ドリーム小説
いつも通り朝早くにに叩き起こされた。

こういう早起きなトコお祖母ちゃんにそっくり。

やっぱりいつの間にかが獲って来た木の実を食べ、関弓の門の近くまでやって来た。




『ここから先には私はと共には行けない。役所に行って、やる事やって戻って来い』

「旌券、と服かな?」

『そう。その小汚い格好を何とかしろ』

「そんな風にしか言えない訳、?」

『何だ?海水と土に塗れ、狼に齧られた衣服を着替えろ、と言って欲しかったのか?』




相変わらず口の減らない狼だ。

私が苦虫を噛んだような顔をすれば、はニタリと笑って言葉を続けた。




『それと玉は私が預かる。ではスられるのが関の山だ』

「了解」




平和な日本で暮らしてきた事は実感しているのでこれには素直に頷いた。

有り難くも正午までには戻れとお声を頂いて門に向かった。

何とか門を潜り抜けて関弓に足を踏み入れて異世界を実感した。



本当に言葉が違うのだ。

外見も違えば、動物が普通に歩いている。

空飛ぶ虎や変な色をした馬に乗っている人もいた。

変な世界だ、と割り切って役所探しを始めた。

キョロキョロと周りを見渡して漢字のような文字で書かれた看板を見る。

宿屋、居酒屋、飯屋と上を見ながら歩く。

実は私、文字が読めます。

読めるついでに話せます。

話せる、読めるといっても単語で判断して簡単な言葉が話せる程度なんだけど。

高校生が話せる英語と似たり寄ったりといった所だ。

これも全てお祖母ちゃんとの言葉遊びの産物なんだけど。



ようやく役所を見付けて、人の流れを横断して居たら横から衝撃を受けてすっ転んだ。

行き交う人は私を避けて通ってくものの、その視線は冷たい。

何だよ、ちょっとくらい親切にしてやってもいいじゃんかー。




「おっと!すまない、大丈夫か?」




ぶつかったと思われる少年が慌てて私に手を差し出してきた。

無意識にその手を掴んで立ち上がると少年は怪我はないかと尋ねてきた。

訂正、親切な人も居るもんだ。



しかもこの子日本語喋ってる!

どう聞いても少年の言葉は日本語で、私は最初感動したものの次の瞬間ピーンと思い出した。

言葉に不自由しないのは仙籍にある者だけだというお祖母ちゃんの言葉を覚えていたのだ。

この少年は仙人なんだよね・・・?

こんな若くして仙人ってすごいな。




「どこか痛いのか?!」

「いいえ。痛い所はありません」

「悪かったな。少し慌ててて。その服装、あんた海客か?」

「はい。旌券を頂けると連れが教えてくれて」




私の胸ほどの背丈でターバンのような布を頭に巻いた少年は急に満面の笑みを浮かべた。




「あんたも胎果か!」

「そう・・なのですか?・・・も?」

「あ。いやこっちの話!蓬莱にも崑崙にも深緑の髪と目をした奴はいないだろう」

「深緑?!」




髪なんて今までまじまじと見る余裕もなく、暗い森では黒にしか見えなかった。

一つに纏めた髪を手繰り寄せてみると本当に濃い緑色をしていた。

胎果の事もお祖母ちゃんに聞いていたけど、まさか自分がなんて変な気分だ。

ホントにワカメみたいな色してる!

私が感心していると視線を感じ、何となく少年を見れば呆れた顔をしている。

急に恥かしくなって咳払いして頭を下げた。




「お引き留めしてすみませんでした」

「いや、おれの不注意だった」

「では」

「あぁ、頑張れな」




手を振って走って行った少年を見送って目の前の役所に入る事にした。







***







さっきぶつかった海客は不思議な奴だった。

旌券を貰いに来たのならこっちの世界に着いてそう経っていないのかもしれない。

向こうの姿は知らないが、姿が変わっていた事に気付いていなかったくらいだからきっとそうなのだろう。

なのに妙に落ち着いていたし、何かしっくり来ない。

そこでハッとした。




「しまった!!名前くらい聞いとくんだったぁ!!」




六太は悔しそうに頭を抱えながら人混みをスルスル走り抜けた。

まだ着いたばかりなら当分の間は関弓にいるだろうと目星をつけて、前を睨み付けた。




「それより先に尚隆だ!」


* ひとやすみ *
・ターバン少年と遭遇したのにあっさりさよなら。
 もうちょい粘りたかった・・・・。      (08/12/19)