ドリーム小説
「つ、疲れたー・・・」
あの後、蓬山へ戻り、珠晶とその一行は手厚く持て成された。
突然、誰も彼もがかしずくようになったというのだが、珠晶は珠晶のままでに散々説教をした。
そこにが加わって最強タッグを組まれれば、なす術はなし。
逃げるように宮を飛び出して来た訳だ。
「?」
「あれ?頑丘、駮!」
「お前、本当に生きてたんだな」
「勝手に殺さないでよ」
駮の首を撫でていた頑丘に走り寄ると、その後ろに星彩と白兎がいる事に気付いた。
は目を輝かせて星彩と白兎に飛びついた。
簪殿と同じ白でもこちらは癒しの白だ。
「駮も無事でよかったよー!いろいろ話聞いたよ頑丘。大変だったんだってね。足大丈夫?」
「問題ない」
「そっか。頑丘と駮に友情が芽生えて、未練がましく駮と離れたくないって頑丘が言うなんて、ちょっと意外」
「
なんだそれは」
「え?利広がそう言ってたよ?」
心底嫌そうな顔をした頑丘は全部嘘だと訂正した。
星彩を手に入れたのに、また駮を取り戻した頑丘が理由を教えてくれなかった腹いせのつもりらしい。
「名前も付けてあげたんだってー?そりゃ一緒がいいよねー」
「俺が付けたんじゃない。珠晶だ」
「へぇ。何て名前?」
「・・・・・・・・・・更夜」
「は?」
その最近よく聞いた名前には目をパチクリさせた。
それってあの更夜だろうか?
珠晶が凄い名前って言ってたから期待してたけど、確かにある意味凄いよ。
「更夜って、犬狼真君の?」
「!!お前何でそれを・・・」
「えぇー!!ホントに更夜の更夜なの?!」
焦ったように目を見開いた頑丘を余所に、はお腹を抱えて笑い出した。
あの更夜から名前を取るなんて。
「あっはははは!駮が可哀想ー!絶対駮の方が可愛げあるもん!!」
「お、まえ、真君を知ってるのか?!」
ひいひい言いながら目尻の涙を拭って辛うじて頷いた。
だが、頑丘がそれ以上追求する事は出来なかった。
なぜなら、それからずっとが死ぬほど笑い転げたからである。
「うるっさいわよ、!!アンタの馬鹿みたいな笑い声が宮まで・・・・、白兎?!」
一応、位が高いと女仙達の間で認識されているを誰も黙らす事が出来ず、見かねた珠晶が自ら乗り込んで来たのだ。
しかし、その怒声もすぐに驚愕に変わり、昇山の途中で盗まれてしまった白兎と見事再会する事になった。
「え?何でどうして?!あぁ、白兎!」
「あれ?珠晶、白兎と知り合い?」
「家から連れて来たんだけど、途中で悪質な男に騙し取られたのよ」
「あ。もしかしてアニーの言ってた女の子って・・・」
白兎に抱き着く珠晶を見てはニッコリと笑って、二人によかったねと言った。
珠晶の代わりに盗人をとっちめておいたからと意気揚々と言ったに珠晶はよくやったと笑った。
何が何だか分からない頑丘の溜め息は二人の笑い声にかき消された。
***
昇山組と合流してから何だか怒涛のような時間をすごし、は疲れを滲ませながら一人歩いていた。
珠晶が天勅を受けるまでこの宮にいるのがしきたりらしい。
やりたい事や、やらなければならない事がたくさんあるのに、次に門が開くのは夏至。
もどかしい気持ちにムシャクシャしながら歩いていると、どこかで誰かの話す声が聞こえた。
が辺りを見渡すとすぐ近くに衝立があり、その中から男と女の声がする。
「卓朗君が急ぎ国に戻られたいのなれば、雲海を通られても構いませぬぞ」
「助かります」
チラリと覗いた中には玉葉と利広が隠れるように話し込んでいた。
何だか二人は知り合いのように見えるんだけど・・・?
「(タクロー君?)」
「卓朗君か。どこかで見た事あると思っていたが、奏の太子だな」
「(!)」
が首を捻った途端に、口を掌で覆われて振り向けばがそこに立っていた。
人差し指を口に翳してを黙らせると、睨むように利広を見た。
一体、奏の太子が供王と面識を持って、何を企んでいるのか。
「これ。そろそろ隠れ鬼はよさぬか、」
「・・・・?」
優雅に微笑んだ玉葉には全て気付かれていたようで、とは渋々姿を現す。
利広は目を瞬かせて、玉葉とを見比べた。
「と知り合いなのですか?」
「はの、天仙になれと言うても頷かぬ頑固な娘でな」
「天仙?!」
「ふふ。中々に面白い顔をしておるの、。どれその胸の内を話してみい」
楽しそうに目を細めた玉葉の言葉にと利広はの顔を見てハッとした。
いつになく真剣な顔をしたは澄んだ翡翠の瞳を利広に向けた。
「タクロー君、私を奏の大学に入れて下さい」
確固たる決意と信念を持って、の新たな挑戦が始まる。
* ひとやすみ *
・またも中途な感じですが、鵬翼編はここで完結です!
続きは二章に持ち越し。ここでようやく一区切りでございます。
相変わらずハチャメチャなヒロインですが、少し大人になりました。笑
今後もお付き合い下されば光栄です!しかし、タクロー君とは何てファンキーな名前に・・・笑(09/07/11)