でたらめギミック
10. A confused grouping.
ドリーム小説
「イッチ年生! イッチ年生!」
特急が終点に着いた時、辺りはすでに陽が落ちて暗闇に包まれていた。
ようやく着いたホームではもみの木のように大きな人が出迎えてくれた。
どこか独特な話し方をするその人を誰かがハグリッドと呼んでいたのが聞こえた。
ハグリッドの持つ小さなカンテラを追って、ぞろぞろと歩くと大きな湖に出た。
まるで海のような湖を辿ると水面に何かが映っている。
その実態を確かめようと視線を上げるとそこには大きく美しい古城が聳え立っていた。
その壮大さに息を呑んだのはだけでなく、新入生は皆同様に目を丸くした。
それを見ていたハグリッドはさも楽しそうに新入生をボートに乗せて城を目指した。
***
聞いてない。
聞いてない!
城で待っていたのは組み分けの儀式だった。
寮で生活する以上、組み分けは必要だと思うけれど、全校列席の場だなんて聞いてない。
すでに何人かが終えた組み分けに私は深く溜め息を吐いた。
私はから貰ったウィンスコットの名前に誇りを持っている。
だけど、この名前はあまり評判のいい名前ではない。
がそう言ったように風当たりが強いのは事実だった。
自身はそんな事、気にもしていないし、友達はみんながどんなにイイ人かを知っている。
だけど世間はそんなに甘くはない。
だから出来るだけ黙っていなさい、とに言われて特急の中でも嘘を吐いた。
名前を呼ばれて帽子を被る同級生を見送りながら、私は組み分けよりも名前を呼ばれるのが少し怖かった。
「ポッター・ハリー!」
先程までの広間の騒々しさが嘘のようにそこに来て急に静かになった。
私も噂のハリーが気になって覗くと、黒いくしゃくしゃの髪にメガネを掛けてる細い男の子だった。
帽子をかぶって少し経つとグリフィンドールと帽子が高らかと叫んだ。
テーブルから発せられる歓声は耳が割れると思ったくらいだ。
それから次々と儀式は進み、気付けば残り3人となっていた。
ウィーズリー・ロナルド少年はあっさりグリフィンドールに組分けされ、ハリーの隣に座った。
「ウィンスコット・」
喜んでいたみんなの顔が怪訝そうに歪んでこちらを見てくる。
目立つのは嫌だけど、この名を貰って後悔した事なんて1度もない。
私は意気揚々とスツールに座り、帽子を乱暴にかぶると頭に声が響いた。
『こりゃ! 乱暴に扱うでない! うむ。君はウィンスコット家の子だね』
「養子だから血の繋がりはないけど……」
『いやいや、君にはちゃんとウィンスコットの血が流れておるよ』
「え?」
『ふーむ。あの家の子は皆スリザリンと決まっておるのじゃが、稀に君のような子が現れる』
「は? ・ウィンスコットはどうだったの? 教えてくれなかったんだ」
『……? 長い間組分けをしてきたが、皆覚えておる。しかしなどという子は組分けした事がない』
話しすぎた、と帽子は唸って分析を始めた。
帽子の言った言葉に衝撃を受けている間、ずいぶん時間を無駄にしてしまった。
私が現実に戻った時には帽子はすでに寮を決めていた。
『勇気があり、力や才能がある。何よりその運の強さ、ここで発揮するとよい』
「グリフィンドール!!」
まだ帽子に聞きたい事があって私はスツールから動こうとしなかったが、マクゴナガル先生が帽子を取り上げてグリフィンドール寮のテーブルに鋭い目で促した。
覚束ない足取りで広間を見ると皆呆然としていて何故かスリザリン生がまばらに喜んでいた。
空いてる席に座ると同じグリフィンドールになったバーパティと目が合ったが、すぐに逸らされた。
溜め息をついて目の前のからっぽのお皿を見ていると肩を叩かれた。
「おめでとう! 同じグリフィンドールよ、よろしく!」
「ハーマイオニー!」
まさかこのタイミングで声を掛けられるとは思っていなかったのですごく驚いた。
ハーマイオニーは隣で怯えていた少年に席を譲って欲しい、と交渉して難なく隣に座った。
「ハーマイオニー、あなたマグル出身?」
「えぇ。両親は歯医者。だけどウィンスコット家についてくらい本で読んだ事があるわよ」
「本ねぇ……」
「魔法界の旧家で闇に属する者に列なる一家。稀に生まれる予知の力を持つ者を当主とし、光から闇へとあちこち姿を現す謎めいた一家って書いてあったけど」
「へぇ」
「能力を持った者はスリザリン卒じゃないそうよ。もしかしての事かもしれないわね」
「へぇ。だからスリザリン生が喜んでたのか」
「へぇってあなた自分の事何も知らないのね」
「知るも何も自分には関係ないと思ってた」
「え? まぁそうよね。ウィンスコット家って断絶したって書いてあったもの」
「え?!」
今日一日で頭が破裂しそうだ。
情報が一気に流れ込んできて混乱している。
が組み分けしてないってどういう事?
ウィンスコット家の断絶って何があったの?
はそういう事は何も教えてくれない。
わからないことだらけだ……。
それからどうやってご飯を食べて寮に辿り着いたか全然記憶にない。
気付けば深紅のカーテンに包まれたベッドに座っていて、運び込まれたトランクが置いてあったが、サラはどこにも居なかった。
ひとやすみ
・ハーマイオニーとは長い付き合いになりそうです。むしろなります。笑
伏線大好きな私のせいでが謎に包まれてきました。(09/03/23)