ドリーム小説
女の人は私を見て目を見開くとすぐ後ろに居た風漢さんに視線をやって唇を噛み締めた。




「尚隆ぁッ!!」




とんでもない怒声に六太さんと私は飛び跳ねた。

彼女を追ってきた店のお姐さん達も目を白黒させていた。

尚隆とは風漢さんの事なのだろうか・・・?

怒髪天を衝くとはこの事だろう。

怒り治まらぬ女の人はずんずんと私の方に来る。

何なの一体?!

すると私の手を引っ張って、抱き締めた。




「何もされてないか?」

「へ?・・うん」




な、何なのー?!








***








冷静さを取り戻した風漢、もとい、尚隆と六太はこの女性が風漢の本名を知っていた事に警戒心を抱いた。

それを理解したと同時に六太は集まってきた店の女達に心配ない、と声を掛けて下がらせた。

ここで風漢が延王だとバレると厄介だからだ。

六太はを大事そうに抱き締めている女性に目をやり、思案する。



( 一体この女は何者だろうか )



何より、畏れ多くも延王だと分かっていて呼び捨てる人物などそうはいないのだ。

一番混乱していたのは抱き締められているだった。

どうやらを守ろうとしているようなのだが、全く見知らぬ人なのだ。









( この人、誰なの?! )



雪のように白い肌って言葉があるけど、きっとこの人の事を言うんだと思う。

ぎゅうぎゅうときつく抱き締められて気付いたんだけど、この人意外に筋肉質だ。

と、そんな事考えてる場合じゃないって。

そろそろ抜け出さないと圧迫死しちゃう!





「さて、君のような美人の知り合いが居れば忘れたりはしないはずだが?」

「痴れ者が!誰彼構わず世迷言を口走るな」




風漢さーん!!刺激しないで!

これ以上きつく締められたら私昇天しちゃう!

怒り倍増って感じで叫ぶ女の人の腕を軽く叩くと気付いてくれたようで放してくれた。

新鮮な空気を肺に送り込んでホッとしてる間に何故か後手に隠された。

動揺しながらも女の人の後ろに回ると彼女の髪を纏めている簪が音を立てて揺れた。

私が小さく声を漏らすと同時に六太さんが怪訝そうに声を上げた。




「おまえの何だ?それに、この状況じゃ詳しく話を聞かなきゃならなくなった」

「ふん。そこの使令が飛び出せばここが血の海に変わるまで」

「ほぉ。そこまで・・」




何だか恐ろしい言葉が聞こえたー!!

ちょ、ちょっと待ってよ!ここで流血沙汰は勘弁して!

止めるように彼女の腕を強く引いたら、目が合った。

右側で纏めてある白い髪を靡かせ、振り向いたその人は射抜くようなエメラルドの瞳をしていた。

あれ、彼女の流した前髪の隙間に何かある・・・?

はっ!そんな事より暴力事件は止めなきゃ!

私が反対の意思を伝えるように小さく首を振ると女の人は溜め息を吐いた。

伝わった・・のかな?

とりあえずこの臨戦態勢を何とかしないと。




「えと、私の連れがごめんなさい。またいつか会えるといいですね」

「そいつがの言ってた連れなのか?」

「あぁ。またどこかで会えるだろう」

「冗談じゃない。いつもいつも主を誑かす野獣め!二度とに近付くな」




だから何でそんなに風漢さんの事嫌ってるの?!

言い捨てた女の人は私の肩を抱いて部屋を出るように促した。

もういいや。

とにかく逃げよ・・・。








***







「俺も嫌われたものだ」

「おまえ、本当に何したわけ?」

「知らん。本当に面識がない。だが、あの簪には見覚えがあるような・・」

「なんだそれ?しかし一体何者なんだあいつら。・・悧角、とあの女を追え。出来れば連れて来い」

『御意』




影が一瞬揺らめいて薄くなったような感じがすると六太は溜め息を吐いた。

確かに尚隆はろくでもない男だが、それでも麒麟である六太が選んだ王なのだ。

理由も分からず、見知らぬ人物に憎まれているのは気分が悪い。

だが、使令を走らせたのだから答えはすぐに分かるだろう。












その頃、は物凄いスピードで歩く女性に手を引かれながら困惑していた。


確信はないけど、言葉を発しない限りこの状況に終わりが来ない気がした。

まさかとは思うけど。

まさかとは思うけど・・・・




「あなた、もしかして・・?」

「・・・正午までが約束だった」




やっぱりそうだった!

覚えのある声とその言葉が答えだった。

姿には全く見覚えがなかったけど、彼女が挿していた玉の簪には嫌と言うほど覚えがあった。

足早に人混みをすり抜けるこの女性があの白い狼だったのだとは信じられない。




って女の子だったんだ」

「何だと思ってたんだ」




相変わらずの無愛想な話し方に声を漏らして笑えば、先を歩くが怪訝そうに振り返った。

前髪が風で舞い上がって額が露わになり、ようやくそこにあったのが自分が描いた印だった事を知った。




「約束破るつもりじゃなかったんだけど」

「尚隆相手じゃ仕方ないが、急がねば追っ手が来る」

「追っ手?」

「あのチビの手下だ」




苦々しげに呟いたに思わず首を傾げる。

なぜ六太さんが追っ手を差し向けてくるのだろうか。

と言うか、六太さんと風漢さんは一体何者なんだろう・・・。



大通りを抜けて横道に逸れるとは走り出した。

何で逃げてるのかもよく分からないんだけど、今はに付いていくしかないよね。

私の気持ちに気付いたのか、が問い掛けてきた。




「国の中で王の次に権力を持つ者が誰だか分かるか?」

「えと、宰補・・麒麟?」

「あぁ。では妖魔を使役する事の出来る六太は何者だ?」

『お止まり下さい』




その瞬間、目の前に灰色をした三尾の狼が立ち塞がっていた。

張り詰めた空気の中、答えが分かってしまった。

妖魔を使役できるのは麒麟だけだ。

では六太さんの上司だという風漢さん、いやが尚隆と言っていた彼は・・・。

お祖母ちゃんの優しい声がその答えを囁いた気がした。


* ひとやすみ *
・てな訳で、人になれます(笑
 これからいろいろ発覚していきます!・・・多分?   (08/12/27)