ドリーム小説
「これって何のために使う物な・・・あれ?どこ行った?」
気が付くとの姿がどこにも見えなくなっていた。
はキョロキョロと辺りを見渡して見たが、見慣れた白い髪の女性はどこにもいなかった。
手に取っていた商品を露天のおばちゃんに返して、は人混みに足を向けた。
「全く。いい大人が迷子になるなんて」
まるでが全て悪いような口ぶりなのがらしい。
溜め息混じりに文句を言いながらもは相棒の姿を探した。
プリプリしながら辺りを見回していると、何やら耳障りな音が聞こえる。
不審に思ったは耳を澄ませて音の出所を探っていると、小さな路地が目に入った。
足が進むままに路地を曲がると出入り口に布の掛けられた建物から怒鳴り声がしていた。
幼い声が悲痛な声を上げているのが耳について、はこっそり破れた布の隙間から部屋の中を覗き込んだ。
「万里を返してよ!!僕は知ってるんだ!おじさん達が人を騙して騎獣を奪ってるの!
盗んだ証書の中から三騅のを選んで万里を僕から奪うなんて!」
中では小さな男の子と数人の男達が言い合っていた。
必死に男に掴みかかった少年の顔を見ては思わず声が漏れそうになった口を塞いだ。
その子は一人で青毛の馬を連れてと同じ船に乗っていた少年だった。
話の筋から悟ると男達は旅人から騎獣を奪って売るのを商売にしているようである。
小さい子から騎獣を騙して盗むなんて大人の風上にも置けない奴らだ。
が物陰で怒りを募らせていると、男は腰元に縋り付いてる少年を見下ろしてニタリと笑った。
「よく知ってるじゃないか、坊主。でもな、あの三騅はもう俺達のもんだ」
「違う!万里は僕の友達なんだ!返してよ!じゃないと町中におじさん達の事言いふらすよ!」
「はは!悪いが証書は本物だ。お前みたいなガキと証書を持つ俺、みんな誰を信じるだろうな?」
「おい。ガキの声を聞きつけて人が来るかもしれねぇ。縛り上げちまおうぜ」
「やめて、放して!んん!んー!」
男達に少年が取り押さえられて口を塞がれたのを見たはさすがにやばいと思った。
無意識に身体が動いて飛び出そうとした瞬間、腕を掴まれては振り返った。
腹部に強い衝撃を受けて、そしてそこでの意識は途絶えた。
***
こめかみ辺りに水音を感じては瞼を震わした。
そっと目を開けると薄暗く、藁と何かの生き物の臭いがした。
どうやら馬小屋か何からしい。
生暖かい何かがこめかみを濡らして確かめようとするも、手足が縛られていて動けそうにない。
身体を捩って寝返りをうつとそこには闇の中に浮かぶように白い豹のような生き物が舌を出してを見ていた。
声にならない悲鳴を上げて芋虫のように身体を捩って離れると、豹が鉄格子の中に入れられていたのに気付いた。
暗闇に慣れていた目は他にも馬や鳥などのたくさんの騎獣を映した。
「まさかこれ全部、盗まれた騎獣・・?」
「そう。姉ちゃんを舐めてた白兎も盗まれたんだ」
「え?」
声がした方に首を向けると同じように縛られていた少年と目が合った。
疲れたように背を木箱に凭れさせて座っている。
それを見てようやく状況が見えてきた。
あの後、少年とは捕まって騎獣を入れておく小屋に一緒に放り込まれたようだ。
「あいつら商売するのに邪魔だって僕達をここに閉じ込めたんだ。
僕達に何かするつもりはないみたいだけど、このままだと万里が売られちゃう」
男達に掴みかかった強気だった少年が始めて涙声を上げた。
その声に反応したように近くに居た青毛の馬が嘶き、は口を引き結んだ。
面倒くさがりではあるけれど、嫌な事をそのまま放置できるような性格じゃないのがなのだ。
は相変わらず芋虫のように転がりながらも少年を見た。
「私は。君の名前は?」
「・・・阿南」
はキッと目を開き、眉根を寄せると立ち上がった。
阿南は目を見開いての足元に転がる縄を見てから、手にあるナイフに視線を向けた。
一瞬の内には手足の縄を切ってしまったのだ。
「心配しないでアニー。このがあいつ等をこてんぱんにやっつけてやる」
「姉ちゃん、どこから刀を・・・」
「ふふ。不二子スタイルは危険な旅には付き物なのよ」
「??」
* ひとやすみ *
・分かってくれる人には分かるあのスタイル!笑
やられっ放しは性に合わないの反撃が始まりますvv(09/03/19)