ドリーム小説

松伯。老松。またの名を遠甫。

達王に招かれ朝廷に仕えた飛仙。

そしてお祖母ちゃんの先生で、良き友人でもあったとは言う。




「憐泉が行方を晦ましたと聞いた時、天帝は主上を見放されたと思うた。あの頃の主上は

 酷く憐泉に傾倒しておられたゆえにの。三公に就いていても何の権もないわしには主上を止められなんだ」




遠甫は一瞬とても悲しそうな表情をしたが、すぐに微笑んでを見た。

憐泉が蓬莱で子を作り、孫を作り、そうしてその孫が慶へと帰って来たのだ。

遠甫は達のこれまでの話を聞いてとても嬉しそうに笑う。




「憐泉から受け継いだ物を使う使わんは次第じゃ。何を考え、何を行うかよく吟味すれば自ずと見えてこよう」

「はい」




お祖母ちゃんに似た雰囲気を持つ遠甫には力強く頷いた。

お互いの関係がハッキリした所では重い口を開いた。

キョトンとしている主と老人に眉根を寄せて呟く。




、悪い知らせだ。楊州と宣州が偽王側に寝返った」

「なんですって?!」

「これで残るは紀州と麦州だけか」




この時点で偽王軍と王師の差は圧倒的で、もはや手も足も出ない。

三州が攻め落とされてからまだ間もないというのに、なぜこうも簡単に二州が寝返ったのか。

圧倒的な兵力に怯えたのか、それとも・・・・。

の怪訝そうな表情にはさらに表情を暗くした。




「偽王軍の言い分は嘘臭く、納得できる物ではない。だが事実、あいつらは景麒を助け出したと言って連れて来た」

「台輔を?!」




は遠甫の問いに唇を噛んで頷き、目を見開いて何も言わない主に視線を向けた。

大きな目をスッと細めた所では拳をきつく握った。

静か過ぎる・・・。

主の性格を知っているは、黙り込んでいるに酷く焦った。

佇まいを直したは遠甫に頭を下げた。




「遠甫、今までお世話になりました」

「・・・どうする気じゃ、

「大丈夫。私は冷静よ。私だって今まで何もせず生きてきた訳じゃない」




は微笑んでいた。

遠甫はその表情に溜め息を吐いてをチラリと見てからそうかと一言呟いた。

荷を纏めに行ったの背を見ながら、遠甫は隣のに言う。




「なるほど。本当に憐泉に似ている」

「あぁ」

「「 怒ると手が付けられない 」」




冷静というより冷徹。

恐ろしいほど殺気の溢れる微笑は憐泉が憤慨している時によく見られた。

そしてその微笑が向けられた相手は大概、死んだ方がマシだと思えるような目に遭ったのだ。

はどこまでも似ているその孫に溜め息を吐いて、を追い掛けた。






***






「ただでさえ青白い顔をしてるのに景麒を戦場に連れて行くなんて信じられない!!」

『・・・普通は偽王に捕らえられたことを怒るのではないのか?』

「景麒には使令がいる。例え不意打ちであっても捕らえるのは簡単じゃないはず。何かあったんだよ」




の背に跨り、達は空を駆けていた。

偽王軍の拠点である征州に向かっている最中だが、何分情報が足りない。

この一月にあった事をと会話しながらは頭に纏める。




『征州で雁の黄猿に会ったぞ』

「・・・黄猿?まさか延麒のこと?」

『あぁ。景麒に慶の様子を見ていて欲しいと頼まれたそうだが、その景麒はどうやら王を見付け蓬莱に渡っていたらしい』

「え?!じゃあ本物の王様がいるってことじゃない!!」




蓬莱で王を見付けた景麒が一人で帰ってくるはずがない。

つまり王も一緒に慶にいるはずなのだ。

しかし、王が渡るほどの大きな蝕が起こったという話など聞いていない。

それどころか、前に蝕が起きたのは随分と昔だったはずだ。

じゃあ、王は慶にはいない?

有り得るとするなら、雁か巧のはずだ。




。行き先変更よ。景麒より先に王を探さなきゃ。雁に行こう」

『雁?』

「巧にはいないと私が思いたいの」




巧は海客に厳しい国だ。

辿り着いたとしても捕まればまず命がない。

だからどうか雁にいてくれと願うばかりだ。











に無茶を言い、昼夜問わずに空を駆けて雁へと辿り着いた。

一先ず情報が欲しいと街の人に声を掛けては愕然とした。

世の中、思い通りにはいかない。

虚海側沿岸どころか、雁で蝕は起きていないという。

誰に聞いても答えは同じでは行き先を間違えたのだと気付いた。




、巧へ飛ぶぞ」

「待って!、ずっと飛びっぱなしじゃない」

「だが、王の安否の確認が急務だろう」




それを言われると黙らざるを得ない。

しかし、の顔色の悪さを見て意見を変えようとは思えなかった。




「それでも巧へは遠すぎる。せめて烏号までにして。そこからは青海を船で渡るから」




反論を許さないの暗緑の瞳には是としか答えられなかった。

靖州を抜けて貞州に入ってしばらくすると日が落ち始めた。

今日はこの辺りの街に泊まるかとが辺りを見渡した時だった。




「ねぇ、雁にも群れた妖魔が出るの?」

『五百年続いてる国に出る訳・・・・、あれは欽原[きんげん]か!』




の視線を追って橙に染まった空を黒く染める鶏大のおかしな尻尾を持つ鳥がわさわさと群れていた。

群は何かを狙うように容昌の街へと降りて行く。

に名を呼ばれて答えるまでも無く、は群を追いかけた。


* ひとやすみ *
 ・キンゲンは蜂みたいな妖鳥らしいんですけど、蜂みたいな鳥ってどんなんよ?笑
  物凄く気になる所ではありますが、私がちっとも想像出来なかったので
  蜂みたいな、の一言をあえて書きませんでした。笑
  さぁ!頑張れ、!                                      (10/02/04)