でたらめギミック


07. Classmate and tutor.


ドリーム小説

この家に来たお客さんとこんなに楽しそうに話しているを見たのは初めてだ。
滅多にお客さんの来る事のないこの家の扉がついさっき叩かれた。
の代わりに私が出れば、優しそうな人が眼をパチパチさせて私を見てきた。
何と言うか……、ボロボロな人だ。
ツギハギだらけのローブやたくさんの小さな切り傷だらけで心配になる。
ここに来てよーく分かった事だけど、ホントに私は小さい頃のにそっくりらしい。
の幼い頃を知る人達に何度となく縮み薬かと問われて、やっぱりこの人にも聞かれた。
仕舞いにはの子供ときた。
おかげでが笑死しそうなくらいお腹を抱えて喘いでる。



「くはは! やっと家に来てくれたんだね、リーマス」
「……が礼を言いに家に来ないとトロールを迎えに寄こすって言うから」
「脅しじゃんそれ!」
「ぶっ! くく、脅してなんかないよ、。ふふ、親友を脅す訳ないでしょう?」
「……親友なら人の事そんなに笑わないよ、?」
「…………ごめん、リーマス」



何だかオーラが黒いような気がする。
というか、ホントに親友なのこの二人……?
立ち話を切り上げてはその人をテーブルに招き、お茶の準備をし始めた。
私もを手伝ってお客さん用のカップを出してその人の前に置いた。
その人はニッコリ笑ってお礼を言った。
やっぱり最初の印象通り優しそうな人だ。
私もいつもの席に着くとが紅茶を三人分注いでくれた。



「初めまして、僕はリーマス・J・ルーピン。の同級生だったんだ」
「初めましてルーピンさん。私は・ウィンスコット。の家族です」
「あー。私はの保護者ではあるけど母親ではないんだ」
「え? そうなの? 僕はてっきりこの子はシリウスと君が学生時代に……」

バンッ……!!


び、び、ビックリした!
ルーピンさんが何か言ったら、がテーブルを思いっきり叩いて立ち上がった。
紅茶が零れているのが目に入る。



「リーマス。……あの人の話は無しだ」
……」



テーブルに手をついたまま俯いているの表情は見えないけど、何だかいつもと違う雰囲気に居心地が悪い。
長い沈黙が痛くて二人を盗み見ると二人とも落ち込んでいるように見えた。
一体何があったんだろう?
がここまで怒るなんて。



「全く。いつまでそんな学生時代の変な噂信じてるんだ、リーマス?」
「え?」



空気が重いと感じていたら、急にが困ったように笑った。
さっきまでの雰囲気はどこに行ったのか、それはいつものだった。
思わずホッと息を吐いたのはルーピンさんも同じようだ。
あの雰囲気はもう出来れば体験したくない。
はやれやれ、と言う感じで首を振った。



「君もかリーマス。学生時代から何故かみんな私と誰かをくっ付けたがる」
「君の勘違いじゃないのかい?」
「……まぁいい。でもリーマスが来てくれて助かった。相談したい事があるんだ」



和んできた辺りで、相談話になりそうだったから私は立ち上がった。
だって相談事なら私が居ない方がいいでしょ?
は時々突飛もない事を言うからその類じゃなければいいけど。
こっそり立ち去ろうと音を立てないように歩いていたらに腕を掴まれて縮み上がった。
し、心臓に悪いよ、



の事なんだ」
の?」



二対の目が私に向けられて、驚くやらビビるやらどうしたらいいのか分かんない。
つまり掴まれてるのはここに居ろって事なんだよね?
私はうるさい心臓を落ち着けてもう一度椅子に座り直した。



が素晴らしい魔女なのは間違いない。だけどこの子は面白い事に私と同じで日本人とのハーフなんだ」
「ジャパニーズ?」



初めて知った。
てか、も日本人と英国人とのハーフだったんだ。
すごい偶然。
アジア系とのハーフだとは思っていたんだけどね。
だって長い髪は黒くて艶々だし、肌は真っ白と言うより健康そうな黄色。
ま、日本人にしちゃ白いけど。
目は黒に見えるけど実は灰色がかった青。
そしてリーマスさんとの会話を聞いてて私は気付いてしまった。
私、の事、全然知らない。



「日本のマグル育ちだから魔法界の事も知らない。だから家庭教師をつけようと思うんだけど、どう思う、?」
「え? 私は助かるし、嬉しいけど」
「ようするにいい家庭教師を知らないかって事だよ、リーマス」



それからルーピンさんは真剣に家庭教師になれそうな人を考えてくれた。
うんうん唸りながら出て来た名前はほとんど知らない人ばかりだったけど。



「セブルスはどうかな?」
「セブは無理だ。この前の薬の件でを怒鳴って帰ったくらいだから。あの眉間の皺を数えてから言ってよ、リーマス」
「トンクスは?」
をどこでもこける達人にしたいならそれもいいかもね」
「ならハグリッドは?」
「……ホントに考えてるの、リーマス?」



と、まぁこんな感じ。
結局心当たりがなくなったらしいルーピンさんは頭を抱えていた。
私としては見付からないのにニヤニヤとしているの方が気になるんだけど。
それはルーピンさんも同じだったみたい。



、真剣に考えてるのかい?時間的余裕があって、を大事にしてくれて、勉強を教えられる人を探さないといけないんだけど?」
「そうだな。心当たりが一人あるんだ」
「誰?」
「きっといい先生と生徒になれるよ、リーマスとなら」



次の瞬間、長い沈黙が続いた。
は今何と言った?



「先生、と、生徒」



はニヤニヤとルーピンさんを指差して、次に私に指を向けた。
お互いに顔を見合わせた所で、盛大に声を上げた。



「「 どういうこと?! ッ!! 」」



このユニゾンはのお気に召さなかったようで面倒そうに頭を掻いていた。
いくらなんでもルーピンさんも考えてなかったようだし、それはダメなんじゃ……。
やっぱりのニヤニヤには裏があったよ……。



「だから、リーマスにの家庭教師を頼みたい訳だよ。ちゃんと報酬も払うよ?」
「そうじゃなくて!」
「そうじゃないなら何が問題なの? は嫌なの?」
「嫌じゃないけど……」
「じゃあ何の問題もないでしょうが」
「だって僕は……」
「リーマス、また同じ事言わせる気? 何度も言ってるでしょ、関係ないって。これ以上同じ事言わせたら分かってるよね……?」



最強伝説!!
有無を言わさない迫力にルーピンさんは血の気の引いた顔をしていた。
私にとってはありがたい話だからルーピンさんが納得して家庭教師をしてくれるならそれでいい。



「何だか、がごめんなさい……」
「いいんだよ、親友だからね……」
「( 親友って何……?)」
「ともかく、これからよろしく、
「はい、ルーピン先生」


 ひとやすみ

・ちょっと短いですが、とりあえず一区切り。
 もう少し書けたらバビュンとホグワーツに飛んでもらお!そうしよう!(09/01/05)