ドリーム小説

寝床を決めて野営の準備を始めると珠晶達が夕食に誘ってきた。

断る理由もないのでお誘いを受け入れ、珍しく賑やかな食事をとる事が出来た。

後片付けをして、盛る炎に水を掛けて火を消す。

今夜の月は電灯と見間違うくらい不思議に明るいから、火は居場所を知らせる危険な目印にしかならない。

どことなく落ち着きのない夜空を見上げ、は立ち上がった。




「じゃ、私は戻るね。お邪魔しました」




土を払うように身体を叩いてそう言ったを見て、何故か利広も立ち上がる。

首を傾げて利広を見れば苦笑された。




「気付いてるだろうけど、何だか危なそうだから送るよ」

「は?」

「あれ」




利広は自分の肩を指差したが、とくに目ぼしい物など付いてない。

となれば・・・。

は利広の肩越しに見える人物に目を留めた。

なるほど。挙動不審なその人物に気付かれない様、利広は自分の身体で隠して指差したのか。




「あの人確か・・・」

の知り合いかい?」




確か室様の所の家生だったはずだ。

そう利広に告げるとふーんと不思議そうにしていたが、とりあえず気付かなかった振りをしてと利広は歩き出した。

その人がなぜ達をジッと見ていたのか全然心当たりがなく首を捻るばかりだ。




「昼間からずっとの事見てたけど、あの視線は尋常じゃないよねぇ」

「そんな前から?!」

「うん。も罪な女だね」

は?!




その意味が分からなくはないは楽しそうな利広を無視して、視線の主を盗み見た。

室様に会わせてくれた親切な鉦担と言う名の家生が一体何の用だと言うのだろう?

まさかホントに私に惚れたとかではないだろうな。

ふと鉦担と目が合い、気付かれてしまったため、はニコリと笑って手を振ってみた。

それを興味深そうに観察してた利広の前で、鉦担は悲鳴を上げて逃げて行った。




「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・中々、危険な恋の香りがするね」

「・・・今のが恋する女に対する反応だと本気で思ってるの、利広?」




乾いた笑いを漏らす隣の優男を睨んでは溜め息を吐いた。

ホントに何だったんだろう?

すぐに思考を止めたと利広は再び歩き出した。

どうやら鉦担がいなくなっても利広は送ってくれるつもりらしい。

並んで歩いている隣の男は珠晶の護衛で付いてきたらしいが、見返りも何もなく珠晶には私が必要だろう?の

一言で付いて来た変人らしい。(頑丘調べ)

私といい勝負の馬鹿だと思うけど、この人何だか絶対裏がある。

は良くもない頭脳を働かせて確信していた。

騶虞をあげたり貰ったりする人なんだから、間違いなくお偉い身分なのだろう。

そう思ったは関弓まで送ってくれた六太とたまと言う名の騶虞を思い出した。

そこから展開した発想に、さすがにそれはないなと首を振ったはここでいいと言って礼を言った。

不思議そうにしていたが、一つ頷いた利広は珠晶達の元に返っていった。








***








は急に目を覚ました。

何か音がしたわけでも、何かがあったわけでもなかったが目を覚ました。

静かすぎる森と明るすぎる闇がを深く眠らせてくれなかったらしい。

布団代わりのマントを身体から剥いで、軽く伸びをした。

すでにの物としてすっかり馴染んでいるマントに視線を落とす。

森の中には置き去りにされた荷物などが結構転がっている。

おそらく妖魔に襲われた際に捨てていった荷物、もしくは荷物だけが生き残ったのかもしれないが

それらをはありがたく頂戴していた。

の行為を罵倒する者もいるが、持ち主不明の荷物で助かる命があるならば使うべきだと思った。

実際拾った飲めない水を飲める様にする満甕石とこのマントを交換してくれた人だっている。

ようするにどんなにいけ好かない事でも、こうしなくてはここでは生きていけないのだ。

はマントを大事に畳んで、随分小さな荷物に押し込んだ。

完全に覚醒したは溜め息を吐いて寝るのを諦め、辺りを見渡した。

どう考えてもそんなに寝ていないが、誰もが寝ているだろうこの時間にまだ火が燃えている。

まさか火の不始末じゃないかと思ったは立ち上がって様子を見に行く事にした。

近付くにつれて声が聞こえてきて安堵の息を吐いた。

どうやらまだ談笑しているらしく、三人の男が楽しそうに火を囲んでいた。

に気付いた一人が気軽に声を掛けてきた。




「あぁ!こっちにきて一緒に話さないか?」




手招きする男は会話に華を添えてくれと楽しそうにしている。

寝付けないは会話に交ざりたいと思ったものの、なぜだか足がそれ以上前に進まなかった。

行きたいけれど、アレは危険だ。

轟々と燃える炎はを誘惑するように揺らめき、怖いくらい真っ赤であった。

ジリと一歩下がったはようやく首を横に振り、無理やり笑顔を作った。




「やめときます。あの・・・暗闇の火は危険だからすぐに・・」




の言葉は最後まで続かなかった。

真っ赤な真っ赤な炎が嘲るように強く揺らめいた瞬間、目の前にいた男は二人になっていた。

酷く静かで緩慢な時間が流れる中、の頬をポタリと何かが濡らした。

確かめるように手で頬に触れ、濡れた指に視線を落とす。

闇夜で物を確認するのにこれほど良い日はない。

何しろ眩しいくらいの月明かりだ。

の指を濡らしたそれは・・・・真っ赤な真っ赤な血だった。



* ひとやすみ *
・スプラッタッタ・・・!!怖い!!
 と、トマトジュースってオチじゃダメですか、ね?!  (09/05/17)