ドリーム小説
「うっわー!何このちまいの!かっわいいー!!」
「え、あの、ぼく・・・」
「女仙か?態度を弁えよ」
「あ、景麒。久しぶりー!」
「、今の景麒に会うのは初めてだぞ」
いつも以上に興奮しているには呆れた目を向けた。
蓬山に着けば、見慣れた女仙があっさり奥へと二人を通した。
やはり碧霞玄君のお墨付きは効果テキメンのようだ。
その途中に金色の大きいのと、黒い小さい二人組を見付けたは臆面もなく気軽に声を掛けて今に至る。
警戒しているのがヒシヒシと伝わる慶の麒麟と、その影でこっそりとを見上げている戴の麒麟がそこにいた。
先頃、蓬莱から帰還したという噂の黒麒麟が目の前の子供なのだろうとは目星を付けて口を開いた。
「これは。一応私の主で、玄君に招かれてここに来た。不審者ではない」
「玉葉さまの?」
益々眉間に皺を寄せた景麒がを見て「これが?」などと言うのでは不機嫌そうにと景麒を見た。
これと呼ばれるのも納得いかないが、主に向って不審者とはどういう了見だ。
無礼者二人をは睨み付けながら、景麒の影に隠れる小さな子供に視線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
「君が泰麒だね。私の事はって呼んで。日本から来たんだよね?私も一応胎果だから日本生まれなの」
「え、さんも日本の方なんですか?」
「うん」
しっかりと見返してきた泰麒にはニッコリ微笑んで返した。
泰麒の目の下が赤く腫れてる。
おそらくたくさん泣いたのだろうが、まさか泣かしたのは景麒ではないだろうなとチラリと傍若無人の金髪を見た。
未だに警戒の色が解けない景麒に小さく溜め息を吐いたは観察するように見てくる泰麒に笑った。
「どこかへ行く途中だったんでしょ?私は玉葉様に会いに行って来るから、早く行っておいで」
「あ、玉葉さまに夕食に少し遅れるかもしれませんと伝えておいてもらえますか?」
「分かった」
手を繋いで紫蓮宮の方へと歩いていく二人に手を振るを見ては少し感心した。
が子供っぽいからなのか、泰麒が人見知りしないのか、すぐに打ち解けてしまった。
まぁ、相手が誰であろうとその懐に拒まれる事無く入り込んでしまうのがだとは主の性格をよく理解していた。
「玉葉様のお招きの理由が分かったね」
「景麒との顔合わせ、か?」
「うん。私が秋官目指してるのもバレてるんだろうけど、泰台輔にまで会わせてくれるなんて大盤振る舞いだよね」
苦笑するを迎えに来た女仙に続いて二人は玉葉のいる露茜宮へと向った。
現在、蓬山公である泰麒が露茜宮で生活しているため、宮の中では女仙が忙しそうに夕餉の準備に追われていた。
そんな中、玉葉がとを面白そうに出迎えてくれた。
「その様子だと泰麒と景台輔に会うたようだの、。で、どうであった?」
「景麒に会わせていただいた事を感謝します。普通に会いに行ったら門前払いされてたと思いますから。
・・・今度の景麒はいつにも増して鉄面皮で警戒心が強すぎだと思いません?」
の答えに玉葉はケラケラと笑い、衝立の向こうで聞いていた女仙はギョッとした。
相変わらず歯に衣着せぬ物言いをするにはいつものように深く溜め息を吐いた。
その後は泰麒が景麒が麒麟になって見せてくれたと飛び込んで来て、何とも不思議な顔ぶれでも相伴に与った。
***
数日の間、玉葉の好意で蓬廬宮に泊めてもらったとは、早い内にと景麒のいる紫蓮宮へと足を運んだ。
泰麒が朝支度している間に話をしてしまおうと言う魂胆だ。
前以って話しておいたからか、景麒はいつもの仏頂面を下げて達を待っていた。
促されるままには小卓に座り、景麒の紫苑の瞳を見た。
「景麒は杜憐泉って聞いた事がある?」
「杜憐泉・・・、数十年前に突然姿を現して、列王に禅譲を薦め麒麟を残したという」
「うん。それ私」
紗亥は、達王に列なり崩れ落ちた王、列王として諡号されている。
事実は景麒が言った通りではないのだが、今を生きる他人から見ればそれが歴史なのだ。
は少し昔を懐かしむような顔をして笑った。
景麒はとんでもない物を見るような目でを見ている。
から聞いた話では、お祖母ちゃんはただ一人、達王だけと決めて慶に下り官吏になったらしい。
だから私も、自分が仕えるべき人に出会うためにこれまで勉強を続けてきたのだ。
だけどこれ以上はもう放っておけそうにない。
「私もね、仕えたい王様がいたの。だけどそれに気付いたのが遅すぎて、彼はすでに王様を辞めていた」
「それは・・・」
「私はいつか私が仕えるべき人のために慶を守ろうと思う。これ以上の荒廃は避けなきゃ」
息を呑んだ景麒は己が王、舒覚を思い出して、唇を噛んだ。
最近では王宮の奥に引きこもり、政務を顧みることもせず放り出してしまった。
どうにかしなければと思っていた矢先に玉葉からの声が掛かり、逃げるように蓬山へ来たのだ。
「私には慶のための化身みたいながいて、列王の願いが込められた号がある。
これ以上ほっつき歩いてたらお祖母ちゃんに怒られちゃう。私はアナタの力になりたいの」
「・・・・・何で、ですか」
「今一番国を憂えてるのは景麒だから。
・・・・・・・・景台輔、私を官にお取立て下さい。必ずやアナタの傍まで上り詰めて見せましょう」
真摯な目と雰囲気に気圧された景麒は目の前で頭を下げたをただ見返すことしか出来なかった。
だが一方で確かには自分の味方なのだと暗雲に陽が差し込んだ気がした。
ヘラリと笑ったが本当に杜憐泉なのかは窺い知れないが、
それでも景麒は言葉を噛み締めるように静かに目を閉じ、慶を頼みますと一言答えた。
* ひとやすみ *
・泰麒と景麒の戯れに乱入。笑
時系列的にあっちこっちの原作に首突っ込んでます。笑
ようやく慶に辿り着きそう・・・・! (09/08/12)