ドリーム小説

その夜、雲雀家の電話が鳴った。

当然のように恭弥が出ると、相手は大好きな兄だった。




兄さん?今どこにいるの?もうとっくに夕食冷めてるよ」

『恭弥か』




すでに懐かしいの声を聞いて恭弥は小さく安堵の息を吐いた。

未だに隣の席に置きっ放しの昨日の夕食のご飯はカピカピだ。

の名を聞いてピクリと反応した両親を見て、昨日の今日で起こった事件を思い出して恭弥はドッと疲れた。

風紀委員のことだって全部兄さんがいないせいじゃないか。




「連絡なしで丸一日帰って来ないなんて何考えてるの?」

『悪い。当分帰れそうにない』




少し不貞腐れて問い詰めるようなことを言えば、さらに悲しい答えが返ってきた。




「は?ちょっと何言って・・・、「やあ、父さんだよ」




気が付けば手にしていた受話器がなくなり、隣にいる雲雀父の耳元に当てられていた。

恭弥は目を見開いて怒り、トンファーを出した。




咬み殺す・・・!




トンファーを振り回し、容赦なく急所を狙ってくる恭弥を雲雀父はかわしながら電話で談笑している。

雲雀母はその様子を見て、小さく溜め息を吐いた。

旦那さん、怒ってる恭弥が可愛くて仕方ないのね・・・。




『・・・父さん、電話奪って恭弥怒ってるだろ』

「羨ましいかい?とりあえず生きてるならそれでいいよ。留学ってことでいいよね」




呆れたようなの声が微かに雲雀母の耳に届き、安心したように笑った。

恭弥は恭弥で大好きな兄と話せず、本気で怒っている。




『悪い。終わればすぐに帰る』

「うん。君のウチはここだからね」

『あぁ』




その言葉にハッとした雲雀母も慌てて電話を握る雲雀父に駆け寄った。




「ずるい!旦那さん!私もと話したいのに!」

「僕が先に兄さんと話す」

、聞こえるかい?大人気だよ」

『あー・・・、恭弥、いい子で待ってろな。母さん、豆腐、悪い』

「そうだよ!君の部屋に大量のちくわがあったおかげで、僕は当分ちくわ責めだよ」

『ちくわ・・・?』




一つの受話器に家族がぎゅうぎゅうと集り、耳を澄ませているおかしな状況。

電話の向こうで何か思い当たるような声を上げているが謝った。




兄さんが謝る必要ないでしょ?父さんが無茶ばかりするから」

「そうよ!旦那さんのおかげで八百屋さん、夜逃げしちゃう所だったんだからね!」

「僕のせいなの?」

「「 当たり前! 」」

「ねぇ、どう思・・・・あれ?電話、切れてる」

「「 咬み殺す!! 」」

「え、僕のせい?」






***






「え?の居場所?イタリアじゃないかしら?あの子の出身地らしいし」

「多分ね。初めて会った時、イタリア語喋ってたからね」

兄さんってイタリア人だったんだ」

「「 え゙ 」」




親子の間に驚愕の沈黙が訪れた。

まさか、血の繋がりがないと知ってショックとかじゃないよね・・・。

夫婦同じ事を考えて、恭弥には養子だって言ったっけ、と焦った。

挙動不審な両親を見て、恭弥は溜め息を吐いた。




「何焦ってんの?兄さんに外国の血が流れてるのは見た目からして分かってたよ。

 ただ母さんの連れ子でハーフの線もあるかとは思ってたけど」

「ど、どこで覚えたの、そんな言葉」

「何で奥さんなの?僕は?」

兄さんに父さんと同じ血が流れてるなんて考えられない

「確かに。、しっかりしてるものね!」

「・・・・・」




落ち込む雲雀父を放って恭弥は強く優しくてカッコいい兄を思った。

いい子にして待ってるから、早く帰ってきて、と。

たとえ一滴も血の繋がりがなくても、僕の兄さんは兄さんだけなんだから。

だから早く帰って来て、いつものように笑って抱き締めてほしい。

待ってるからね、兄さん。


* ひとやすみ *
・一応完結!恭弥が素直!笑
 あの電話の裏側にはこんな事があった!笑
 やっぱり雲雀父のポジションはここで、恭弥は兄ちゃん大好きっ子です。
 一つ言える事は母は強し!!笑
 早く並盛に帰って来てね、お兄ちゃん!拍手お礼第三弾でした!            (09/09/17)