ドリーム小説
「玉葉様!供麒が王気が見えると」
「昇山者か。それはまた急な」
「それが何かに遮られていたようで、近くになって突然」
「・・・の簪じゃな」
慌てて飛び込んできた女仙はオロオロとと玉葉を見比べていたが、自身動揺していた。
訳が分からぬままを見れば欲しい言葉が返ってきた。
「言い忘れておったが、昇山者の中に玉を持っていた者がいたぞ」
「は?!」
「私の半身なのだ。玉の居場所くらいは分かる」
「何それー?!早く言ってよそんな大事な事ー!!」
すっかりいつものとの雰囲気に逆戻りしてしまっている。
玉葉はクスクス笑いながら立ち上がると、に促すように細めた目を向ける。
「そなたらも大事な物を取りに、蓬山公と共に参るがよい」
***
「あなたが杜憐泉殿ですか」
「って呼んで。まだその名を名乗れるほどの事何もして無いから」
人の良さそうな微笑みで迎えてくれたのは、体躯が良く人の良さそうな顔をした男だった。
その男が何者なのか、その長く輝く髪を見れば一目瞭然。
はうーむ、と唸ってその髪を睨む。
「ちょっと赤っぽいけど、確かに金髪ね」
「あの、殿」
「供麒、私が思うにあなたこっ酷く叱られるわよ」
「?」
昇山者に王気と聞いては真っ先に彼女を思い浮かべた。
絶対にあの子しかいないという確信と、マシンガンのように喋り倒す彼女を思い出しては供麒に告げる。
が哀れむように見てくるのが、もちろん供麒に分かるはずもなく、首を傾げる。
女仙を三十近く引き連れて、供麒は使令に跨り空高く舞い上がった。
仰々しいお出迎え一行の背後からはの背に乗り追い掛けた。
「よく無事で着いてくれたなぁ」
「背は泰山の如く、翼は垂天の雲の如し。その鳥を鵬、鵬は王。ゆえに王を頂く昇山の旅を鵬翼に乗ると言うのです」
「鵬翼・・・?」
にこりと笑った女仙が、狼となり話せないの代わりに説明してくれる。
肯定するように頬を掠めていったの尾には嬉しそうに笑った。
珠晶の翼なら、さぞかし大きな物であろう。
翼から落ちるものなら容赦なく怒られるだろうから。
は絶対良い王様になるだろう珠晶を思って大きく笑った。
途中、昇山者一行に会ったが、そこに珠晶は居らずなぜか利広だけがいた。
狼に乗るに利広は目を見開いて驚いていたが、無事を喜んでくれた。
供麒が王気を辿り、利広が丘の下に珠晶と頑丘と駮を見付け駆け寄って行った。
は丘の上に降り立ち、崖下の王と麒麟の邂逅を見届ける事にした。
珠晶に膝をつき頭を下げる女仙達と見慣れた昇山者達。
は丘の上で途方に暮れて挙動不審な珠晶をの背から見守る。
やはり珠晶の前で膝を折った供麒に微笑んだ瞬間、パチンと大きな快音が響き、次にもっと大きな声が轟いた。
「だったら、あたしが生まれた時にどうして来ないの、大馬鹿者っ!!」
周りの反応は呆然、唖然。
も怒るだろうとは思っていたが、まさかの平手。
顔に小さな紅葉を飾りながらも、供麒は幸せそうな笑みを湛えて深く叩頭した。
「天命をもって。御前を離れず、詔命に背かず、忠誠を誓うと誓約致します」
「許してあげる」
どこまでも強気な珠晶に耐えられず、は吹き出した。
の背を叩いては珠晶の元へと舞い降りた。
「あっははは!珠晶らしい!ほらね、こっ酷く怒られたでしょ?」
「!!」
がから降りて供麒を見れば、ようやく納得したような表情で苦笑していた。
すると鬼のような形相で珠晶がを掴んで揺さ振る。
「アンタねぇ!無事なら無事と言いなさいよ!馬鹿!」
「しゅ、珠晶!締まってる!
首、締まってる!!」
「アンタみたいな馬鹿心配して損したわよ!ほらコレ」
少し咽ながら珠晶が差し出した物に視線をやって思わず目を見開く。
その見慣れたフォルムは・・・!!
「私の玉簪ー!!何で珠晶が?!」
「あの・・・」
そこにいたのは室の家生であった鉦担で、すごい勢いで頭を下げた彼には思わず驚く。
一息に事情を説明した鉦担には珠晶を見てから苦笑した。
「もういいよ。返って来たんだし、ね、」
『私は初めから怒ってなどいない』
「おぉ。これこれ!あとで髪結ってね」
脳に直接響くようなの声が久々に聞こえて、は嬉しそうに狼の首元に縋り付いた。
新たな供王と共に黄海を旅をし、天仙と出会ったり、天仙にスカウトされたり、いろんな事があったが、
無事玉簪は手元に戻った。
はニッコリと笑って言った。
「終わりよければ全てよし!」
気楽そうに笑うにと珠晶の小言が飛ぶまであと少し。
* ひとやすみ *
・ようやっとここまでッ!涙
珠晶の誓約はこんなだといいなーっていう私の願望。
鵬翼編の本筋が書けてよかったです!あと一話お付き合い下さい。(09/07/11)