ドリーム小説

ベスターは良くも悪くも俺にそっくりだった。

俺の匣であるベスターは天空ライガーであり、ライオンとタイガーの交配種である。

感情が高ぶると古傷が浮かび上がるように、ベスターもタイガーパターンが浮かび上がる。

俺に似たベスターはプライドが高く、誰にも懐かずひたすら警戒心が強い。

ヴァリアー内でもベスターの姿はそう見られる物ではなく、未だかつて俺以外に触れた奴はいない。

だからが現れた今日だって、ベスターが警戒していたのは無理もない話だ。

気持ちよく寝ていた俺はベスターの唸り声で目が覚め、ちらりと視線をやるとがそこにいた。

急激に目が覚めたが、ベスターとがどうなるのか少しばかり興味があった。

狸寝入りを決め込んで観察していると、やはりベスターが迎撃態勢に入った。

足に力を込めて沈み込んで飛びかかろうとしているベスターに対して、は表情もなくただ足を引いた。

それだけだと言うのに空気が重い。

肌を刺すようなピリついた雰囲気に耐え切れず飛び出したのはベスターの方だった。

だが、の静かな言葉一つで足を止めることになる。




「待て」




ネコ科の瞬発力でに襲い掛かったわけだが、

その瞬間一気に膨れ上がった殺気にベスターは足を止めざるを得なかった。

まるで聞き分けの悪い子どもを窘めるかのような声音だったにもかかわらず、その言葉は絶対だった。

それくらいの放つオーラは力があった。

・・・くそ、俺まで肌が粟立ってやがる。

ベスターは瞬時に危機を感じてから跳び退って離れると、息を潜めるように身を低くして動きを止めた。

どうやらようやく気付いたらしい。

との圧倒的な力の差を。

明らかに怯えてる尻尾を見て俺は苦笑する。

すると不意にの纏う空気が緩んで呼吸がしやすくなった。

の奴、笑ってないか・・・?

おかしな奴だと眺めていると、ふと目が合った。

やべ、起きてるのバレたな。




「動くなよ」




は飼い主である俺にそう言うと、楽しげにベスターに近寄っていく。

俺は言われずとも邪魔する気はねぇが、ベスターがお前を許すかは知らねぇぞ。

・・・まぁ、この様子じゃ関係ねぇか。

流れるように軽やかに近付いて来るにベスターは完全に怯えて固まっていた。

逃げることもできずあっさりとにその身を許したベスターは完敗だった。

猫の子のように撫でられるベスターには優しげに毒を吐く。




「いい子だ」




その言葉は俺にとってもベスターにとっても不名誉な言葉だった。

いい子に甘んじていられるほど安い存在ではないとそう信じているからだ。

やはり俺に似ているベスターも屈辱だとばかりに怒りに震えていた。

勝てないと分かっていても敗北を認めるなんて出来ない。

それが俺であり、ベスターだ。

からすれば歪んだちっぽけなプライドだろうが、それを捨てれば俺達じゃなくなる。

怒りに身を染めたベスターにタイガーパターンが浮かび上がる。

それを見たが嬉しそうに笑う。




「ほら来いよ」




分かっているかのようにはベスターに掛かって来いと指で挑発する。

震えていたベスターはそれに乗っかる形で、短く吠えて恐怖心を打ち払いを倒さんと駆け出した。

そこからは一方的であった。

ベスターの本気を軽くいなしていくは本当に楽しそうに遊んでいるようであった。

引き裂く爪は叩き落とされ、噛み付こうとした口は抱き込まれる。

しかも合間合間に肉球を弄られ、鼻先を撫でられて好き放題される始末。

ベスターが本気になればなるほどその姿が酷く滑稽で、

過去の自分もこんな感じだったのかと思うと笑いが込み上げてきた。




「くっははは!ベスターもういい」




全く歯が立たなくて落ち込むベスターを手元に呼び寄せて宥めてやる。

相手がだから仕方ない。

次の機会に挽回すればいい。

声にはしてやらないがそう思いながら撫でればベスターが応えるように咽喉を鳴らす。




「もう少し遊んでてもよかったんだぞ?」




楽しげにそう言うにまたベスターの尻尾が下がる。

全くこいつは・・・。

意外とサディストな馬鹿に深く溜め息を吐く。




「俺の匣をダメにする気か、




心外だと言わんばかりに大袈裟に驚いたふりをしたは近付いて来てベスターを撫でた。

そして楽しそうにトドメを刺す。




「また遊ぼうな、ベスター」




力なく吠えたベスターは完敗だとを前に腹を見せて寝転がり、抱き着かれるままになっていた。

は面白そうにベスターに寄り掛かり撫で回している。

コイツ、案外何の意図もなく本当に遊んでただけなのかもしれねぇな・・・。

もしそうならばベスターは無駄に空回っていたことになる。

機嫌の良さそうなはベスターを撫でながら、土産だと酒を投げてきた。




「飲もうぜザンザス」

「くくく。そうするか」




何だか可笑しな想像をしてみたが、本当にそうだと面白いのにな。

笑う俺を不思議そうに見てくるにそんな幻想を見る。

酒の準備をしにきた部下がベスターを背もたれにしてるに驚く場面があったりもしたが、

途中でがポツリと零す。




「今度はうちのキーンとベスターを遊ばせてみるか・・・」




こいつ・・・!今理解した。コイツは根っからのドSだ!!

お前の所の幻獣と戦わせたらベスターが戦意を失って壊れるだろうが!

絶対にやめろと諭したが理解してない風だったので真剣に止めたら落ち込まれた。

この馬鹿野郎!今落ち込んでいいのはベスターだけだ!このドカス!!


* ひとやすみ *
 ・ザンザス視点でした。ベスター喋れないし。笑
 最近コミックスを読み直してベスター出て来た所でテンションが上がった!笑
 すんごいカッコいい感じだけど、ウチのザンザスと並べると何だか可愛くなった。あれぇ?笑
 兄様と付き合いの長いボスが正鵠を射ていたのですが、最終的に勘違いの上ドSでドカスって!笑
 久々に書けて楽しかったです!是非また遊びに来て下さいませ!                       (17/05/05)