でたらめギミック


14. Right and Left judgment.


ドリーム小説

一直線に地下牢へ向かっていく双子に抱えられながら、は酷く狼狽していた。
このままではスネイプをアヒルのおまるに突っ込む事になる。
は腕の中にあるおまるに視線を落として、その姿を想像し震え上がった。



「( 殺 さ れ る !! )」



フレッドとジョージに軽々持ち上げられ、宙を切る足を必死にバタつかせて抵抗する。
まるでスワンボートでも漕いでいるみたいだ。
スンと鼻を鳴らしておまるで二人の頭を殴ろうかと考えた時、ジョージが何か声を上げた。



「見ろよ、ロニー坊やがいるぜ」
「え?!」
「おーい!」



は首をグルリと回して二人の向かいから歩いてくるロンとハリーを見た。
ギョッとしたように目を見開いている二人はおそらく、後ろから追い掛けて来ている管理人の姿を捉えたのだろう。
何せ双子の悪戯に遭い、おまるに嵌ってるから目を疑いたくもなる。
しかしには二人が神様に思えた。
とにかく自分を助けてくれる常識人のはずだと、藁にも縋る気持ちで叫んでいた。



「助けて、ハリー!!」
「え?!」
「ウィンスコット?! 君そんなトコで何してんの?!」



ロンの驚きに答える暇もなく、管理人が追い掛けて来る。
その恐ろしい形相に思わずハリーとロンも引き攣り、なぜか一緒に逃げる羽目になった。



「何で僕達まで逃げてるの?!」
「見ただろハリー! フィルチの顔! 今止まったら確実にやられるよ!!」



逃げる五人の中でケラケラと楽しそうにしているのはフレッドとジョージだけで、残りは必死に足を動かした。
T路地に差し掛かり、どちらに逃げるかと迷った挙句、双子は右、ハリーとロンは左と宣言した。
同級生に見捨てられたは石で頭を殴られたような顔をして、二人を見た。
クルリと右折してハリーとロンから引き離された瞬間、強く腕を引かれて気が付けば身体が宙を浮いていた。
掴まれている手が誰の手か認識するより先に、はハリーの上に雪崩倒れた。
助けてくれたんだと気が付いた時、は手にしていたおまるの存在に気が付き、離れていく双子に向ってそれを投げた。



「忘れ物ー! スネイプ教授じゃなければまた誘ってねー!」



フレッドが難なくおまるをキャッチして、二人の楽しそうな声が遠くから返ってきた。
追い付いたフィルチが右と左に目を向けたが、おまるを持っていた双子を的に絞って右へと走っていった。



「おまる持ってたら危なかったー……」
「君、もしかしてフレッドとジョージを囮にした?」



怪訝そうな声を上げたロンには曖昧に笑って、座り込んでいたハリーに手を差し出した。
それからふとは自分が何をしたのか気が付いた。
から話を聞いていて知っていたとはいえ、今まで一度も話した事がない同級生が親しげに「ハリー」だなんて。
血の気が引いたはすぐに手を引っ込めようかと思ったが、ハリーがその手を掴んで起き上がったから出来なかった。



「あの、えーと、助けてくれてありがとう、ポッター……?」
「あれ? 君さっきハリーって呼んでなかった?」



は変な所が鋭いロンに殺意を覚えた。
グッと黙り込んだに、ハリーも気付いていたように困惑気味に視線を向ける。



「親の知り合いにハリーって名前の子がいてつい、ね」
「あ……、そうなんだ」
「私は。ウィンスコットよりそっちで呼んで」
「僕もハリーでいいよ」
「僕はロン」



同じ名前も何もハリー・ポッター本人なのだけれど、は誤魔化しつつもようやく仲良くなれた事を喜んだ。







***






はおまる事件の後、散々ハーマイオニーに怒られた事や、スネイプがアヒルに填まってるのを見てしまった事など今日あったいろいろな事を日記に綴った。
とんでもない休日だったなぁと疲れを吐息と共に吐き出す。
早く寝なさいと口煩い母親のようなハーマイオニーに返事をして、は羽ペンを置いた。



『こ……えよ……わ……め』



耳慣れぬ声が聞こえては驚いて振り返る。
しかし、近くには誰もおらず、はベッドに入ろうとしていたハーマイオニーに声を掛けた。



「ハーマイオニー、何か言った?」
「言ったわよ。早く寝なさい、
「……え、あ……、うん」



明らかに聞こえた言葉とは違う事に首を傾げながらも、は日記を片付け灯りを消した。
夜になっても指定席にはやはりサラの姿がなかった。


ひとやすみ

・おまる事件後編。笑
 やっぱりウチの薬学教授はうっかり双子の悪戯に掛かったようです。見たいなー、それ。
 ようやくハリーとロンと絡めたー!ここまで長かったよ。これハリポタ連載じゃなかったっけ?(09/06/25)