ドリーム小説
イタリア某所、砦のように聳え立つ巨大な屋敷はイタリア最大と言われるマフィア・ボンゴレの拠点だ。

というか、マフィアなんだからもう少し地味に隠れたらいいのに物凄く目立っているのは何でだ。

その逃げも隠れもしない屋敷の厳重な警護の中に俺はいる。

何故か俺はボンゴレファミリーの10代目ボスとしてここにいるのだ。





季節は夏。

日本と違ってジメジメした湿気がないだけマシだけど、イタリアの太陽も容赦なく照り付けてくる。

部屋から見える小さな花壇に植えてある向日葵が早く花開きたいと言ってるみたいで可愛い。

そんな微笑ましい夏の陽気も、階下から聞こえてくる騒がしい足音で溜め息に変わった。

この屋敷でこんなに事件を持ち込んでくるのは一人しか居ない。




( また何かやらかしたな、アイツ・・・)




大きな声で失礼します、と叫んで勢いよく扉を開けたのは中学時代からよく知る獄寺隼人だった。

この暑い中、必死で走ってきたのか疲れている様に見える。

ホントにいつもご苦労様だよ。




「申し訳ありません10代目!!少し目を離した隙に・・!大階段で雲雀が交戦中です」




やっぱり・・・・。

慌てる隼人に俺はまた一つ溜め息を吐いて、氷の溶けきったグラスを掴んでお茶を流し込んだ。

グラスをコースターに戻して立ち上がるとソファで寝ていた少年に声を掛けた。




「リボーン、少し外すから後を頼むね」

「しゃあねぇな、あの馬鹿連れ戻して来い」




俺は返事を返して隼人と二人で大階段に向かった。

ボンゴレ最強の守護者と言われる雲雀恭弥。

本人は守護者になった気は毛頭ないらしいんだけど、利害の一致で協力してくれる所はすごく助かってる。

今回、久々に顔を出した雲雀さんに協力要請を出したら頷いてくれたので仕事を頼んだんだけど

どうやらそれが裏目に出てしまったみたいだ。

野次馬に声を掛けて道をあけてもらい、大階段に辿り着いて溜め息を吐いた。

そりゃこれだけ暴れれば目が離せなくもなる。




( これは修理に手間が掛かりそうだなぁ)




床は抉れ、エントランスは派手に踏み荒らされている。

そんな中、野次馬を気にせず楽しそうに戦っている二人が恐ろしい。




「わお、さっきので僕の匣盗んだのかい?」

「きょんのばか!よわいものいじめはダメって知ってるでしょ!」




雲雀さんと対峙しているのは小さなツインテールの女の子。

どう見ても釣合いの取れていない対立を見慣れてきたのが何だか悲しい。

真面目に答えない雲雀さんにむくれて奪った匣を構えた瞬間、雲雀さんの瞳が光った気がした。









俺がそう呼びかけるとは振り返って満面の笑みを浮かべた。




「パパっ」




は嬉しそうに両手を広げて俺の元へ走って来る。

その素早い変り身に苦笑した俺とは反対に、雲雀さんは眉根を寄せた。

走り来る娘を抱き上げるとは嬉しそうに首に縋り着いてきた。

可愛い娘に手を焼く父親というのも悪くはないけど、こうも元気だといろいろ大変だ。




、パパとの約束忘れたの?」

「炎はださない」

「うん」

「ごめんなさい・・・」



腕の中で落ち込んだに分かればいいんだよ、と言って雲雀さんを見た。

雲雀さんは腰に手を当てていて、何だか目が据わってる気がする。




「ねぇ、どんな風に娘を育ててもいいけど、君が正義だってその子に教え込んでるの?」




ゔ・・・。

実質、教え込んではいないのに何故か正義感溢れる少女に育ってしまったのだ。

雲雀さんに協力してもらう時はだいたい難しい仕事だったりするんだけど、その度にが雲雀さんに突っ掛る。

に見付からなければいいのだが、何せ雲雀さんは隠れようとしないからの目に入ってしまう。

やり方が気に食わない、と怒る娘に同意してやりたいのは山々だけど、仕事を回した本人としては頷けない。

今更のパパはどっちかと言うと悪の方なんだよ、なんて言える訳がない。

俺が言い澱んでいるのを見ては膨れて雲雀さんを睨んだ。




「パパをいじめるな、きょん!!」




怒ったは手にしていた匣を雲雀さんに投げ付けた。

娘よ、頼むから雲雀さんにケンカ売らないで・・・!

パパは雲雀さんが 怖 い ん だ か ら!!

飛んできた匣を片手で受け取ると、雲雀さんは懐に匣をしまった。

てか雲雀さん、こっち見てるー!!




「どっちが・・。じゃあね、




ど、どうなる事かと思ったけど、とりあえず一件落着らしい。

溜め息をついた雲雀さんはくるりと背を向けて屋敷を出て行った。

腕の中のは雲雀さんを追い出すように舌を出している。

内心溜め息を吐いてを降ろすと、今度は隼人がにガミガミ言い始めた。

何せ隼人は自称の教育係らしいから。

というか、頼んでもないのにそうなってたというか・・・。

最近は定着しつつあるし、も嫌がってはいないみたいだから放ってるんだけど

教育係が隼人ってすごく

・・・・・不安だ。









***








を連れて部屋に戻ると不機嫌そうなリボーンと目が合った。

何だかまた一悶着ありそうな気がする。

頼むから外れてくれ、 超 直 感 !!




「何でもかんでも首突っ込んで問題起こすな馬鹿!」

「む。なんでリボーンにバカっていわれなきゃいけないの?!」

「お前のせいでまたツナの仕事が増えただろーが」

「!!・・・うぅっ」




いつものやり取りにヒヤヒヤしながら机に着いた。

すぐに飲み物を手配してくれた隼人に礼を言って黙々と仕事をこなす事にした。

言い争ってはいるけど、年の離れた兄妹に見える二人の姿は微笑ましい。

まぁ実のところ、マフィアの娘ヒットマンなんだけど。



唇を噛んで泣くのを堪えている様子のにリボーンが仕方ない、と手を伸ばした。

隼人がテーブルに用のオレンジジュースを置いた瞬間に事件は起きた。




ゴツン・・・ッ!!




娘がリボーンに頭突きしたーッ!!

てか、無邪気って恐ろしい!

の驚きの行動にその場にいた俺と隼人は凍りついた。




「ちょっと背がおおきいからってうるさいっ!よわいものいじめはダメなものはダメだもん!」

「ぐっ・・!ほぉ、俺に手を出した奴がどうなるか教えてヤる




ちょっとリボーン、子供相手に大人げない!

しかもヤるって、字の変換おかしいから!!

リボーンが懐から拳銃を出した時に俺は嫌な予感がして叫んだ。




「ここで水鉄砲と水風船はダメだからね!」




その言葉にリボーンは舌打ちをして水鉄砲をしまい、も隠し持っていた水風船をしまった。

何故だか最近この二人、水鉄砲と水風船で争うのにハマっているらしい。

屋敷のあちこちが水浸しになっているのをよく見掛ける。

ギスギスした雰囲気に俺はの元へ行き、目線を合わせて屈んだ。




「リボーンが言いたいのは危ない事して怪我したらどうするんだって言ってるんだよ」

「けが・・?」




が不思議そうにリボーンを見ると、帽子を目深にかぶってソファに寝転がってしまった。

あれで案外いい奴だから・・・

って、これ以上、変な事思わないから本物の拳銃向けるの ヤ メ テ !

というか、心 読 む な よ !




「パパやリボーン、隼人が怪我したらはどう思う?」

「いやっ!」

「それと一緒だよ」




何事もないように振舞えた俺を褒めてほしい。

ニッコリ笑ってを撫でると何故か背後で鼻をすする隼人がいた。

何で泣きながら頷いてるの、隼人?!




「それとね、が弱い者イジメがダメだと言う様に雲雀さんにも正義があるかもしれない」

「いじめはダメ!」

「パパもそう思うけど、例えば雲雀さんが隼人をいじめてたとする、どう思う?」

「きょんが悪い!」

「うん。でも隼人がパパをいじめてたから雲雀さんが助けてくれてたんだとしたら?」

あ、あああ有り得ないッスよ!!




動揺して叫ぶ隼人をよそには黙り込んでしまった。

必死に弁解しようとしている隼人にうるさい、と言えばと同じように黙り込んだ。




「見ただけじゃ分からない正義もあるかもしれないんだ」

「・・・うん」

「どっちの言葉もちゃんと聞いて判断しなきゃいけないんだ。

 今日のはパパが頼んだ仕事だから雲雀さんは悪くないよ」

「・・・・帰ってきたらきょんにあやまる」




おてんば娘に微笑んで頭を撫でてやると、も照れた様に笑った。

今度こそ一件落着だね。




「流石です、10代目!」

「あーうん。ありがと」

(でもやっぱり雲雀に正義はないと思うッス)


* ひとやすみ *
・りぼん連載、やってきた!!(08/12/5)