でたらめギミック


13. Twins and a duck and mischief.


ドリーム小説

待望の休みがきた。
しかし、今日も今日とての朝は早い。
パチリと目が開くと起き上がって髪を撫で付ける。
それからいつもは服を着替えて同じベッドで寝ているサラを起こさないように真紅のカーテンを開けるのだが、
やはり今日もサラの姿がなかった。
ホグワーツに来て以来、サラはとびきり早起きだし、どこにいるのやらあちこち歩き回っていた。
は小さく溜め息を吐いて、同室の女の子達の寝息を聞きながらパジャマを脱いだ。
朝食までずいぶんと時間があり、まだ誰も活動していないこの時間はにとってエンペラータイムだ。
先輩を気にせずに談話室のフカフカの椅子で本を読めるし、図書室に行かなくても静かに課題が出来る。
何より校内探検が出来るのだ。



「魔法さえなければ、道ぐらいすぐ覚えられるのに」



魔法学校の生徒にあるまじき台詞を溜め息混じりに呟いて談話室を出た。
相変わらずおかしな出入り口を開いて静かな廊下に降り立つ。



「あら、こんな朝早くにどなた?」
「おはよう、ご婦人」



がローブの裾を整えて太った婦人に笑いかけると、クスクスと愉しそうな返事が返ってきた。
何がおかしいのか首を傾げていると太った婦人が目を細めて小さく微笑んだ。



「おはよう。あなた、ウィンスコット家の子ね」
「分かるの?」
「ええ。あの家の子はみんな礼儀正しいくて、いつも私に声を掛けてくれるわ。もしかしてあなたも地図を作るためにお出掛けするのかしら?」
「地図?」



がコテンと首を傾げるといっそう愉しそうに太った婦人はコロコロと笑う。
あなたも、という事は他に誰か動き回る地図を作ろうなんて面倒な事考えてる人がいるのだろうか。



「ふふ。どうやら違ったようね。このホグワーツを地図にしようなんてあの子達くらいかしら」
「地図かぁ。あれば便利かも」
「ところで時間は大丈夫?」
「あ。それじゃご婦人」
「ええ。いってらっしゃい、ええっと……」
だよ」
「いってらっしゃい、



パタパタと駆け出したの背中に太った婦人は絵の中で手を振った。







***






ご婦人と別れて数分。
――――迷子になりました。
本気で地図が欲しくなったのは言うまでもないです。
この辺りは一体どこなんだろう、とキョロキョロと首を動かせば背後から物凄い騒音が聞こえてきた。
窓の外の明るさ具合から、もうそろそろ朝食の時間なんだろうがいくらなんでも朝からこの騒音はない。
ガッタンガッタンと何か固い物がぶつかる音に眉を顰めて、後ろを見ていると何か白い物が角から飛び出した。



「ア、ヒル……?」



白い身体に黄色いクチバシ。
間違いようもなく、アヒルなのだが、どこか動きがぎこちない。
それにこのおかしな音は何なんだろう。
がマジマジとアヒルに目を向けていると、今度は角から赤いのが二つ飛び出した。



「待てよ、アヒルちゃん!!」
「次はアイツの所に行かなきゃなんだからな!」



真っ赤なそれはそっくりな二人の人間で、ようするに双子。
グリフィンドールでいつも騒ぎの中心にいる例の双子がアヒルを追いかけていた。
目を瞬いていると、今度は角から猫が飛び出し、追うように管理人のフィルチが飛び出してきた。



「今日という今日は許さんぞ、双子めが!!」
「へっへっ! 良く似合ってますよー」
「少しはそれで可愛くなったじゃないですかー」
「やかましいわッ!!」



目が点になるとはこういう事だ。
アヒルを双子が追い掛け、双子を管理人が追い掛けているのだが、おかしな所は管理人の身体がアヒルに填まっているという所だ。



「おい、相棒。前方にウィンスコットの姫がいるぜ?」
「ああ、相棒。とっても遊んで欲しそうな顔してるよな?」



とんでもなく嫌な予感がして逃げようと思ったの腕に例のアヒルが飛び込んできた。
固いアヒルの身体に驚いて視線を落とすと、それは幼い子が使うアレだった。



「お、おまる?!」
「コレを知ってるとはお目が高い!」
「てな訳でご同行願いマース!」
「ひぎゃーッ!!」



おまるを抱えたの腕を左右から持ち上げられて、追いかけっこに強制参加する羽目になった。
ぶらぶらと足を宙に浮かせながら、おまるに填まったまま追いかけてくる管理人を見る。
何だかものすごく恐ろしい格好だ。
魔法を使っておまるでこんな事をする人なんておそらくこの双子しかいないだろう。



「あれで飛べたら管理人さんも喜んだんじゃないかな」
「おい聞いたか、フレッド。姫もなかなかイケる口みたいだぜ」
「そうみたいだな、ジョージ。飛べない鳥に飛ばせようって所は盲点だったな」
「……姫じゃなくて。降ろしてよ、双子さん」
「どうかジョージとお呼び下さい、姫。残念ながら姫はご当選なさりましたのでこのまま同行いただきます」
「は?」
「俺はフレッドと。我らが薬学教授にそのアヒルを贈呈するまでお付き合いいただきます」
「はぁー?!」



冗談じゃない。
だたでさえ目を付けられているのだ。
そんな悪戯に付き合えば、今度は何されるか分からない。
青ざめたの悲鳴も虚しく、誰も助けてはくれなかった。


ひとやすみ

・ふとドリフ的なイメージが湧いてこんな話が……。
 魔法界にもおまるってあるんでしょうか??
 やっぱりアヒルが一番可愛いと思う!!        (09/05/30)