーマイオニーは持っていたチキンに齧り付いた。



「おぉー……いい喰いっぷりで」
「ふんっ」



ハーマイオニーはすごくいい子だ。
たまに心配性すぎていろいろ見境なくなるけど。
なのに何でハリー達とあんなに仲が悪いのか、には全く分からなかった。



「仲良くなれそうな気がするのになぁ」



の溜め息交じりの呟きは小さすぎて隣の彼女には聞こえなかった。










部屋に戻り、チキンの食べ過ぎで気分悪そうなハーマイオニーをちらりと見て、不意に机を見ると手紙が目に入った。



「(しまった！せっかく書いたのに出すの忘れてた)」



手紙を書くのを忘れていただけに、早く出したかったはチラリと時計に目をやる。
時刻は十一時を廻った所だった。
は手紙を掴んで珍しく部屋にいたサラに声を掛けた。



「サラ、ふくろう小屋に案内して」
『何で私が？』
「毎日フラフラしてんだからそれくらい知ってるでしょ？」
『……』
「決まりね」



はこっそり部屋を抜け出すと一直線にふくろう小屋に向かった。
小屋に入った途端、ものすごい勢いで飛び回るふくろうに仕事する気満々だーと感心していたのだが、どうやらサラに驚いただけのようだった。



「これとこれ、お願いね」
「ホゥ」



夜空に羽ばたいて行ったふくろうを見送って、後は寝るばかりと肖像画の所まで引き返した。
どうやらお出掛け前の様で太った婦人は帽子の羽飾りを目立つ所に付け直していた。



「あら、お帰りなさい。合言葉は？」
「……えーと、なんだっけ、サラ？」
『知るか』



……睡眠不足の危機に直面しているようです。
サラは溜め息をついて踵を返した。



「サラ！　どこ行くの？」



無言のサラについていく以外、には思いつかなかった。