ドリーム小説
「あぁ、また会えたな




部屋に入るなり、城下の時と変わらず暢気に声を掛けてきた風漢さんに苦笑する。

いや、もう延王と呼ばないといけないだろうけど、全然変わらないその姿にこっちが可笑しいのかと思ってしまう。

それに隣で肩を震わす美しく白い連れに気を配らねばとんでもない事になりそうだ。

使令を遣わしてまで追いかけて来て、王宮に無理矢理連れてきた挙句に着飾られ、の怒りは頂点に来ていた。

綺麗なのになー。




「諸悪の根源め!この場で息の根を止めてやるッ!」




飛び出そうとしたの衣を掴んで思わず溜め息を吐く。

何でこんなに仲悪いかなー?

延麒も不安そうに身構えていた。

ホントうちの白狼が申し訳ない。

それでもまだ延王に飛び掛りそうなを窘めて一歩進み出た。

ここからが腕の見せ所。

お祖母ちゃんっ子だった私は何でか礼儀作法まで身に付けてるんだから。




「この度は延王自らお助け頂いたのにも関わらず、非礼を以ってお返しした事どうかお許し下さい。

 その代わりとして私に分かる事であればお答え致したいと思います」




言葉は精一杯だけど、叩き込まれた完璧な叩頭礼で言葉を締めた。

頭は上げられないから見えないけど、間違ってないはず。

これにはさすがのも驚いたようで、黙り込んだ。

思わぬ所で効力を発揮したけど、延麒にも効果抜群だったようで申し訳ない。

私の所にすっ飛んで来て頭を上げさせろと延王に噛み付いた。




「あのな、。ここに呼んだのは俺が王として六太に無理矢理命じた訳じゃない。単なる俺達の興味だ」

「そうだよ!だから頭を上げろ、な?」




ゆっくり頭を上げると延麒はホッと息を吐いて笑った。

その様子にむしろ悪い事をしたような気がしてきた。

立たされた私は延麒に手を引かれて椅子に座らされた。

横を見ると恐ろしい物が目に飛び込んできた。

が長椅子を陣取って寝転がってるー!!

この馬鹿狼ーッ!!


とりあえず、向かいに座った雁主従の疑うような眼光に対抗すべく向き直る事にした。




「6日前の蝕で雁に来たようだな。しかし、それにしてはこちらの知識が豊富のようだが・・」




お祖母ちゃんとの遊びで身に付けました。

なーんて言ったら、あの黒みたいな延麒の使令に噛み千切られるに違いない。

でも、嘘みたいなホントなんだってば。

だからと言って説明できるはずもなく説明に困る。

私にとっては確かに遊びの内だったけど、お祖母ちゃんはどうだったのか。

だけど、この疑問の答えを持つ人はもう居ない。




が困っている。質問を変えろ」




は長椅子に身を起こして延王を見ていた。

ちらりと様子を窺うと延麒が思わず身を硬くしていた。

そうですよねー。この二人、水と油ですもんねー。




「そうだな。ではこれだけ。とは初対面である事は確認したが、そなたとはどこで?」




これは私も気になっていた。

私はこちらに来る以前のの事は何も知らないのだ。

は興味の失せたように初対面だ、と投げ捨てて顔を背けた。

そうはいかない。

私だって気になってるんだから。




、ここに来て教えてよ」




試しにそう言ってみれば嫌そうな顔をしたものの、は私の隣に座ってくれた。

うわー!こんなに素直なの初めてじゃない?!




「私も知りたい。どうして延王の事を知ってたの?」

「・・前の主人と何度かここに来ている」

「玄英宮に?!」




驚いて声を上げた延麒にはちらりと視線を向けて目を閉じた。

何だかは延麒をよく知っている気がした。

何の理由もないけれど何となくそう思った。

顎に手を当てて思案していた延王が不意に言葉を零した。




「ではその簪、やはり瑞花に譲り受けたか・・」




その直後、が勢いよく立ち上がり、派手に椅子を倒した。

以外のそこにいた人達は、次に怒声がくると身構えたけどそれきり何も起こらなかった。

一体どうしたの?




・・?」

「主、これ以上長居は無用。お暇を」




私が口を開く前には手を引いた。

その瞬間、頭の中に何かの映像が流れ込んできた。


* ひとやすみ *
・玄英宮にて。
 簪の謎に迫りつつあります!!(08/12/30)