でたらめギミック
09. The departure for encounters.
ドリーム小説
相変わらず人が多いキングズ・クロス駅の中に9と3/4番線なんて物が存在するなんてやっぱり魔法界はどこか可笑しい。
姿現しの出来ない私を連れてはキングズ・クロス駅に向う。
9月に入って蒸し暑さも軽減したけど、は相変わらず白の薄手の長袖とジーンズを着こなしている。
普段からマグルの格好をしているだからどこも違和感がないけど、駅に着いてびっくりした。
女物の服を着ているおじさんや、靴下を手にはめている人など変な格好の人が結構居た。
多分あの人たちマグルの生活を知らない魔法族なんだろうな。
驚いた顔をしていたからか、が笑いながら変な格好をした人たちを見て面白いだろ、と言った。
「面白いから放ってるんだよ」
悪戯っぽく笑ってるに苦笑していたらレンガに消えていく人を見てしまった。
「あれがホグワーツ特急への入り口だ」
「でもあれ、壁……。痛そう、だな」
「怖いのか?」
ニヤリと笑うとレンガを見比べて思わずムッとした。
のニヤニヤ顔は面白い事が起こる時に見るけれど、それが自分に向けられてるとなると少々いただけない。
女は度胸! と、私はレンガに向き直って突っ込んだ。
目を瞑っていたので闇雲に走っていればドンと衝撃がきた。
「、もうホームに着いたから目を開けてごらん?」
その声にそっと目を開けるとリーマスが微笑んで抱き止めてくれていた。
レンガを過ぎると再びプラットホームだったけど、止まっていた大きな列車はホグワーツ特急と書いてあった。
リーマスの後ろを見るとトランクの上には不機嫌なサラがいた。
私の後に慌ててやってきたをリーマスが窘めた。
「僕が止めなきゃが怪我してた所だよ」
「だって、まさかあんなに勢いよく通り抜けるとは思ってなかったんだよ」
お説教しているリーマスが腰に手を当てた。
その手に3本傷がいくつもあって私は青ざめてリーマスの手を取った。
「サラっ!!」
サラはちらりとこっちを見たがすぐにプイッと顔を背けた。
リーマスは私のトランクとサラを姿現しでホームに運んでくれたのだけど、
サラは素直に運ばれてくれなかったようだ。
私はひたすら謝ったけど、リーマスはこんなの掠り傷でも何でもないよ、と笑って許してくれた。
人が少ない内にコンパートメントにトランクを積み込むと二人は窓の外で私を見送ってくれた。
「いい? 必ず連絡をよこす事! 無理だろうケド危ないことはしない事! あとは楽しんでらっしゃい」
「僕にも手紙くれると嬉しいな」
ホグワーツ特急に乗り込むと窓越しにとリーマスが微笑んでいた。
二人に大きく頷くとリーマスが手招きしてきた。
なんだろう、と思って窓から身を乗り出すと頬にチュッと軽く何かがあたった。
それが何か気付いた時には私は頬を押えて真っ赤になっていた。
おかしな事にも何故か赤かった。
「あれ? もお別れの挨拶してあげないの?」
「えぇっ?!」
リーマスの悪意のない微笑みに押されても反対側にしてくれた。
照れくさくてすぐに離れようとするとに抱きしめられた。
「ハリーと仲良くするんだよ? それと直感は信じた方がいい」
「え?」
すると今度はいきなり引き離された。
にんまり笑うとクスクス笑っているリーマスが何だかいつもの二人でつられて笑顔になる。
「そろそろ行くよ。人が集まってきたしね」
出来れば魔法使いにはあまり会いたくないと言っていた二人は寂しそうにしていたけど手を振ると振り返してくれた。
列車から離れた二人は笑って次の瞬間にはバシッという音を残してホームから消えた。
自分のコンパートメントに戻ると悠々とサラが場所を占領していた。
リーマスの件をまだ許してない私はサラを睨むと反対側の席に座ってトランクから教科書を取り出した。
カタン、と動き出した列車を確認して魔法薬学の教科書に視線を落とした。
いつの間にか読み耽っていたらしく、声を掛けられて初めて顔を上げた。
「あの、席空いてなくて……。ここいいですか?」
声を掛けてきた黒髪の女の子に隠れるようにして2人の女の子が覗いていた。
真新しい制服を見るからに1年生のようだ。
笑ってどうぞ、と言えば安心したようになだれ込んで来た。
向かいに寝転んでいたサラを手元に呼び寄せて抱き上げた。
「あの、あとどれぐらいで着きます?」
不意に黒髪の女の子に声を掛けられて困った。
「私も新入生だからわからないな」
「ほら、やっぱり!」
「だってぇ……」
何がやっぱりなのか分からなくて首を傾げていると黒髪の子が慌てて言った。
「あなた何だか大人っぽくて上級生かと思ったの」
「私が?」
「姿はアジア系だから可愛らしいんだけど雰囲気がね」
「アジア系は年下に見えるってチョウとあなたに会って初めて実感したわ」
クスクス笑いが伝染したのか皆で噴き出した。
それから誰からでもなく名乗った。
「私はチョウ・チャン」
「私は……ってあなた達もしかして双子?」
「えぇ? 気付くの遅いわよ、! 私はバーパティ・パチル」
「ふふ。私はパドマ・パチルよ」
それからはいろいろ話すようになったけど、この歳の女の子ってこんなにおしゃべり好きだっけ?
止めどなく出てくる話に少し疲れて3人には悪いけど理由をつけて抜け出す事にした。
コンパートメントを出ると通路を走ってくる子が何人かいた。
どうやら鬼ごっこか何かしているようだ。
そんな中、隅っこの方で何かを探している男の子が居た。
「何かなくしたの?」
「え?」
丸っこい顔をした男の子の目は泣きすぎて腫れていた。
「トレバーが居なくなったんだ」
「トレバーってあなたのペット?」
コクンと頷いた彼はネビルというらしい。
一緒に探してあげるよ、と言うとネビルは嬉しそうに笑った。
それからネビルの手を引いて目の前にあったコンパートメントに入った。
「ねぇ、ネビルのペットのトレバー見なかった?」
「ペット? トレバーってなんなの?」
「ヒキガエルだよ」
「えぇ?!」
「見てないな」
というか、ネビルさん。
ヒキガエルだなんて私、聞いてませんけど!
がっくりうな垂れるネビルを連れて通路に出ると栗毛の女の子と鉢合わせた。
ぶつかりそうになって謝るとどうやらネビルの落ち込みようが気になったようだ。
「どうしたの? 何かあった?」
「ネビルのヒキガエルが居なくなったから探してるんだ」
「トレバー……」
「私も手伝ってあげるわ! 私はハーマイオニー・グレンジャー。あなたは……」
「」
「そう、はそこのコンパートメントを調べて居なかったら着替えた方がいいわ。もうすぐ着くみたいだから」
「あ、ありがとう」
キパキパ喋るハーマイオニーはネビルを引っ張って行ってしまった。
言われた通りに聞き込みを開始して収穫もなく、自分のコンパートメントに戻った。
扉を開けると驚いたことにサラが飛びついてきた。
『あのお喋りどもを何とかしろ!』
いつも強気なサラの声に疲れが見えて何だか面白い。
私は軽い笑いを漏らしてもうすぐ着くそうだ、と皆に伝えた。
するとすぐ後ろの扉が開いて三人組の男の子が不機嫌そうに入って来た。
大柄の男の子二人の間にいるシルバーブロンドを撫で付けた子はいかにもガキ大将のようだ。
舐めるように見てくる視線が何だか気に入らない。
それに見るからに悪人面をしていて、嫌な感じ。
「今年アジア系のウィンスコット家の奴が入学するって父上が仰っていたんだが、お前か?」
漫然とした顔で真ん中の彼がチョウを見た。
チョウが首を振って否定すると、今度は私を見てきた。
「違うよ。着替えたいのだけど?」
私がそう言うと眉を顰めて彼は他2人を連れて出て行った。
私以外の3人はホッと息をついて一緒に着替える事にしたらしい。
私はそっとサラを追い出して、皆と一緒に着替えた。
ひとやすみ
・黙っていれば可愛い子なんです。笑
パチル姉妹のイメージがイマイチ分からず、今のうちに謝っときます。。(09/03/22)