でたらめギミック


08. Matriculation.


ドリーム小説

あれから冬を越え、春が来て夏を過ごし、また冬を越した。
そしてもうすぐこっちに来て二度目の夏が来る。



「ここに来てもうすぐ二年か……」



変わった事はたくさんある。
たどたどしかった英語はネイティブに話せるようになり、魔法にもそんなに驚かなくなった。
無理矢理ママに英語教えられてて良かったと、ここに来て初めて思った。
そして何より保護者だったが憧れの人になっていた。
一緒に生活していると、いろんな物が見えてくるようになる。
もともとも日本人とのハーフらしく、姿など似ている所があったけど、は大人で、魔法にも予知にも驚かされてばかりだった。

変わった事はまだある。
家族が増えた。
ホントに生意気な家族だけど。
そしてなぜだか私は魔法が使えるようだ。



「おや、サラはホントに賢いね。、ここはそうじゃなくて……」



そうだった。今は勉強中だった。
この世界に疎かった私は普段の生活に支障がない程度にと勉強を教えてもらっていた。
羊皮紙の上の間違いを指し示す猫と、猫を撫でているこの人は、いつも私に勉強を教えてくれている。
この猫はものすごく嫌そうな顔をして避けているけど。

猫の名前はサラザール。教えてくれているのはリーマス。
ちなみにこの猫は喋る。
だけどその声はどうやら私にしか聞こえないようだ。
サラとの出会いを語ると長い。
面倒だから省いて言うと、ダイアゴン横丁で杖を買った時に出会った。
というか、降ってきた。
それはもう突然に空から猫が降ってきた。
その猫を飼おうとが言ったので今この家にいる。
あの時サラと出会ったのは初めてじゃなかった。
私があの世界とさよならした時、最後に見たのがこの灰色赤目の猫だったから。
そしてサラのせいで私はここに来ることになったらしい。
今更起こってしまった事にどうこう言うつもりもないし、
何だかんだ言いながらも心配してくれるサラが私は好きなのだ。
それにサラにも何だか知らないけど事情があるらしいし。



、少し休憩にしようか。じゃないと羊皮紙が可哀想だ」



リーマスに思考を遮られて羊皮紙に視線を落とすと、羽ペンから落ちたインクで大きなシミが出来ていた。
こっそりリーマスを見ると笑ってお茶の準備をしてくれていた。

彼はリーマス・J・ルーピン。
詳しくは知らないけどの同級で親友だそうだ。
彼が来た当初はルーピン先生と呼んでいたけど、本人にリーマスと呼んでくれ、と言われてこうなった。
体調がいい時はほとんど家に来ているから、私にとってはいい先生でいいお兄ちゃんのような存在だ。

は時々ふらりとどこかに行く時がある。
今日も朝からは出掛けてる。
そんな日は必ずリーマスが代わりにやってきていろいろ教えてくれる。
特にリーマスの教えてくれる防衛術は分かりやすくて完璧だと思う。



「リーマス、やっぱり先生に向いてるよ」
「上の空で聞いてくれる生徒に言われてもなぁ」
「うっ。ごめんなさい」
「はは。でもそう言ってくれて嬉しいよ、

「あとはその顔色何とかならないのリーマス? まるでオバケみたい。私が何か作ってあげようか?」
「え? 料理出来る様になったのかい?」
「失礼ね。料理くらい出来るよ。ちょっと味が爆発的に美味しくないだけで……」



何だか悔しくて、恥ずかしさで末尾が小さくなっていく。
リーマスは微笑みながらキッチンを見て言った。



「本当に君たちはそっくりだね」



キッチンに置いてある昼食からは焦げ臭い匂いがしていた。
それは料理の苦手なが私たちに用意した昼食だ。
やっぱり今日もリーマスお手製の美味しい料理になるんだろうな。
リーマスが言うように私は本当に小さい頃のに似ているらしい。
確かにリーマスと初めて会った時の彼の驚き様は凄まじくて今でも笑いが込み上げてくる。
だって開口一番が……。



、君、いつ子供産んだの?』



だよ?
私とは二人して爆笑してリーマスとはすぐ仲良くなった。
いつものようにリーマスとサラと美味しいお昼を済ませてから読書に戻ると、ドアの側にいたサラがいきなり私の所まで走ってきた。
その瞬間激しく扉が開かれた。



「リーマス! ハリーが居なくなった! ダーズリーが、ダーズリーが!!」



何を言ってるのかさっぱり分からなかったけど、こんなに取り乱したを初めて見た。
私はそっとサラを抱き上げたけど、きっと2人はそんな事も気付いてもいないだろう。



「少し落ち着いて、
「落ち着いて居られる訳ない! きっとダーズリーがハリーを……!」



イライラと部屋を歩き回るを見ながら私は腕の中に小さく話しかけた。



「ハリーって誰だか知ってる、サラ?」
『私が知ってると思っているのか?』
「まさか」



私が聞いてみただけ、というと溜息で返されたが、サラは不意に顔を上げた。



『おい。手紙だ』



サラが顎で示した窓をコツコツと叩くフクロウが1羽いた。
今にも飛び出して行きそうなを宥めるリーマスの声を聞きながら手紙を受け取ってお茶受けのクッキーをフクロウにあげた。
差出人を見ると何も書いていなかったが、インパクトのあるHの紋印がそこにあった。



『これは……。仕掛けはない。ただの手紙だ』



サラが私の肩に飛び移って手紙を目を細めて見ていた。
取りあえず見ていても仕方ないので封を開けると、そこにはこう書いてあった。



「この度はホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されました事……え?」



あの大騒ぎの中、声が聞こえていたのかリーマスがこれに反応してくれた。



「おめでとう、。ようやく入学かぁ、もう僕が教えられないのは少し寂しいけどね」
「何だって?! おめでとう! 君なら私よりすごい魔女になれるよ! しかし、こんな緊急事態にダンブルドアも……そうか! ダンブルドアに連絡を!!」



今にも姿現しして消えそうなを私は思わず掴んだ。



「待って! 追記があるの」



これ以上待ってられない、との眉間の皺は言っているようだったけど、先を続けさせてくれた。



「少々事情があってハリーは今ハグリッドと一緒におる。慌てん坊が居るやもしれんから知らせてやっておくれ」



はもう一本眉間に皺を寄せたけど、もう飛び出して行こうとはしなかった。
かわりに腕を組んでリーマスを見た。



「ハグリッドと一緒なら心配ない。だから大丈夫だと言っただろう、
「でも何でハグリッドと……?」
「あ。そのハリーと私、ホグワーツで会えるって最後に書いてあるよ?」



私の言葉を聞くときょとんとしてどちらからでもなく、なるほど、と呟いた。
どうやらもリーマスも納得がいったらしい。



「ハリーも入学かぁ」
「……もうそんなに時間が経っていたんだな」
「……みたいだね」



二人は大きく溜息をついて笑った。
どこか一瞬、違う人のように感じたけどいつもの二人に戻ってほっとした。



「慌てん坊っての事だよね?」



私が思い出したかのようにそう言うとリーマスと目が合った。
はしゃがみ込んで頭を抱えてあの爺さんは、と呻いた。
の慌てぶりを思い出して噴き出すと、リーマスも一緒になって笑い出した。


 ひとやすみ

・ばびゅーん!と行き過ぎました。笑
 ほぐほぐわつわつホグワーツがようやく見えてきました!(09/02/26)