ドリーム小説
早過ぎた起床のせいもあってか、朝食も早かった。
どうやらがあちこち叩き起こして準備させたらしい。
申し訳ない事に雁主従はまだ夢の中なのにだ。
一応私達は賓客として扱われているらしく、粗相は出来ないとそれはそれは立派に務め上げてくれた。
広い部屋にと二人で座っていると、とんでもない量の朝食が部屋に運び込まれてきた。
誰が朝からこんなに食べるのー?!
当然て顔した白狼を見て思いっきり溜め息を吐いて諦めた。
給仕の為に立っている人達を意識の外へ追い出して手を合わせた。
「なんだそれは?」
向いの席から不思議そうな声が掛かって顔を上げた。
が私の合わさった手をジッと見ていてなるほどと思った。
「日本えーと、蓬莱では生きる為に食べられる命に感謝してから食事をするの」
「命?野菜は生き物ではないが?」
「じゃあ、生きてる物や作ってくれた人に感謝するの、はいも手を合わせる!」
も言われた通り合わせると私は頷いて笑った。
「いただきます!」
「・・いただきます」
そう言えば雁主従も日本の生まれだったっけ?
不意に玄英宮に連れて来られる間に聞いた話を思い出した。
美味しいシュウマイのような物を食べながら、給仕を振り返った。
「延王も延麒も胎果の生まれでらっしゃるから、もしかして・・・?」
「え?あ、はい。いつもそのようになさって恵みに感謝されています」
「だと思いました。こんなに美味しいんですから」
「ありがとうございます」
給仕達が嬉しそうに笑ったので、笑い返して目の前の食事に舌鼓を打った。
も言葉はないけど美味しそうに食べていた。
***
お腹を満たしてお茶を啜っていると、給仕の一人が来客を告げた。
思わずを見ると給仕に頷いて返事をしていた。
延麒かな、なんて考えていた所に服をカチリと着こなした男の人が入って来て頭を下げた。
彼が頭を上げると冠帽の布地がさらりと流れて目が合った。
「朝早くから申し訳ありません。朝食もお済だと聞き及びまして」
「いえ、初めましてと申します。延王とはスられた旌券を取り戻して頂いた程度の仲なのですが」
「が気にする事ではない。あれはかどわかされたと言うのだ」
何ともカッコのつかない自己紹介をするとが憮然と余計な事を付け足した。
延王の臣下の前で歯に衣を着せぬ言い方をする辺りがというか何というか。
ハラハラしまくってる主の事も考えろっての!
だけどの言い様に対し、驚いた事に臣下の彼も頷いたのだった。
「全くです。聞く所によれば妓楼に連れ込んだ挙句、使令を遣わしてまで玄英宮にお連れしたとか」
「あれに手綱でも付けてしっかり見張っておけ、朱衡」
がちらりと視線を上げて言えば、彼は驚いているようだった。
この表情を見る限り、知り合いではなさそう、だけど・・・。
「驚きましたね。遅れましたが、ご紹介に与りました、揚朱衡と申します」
服装も良い物を着て、見るからに知的そうな朱衡さんをつっ立たせている訳にもいかずお茶に誘った。
はホントに無愛想だ。
お茶に同席はするくせにどうも友好的な感じは微塵もない。
全く、困った白狼だこと。
「様は旅に出るとお聴きしましたが、失礼でなければどちらへ?」
綺麗に微笑んだ朱衡さんに答えようとすると向かいに座っていたが鼻で笑った。
思わずの方を見ればお茶に手を伸ばしながら嫌な笑みを浮かべていた。
「何だ朱衡。お前、探りに来たのか」
その声に肩が飛び跳ねた。
なんて事言うんだコイツは〜!!
「!何て物言いを・・!」
「ふん。は知らんだろうから言っておくが、こいつ雁の秋官長で食わせ者だぞ」
その言葉に思わず怒りを忘れて朱衡さんを見た。
秋官長と言えば法令や外交を行う官吏の長の事で、その手腕によって国の回りに大きな差が出る。
目が合った朱衡さんは微笑んで思考するように手を顎に当てた。
「確かに私は大司寇ですし、その私が聞けば探りともとれますね」
「え?朱衡さん?」
「そうですね。なら、探りに来たと申してみましょう」
「えぇー?!」
ニコリと言った朱衡さんに目を見開くしかない。
こんな風に言われたら探られる方はどうすればいいのやら。
を盗み見れば知らぬ存ぜぬを貫き、暢気にお茶を啜っていた。
「え、と・・。私から引き出せる事なんて何の価値もないですが、良ければいくらでも」
「ありがとうございます」
これから尋問が始まる、と覚悟していた私は肩透かしを食らった。
朱衡さんは話上手で尋問どころか楽しい時間を過ごす事ができた。
* ひとやすみ *
・出ました無謀殿!
いろいろ好き勝手動いてくれたので楽しかったですvv(09/01/25)