ドリーム小説

部屋の扉が開く音がして、誰かが入って来た気配がした。

マンションで事務仕事に追われていた俺はやっつけ仕事で署名していて、顔を上げる余裕がなかった。

この執務室という名ばかりの一室で缶詰になっていた俺は、相手の顔も見ずに仕事を押し付けた。




「執事、そこの書類の残りの手続きを頼む」




いつものキレのある返事が聞こえず、顔を上げるとそこにいたのは弟だった。

はぁ、何でお前ここにいるの、ディーノ?

この部屋に出入りするのなんて執事くらいだから、まさかお前がそこにいるとは思わないじゃん。

・・・というか、最近入り浸ってるからここに居るのもう違和感もなくなってきたんだけど。




「チャオ、兄さん。顔見に来たぜ!まぁ、何でか恭弥もいるんだけどな」

「ちょっと通りがかったからね」




ディーノが扉を大きく開けると後ろから恭弥まで顔を出した。

はぁ?お前ら、暇なの?

この部屋、ホントに仕事しかないし、俺もあんまりかまってやれないのに何か楽しいのか?




「毎日同じこと言ってて飽きないか、お前達?」




心底不思議で仕方ないと弟達を見れば、目を逸らされた。

・・・まぁ、邪魔しないなら別にいいけどさ。

ちょっと今ホントに忙しいんだよね。

多分この二人がいるってことは執事がここにいないってことだ。

まだまだ山積する仕事に額を押さえた俺は溜め息を吐いた。

とりあえずここにある分は片付けてしまわないと後が辛い。

猫の手も借りたいほどの忙しさに俺は心底参っていた。




「恭弥、悪いが隣りの部屋から赤いラインの入った茶封筒を持ってきてくれないか。机に積んであるから」

「いいよ」




コクリと素直に頷いてくれた恭弥に礼を述べて、憎き書類に再び目を落とした。

どうしてこんな面倒な仕事ばかりあるんだろうか。

イライラしながらひたすら手を動かしていると、ディーノがポツリと呟いた。




「ホント忙しそうだな、兄さん」

「まぁな。お前もいろいろあるだろうにこんな所で油売ってていいのか、ディーノ」

「近々帰国しないとマズイけど、ジャッポーネにいる間はまぁバカンスってとこかな」




そーですか。スペックの違いですね。兄ちゃんは精進します。

グズグズと鼻を鳴らしながらひたすら仕事を片付ける。

いいもん。頑張る!地味だけど減ってるもん、仕事。

少しずつ片付いて行き、ある程度に達した所で、俺は時計を見た。

あれ、もうこんな時間が経つのか。

かなり集中していたようで気が付けばディーノはソファーで本を読んでいた。




「・・・なぁ、恭弥は?」

「ん?そういえば、あれから戻って来てないかも?まさか帰ったんじゃ」

「いや、隣りに誰かがいる気配はする。悪いが、少し見て来てくれ、ディーノ」

「分かった」




俺が恭弥に頼んでからいくらなんでも時間が経ちすぎてる。

でもまぁ隣りで動いてる感じはするから多分大したことじゃないだろけど、俺は一応ディーノに様子見を頼んだ。

俺の方もあと少しで終わりそうだし、そろそろ執事が帰って来る頃だろう。

ラストスパートとばかりに俺は仕事の片付けにかかった。

集中して短時間で終わらせた俺は、開放感に身体を解して首を鳴らした。

それでもやはり時間はかかっていて、時計の針はさっき見た時よりも半周回っていた。

・・・ていうか、ディーノも何で帰って来ないの?

報連相は大事だよね?ね?

さすがに二人も帰って来ない状況に不安になって俺はそろそろと隣りの部屋に向かった。

マジで何かあったのか・・・?

隣りの部屋の扉はほんの少し開いており、俺は恐る恐る扉に手を掛けて覗き込んだ。

ん、何か声がする・・・。




ー!ー!そうだ!頑張れ!あとちょっとだ!』

『坊ちゃんなら出来ますよ!』

、たっちよ!たっち!』




・・・・・・は?

何で俺こんなに呼ばれてんの?

あまりに不審すぎる状況に眉根を寄せて俺は室内へと踏み込んだ。

中には恭弥とディーノが揃ってソファーに座ってテレビを見ていた。

珍しいこともあるもんだ。

この二人が仲良くソファーでテレビ見てるとか、槍でも降るんじゃないの?

でもまぁ、何かおかしなことが起きてたんじゃなくてホッとした。

気が抜けた俺は相変わらず机の上に放置された封筒を手にして、悠々と近付いた。

つーか、お前ら、手握り締めて拳作って何をそんなに一生懸命見てるわけ?

小さく笑いながらテレビを覗き込んだ俺は一瞬で固まった。

な、に・・・・・?!




『きゃー!が立ったー!!』

『おい!見ろ!やっぱり俺の息子は天才だ!』

『坊ちゃんなら出来ると信じてましたよー!!』


「・・・うん」

兄さん、頑張ったなぁ!」




俺の幼児期のビデオだと・・・?!

、初めての掴まり立ち」と書いてあるケースがローテーブルに置いてあり、

無駄にデカいテレビ画面いっぱいに俺の幼い顔が引き伸ばされていた。

一体、お前ら何見ちゃってんのーーーー?!



* ひとやすみ *
・「全く、勝手に何やってるんだ」
 「「ごめんなさい」」
 「そんなのの何が楽しいんだ」
 「だって兄さんが小さくて俺弟だけど弟にしたいというか俺くぁwせdrftgyふじこlp・・・」
 「まさか兄さんがあんな最強な生き物だなんて思ってなかったから僕くぁwせdrftgyふじこlp・・・」

 「・・・まぁ、お茶入れてやるよ」

 だから落ち着け、弟達よ!


 そんな感じの閑話。思い付き話ですが、書いてて楽しかった!
 サイト200万打記念に突発的に書いたので零クオリティですが、楽しんでいただけたら嬉しいです!
 兄様の幼少期なんぞ知らない弟達がフィーバーした話。ついでに私の妄想も暴走したってだけです。笑
 ぽてっとした幼児兄様が上目遣いとか絶対いいよね!と言ったら、脳内の弟達にサムズアップ貰いました!
 いつも皆さん寂びれてる我が家に足を運んでくれてありがとう!今後も頑張りますのでよろしく!感謝を込めて!        (14/07/08)