ドリーム小説
授業が終わり、俺は手の中の本の続きが無いか書架を見ていく事にして、友達とそこで別れた。
最近毎日のように覘いている本棚を一通り見て、最近見付けた穴場で本を読もうと足を運んだ。
するとそこには先客がいて、熱心に本を読んでいた。
日が当たる窓から光を浴びて、灰色の髪がキラキラと反射している。
あれは絶対兄さんだ。
本を読んでいるだけであんなに絵になる人物を俺は他に知らない。
「兄さん?」
邪魔してるのは分かってたけど、思わず声を掛けてしまった。
ゆっくりと見上げた兄さんは俺がここにいるのが不思議だと言わんばかりの目を向けてきた。
授業の帰りだと言えば、納得したように小さく返事を返した。
「よく俺が分かったな」
「兄さんはどこにいても分かるよ」
ホントにこの人は、自分がどれだけ目立つのか全然分かってないんだから。
あれだけ綺麗に佇んで外書読んでれば誰だって気付く。
あんまり厳かな感じだから誰も声を掛けられなかっただけだって。
兄さんは目が瞬いて「ディーノはすごいな」と言うから、思わず笑ってしまった。
***
兄さんの鞄の中には必ずと言っていいほど、何冊か本が入っている。
その内一冊は大体が外書で俺には到底読めそうもない物だ。
今も目の前で兄さんが読んでる本のタイトルも全く読めそうもない。
「兄さん、それ持ち込みだよね?」
「あぁ。学校やそこらの本屋じゃ売ってないから取り寄せた」
そこらで買えないような難しい本なのだろうけど、兄さんはいつもと変わらず軽い感じに目を通している。
俺が見ているのに気付いた兄さんはパタンと本を閉じて、表紙に視線を落とした。
「それ、何語・・・?」
「落語だ」
ラク語・・・?
一体どこの国の言葉なんだろう?
俺には全く聞き覚えがないけど、兄さんはどことなく面白そうな顔をしていた。
やっぱり何度タイトルを見ても分かりそうもない。
ホントに兄さんはすごい!
「すごいな。兄さんはホントにいろいろ勉強してるよね」
「俺がお前より少し長く生きてるからだろ」
当然のように兄さんはそう言ったけど、長く生きてるからたくさん物を知ってるんだとしても、
語学なんて学ばなきゃ身に付かない物だし、それだけたくさんの言葉を覚えるには兄さんだって努力したはずだ。
年長だからの一言で片付けてしまう兄さんが凄くカッコいい。
兄さんはそんな事よりと、俺の方に視線をやって、すぐに積んであった俺の本に目を留めた。
「ディーノ、その本の内容は物になりそうなのか?」
顎を少し動かして本を指した兄さんに心臓が止まると思った。
誰にもバレないようにカバーも全部変えていたのに。
兄さんが悪戯っぽく笑って俺を見るから、嘘は吐けないと観念する羽目になった。
「知ってたの?すっごく恥ずかしいから、皆には黙っててね、兄さん」
俺は仕方なくカバーを外して、中身を兄さんの方へ押しやった。
兄さんは少し目を見開いて、俺を見た。
何もそんな顔しなくてもいいじゃんか。
「まだこの通り出来た事無いけど、上級テクとかホントに凄くて!!」
『SMに学ぶ正しい鞭の使い方』は本当に為にはなるけど、難しい。
SM、つまりシンドラー・ミューミットは世界でも1・2を争う鞭使いだ。
裏ではこの名を知らない人はいないくらいだから、大先生の書籍で勉強してる俺に兄さんは呆れたのかもしれない。
だって、どうしても兄さんみたいな鞭捌きが出来るようになりたいんだ。
「俺、頑張るから見ててね、兄さん!」
兄さんはずっと黙って俺を見ていて何も言わない。
何だか凄く不安になってきて俯いていたら、いつもの優しい声で兄さんが言った。
「・・・・上手く出来るようになるといいな」
「ありがと、兄さん」
兄さん、俺、兄さんみたいにカッコよく鞭が使えるように絶対なるからね!
* ひとやすみ *
・純情少年!!!なのに兄の中身はスットコドッコイ。笑
突発ネタでしたが、私は書いてて楽しかったです!!
こんなしょうもないネタですが、そら様のお気に召されれば光栄vv
キリリクありがとうございましたー!! (09/07/31)