ドリーム小説

燦々と柔らかな日差しの差し込むガーデンテラスに数人の給仕を侍らした美女が二人。

優雅な昼下がりを彩るようにテーブルを飾る可愛らしいスイーツに、気品溢れるティーセット。

小鳥がさえずるような愛らしい声がその場を占めており、楽しげな雰囲気が漂っている。

表情をコロコロと変えて明るく活発に話す少女は誰が見ても美少女と言え、

亜麻色の髪を複雑に編み込んで黄色いドレスに身を包んでいる。




「お姉様、はい、あーん」




少女がデザートフォークを手に乗り出した先には、また種類の違う美しさを持つ女がいた。

彼女はこの世のものとは思えないほどの美貌と色香を放ち、見る者を一瞬で虜にしてしまう。

長く艶やかな銀髪はまるでミルキーウェイのように不思議に瞬き、腰へと流れている。

それを引き立てるような黒のマーメイドラインのドレスが酷く美しかった。




「メアリー、それは遠慮したい・・・」

「お姉様、あーーーん」

「・・・・・分かりました」




メアリーと呼ばれた少女は笑顔で強引に意見を押し切り、ケーキを銀髪の女の口へと押し込んだ。

もぐもぐと咀嚼しながら、彼女はパコダスリーブの袖先を揺らして引き攣った口元を覆う。

メアリーはその青い瞳をウットリと細めて、満足気に笑う。




「美味しい、お姉様?」




はそんなメアリーの様子に冷や汗を掻きながら頷いた。

そう。は今、なぜかこんな珍妙な格好をしてティータイムを強いられていた。

彼がおかしな状況に巻き込まれている切欠は、これよりも数日前のこと・・・。









***








「ティエラが負傷したって聞いたが・・・っ?!ッ?!」

「うわーーーん!!あんな頭のネジの緩いバカ女に読み負けたなんて悔しいぃぃぃ!!」




突然の知らせに慌てて部屋に駆けつけてみれば、机に突っ伏したティエラが無事な左手で机を叩いて暴れていた。

俺が入って来たことにも気が付いていないようで、荒れに荒れているティエラに思わず呻ってしまった。

怪我は命に別状はないが結構重傷なようで、右手は固定され、足も包帯でグルグル巻きにされている。

俺は窓辺で腕を組んでいたセイヤーに近付くと、ティエラの怪我のことを聞いた。




「おー、ボス。怪我は腕の骨折がちょいと長引きそうだが他は軽傷だ。まぁ足は捻ってるからしばらく歩けねぇかな」

「そうか」




ガラは悪いが一流の医者であるセイヤーが言うのだからそうなのだろう。

軽傷の一言に安心した俺は、ティエラの嘆きっぷりが気になった。

いや、だってあんなに荒れてんの久々に見たぞ?




「あー、最近俺らにちょっかい掛けてた馬鹿がいただろ?鬱陶しいから叩きのめしに行って返り討ちに遭ったんだと」




え?何それ、どこかから干渉があったことすら俺知らないんだけど?

何かおかしな事態が起きていることにようやく気が付き、眉間に皺を寄せているとティエラが俺に気付いて顔を上げた。




ッ!ごめんなさい!私の不手際で事態を悪化させちゃった!あのポンポコ狸娘、とんだ化け狸だったのよ!」

「・・・気にするな。お前が無事でよかった」




目をウルウルさせて俺を見つめていたティエラはまた大声を上げて泣き出してしまった。

自己嫌悪なのだろうが、怪我した身で自分を痛めつけるように暴れる彼女が痛々しくて見てられない。

どうしたものかと悩んでいる内に、セイヤーが動いた。




「ウジウジうっせぇ!!騒音立てるくらいならこれ飲んでクソして寝ろッ!!」

「おい!」

「うぐっ?!」




やはり執事に鍛えられただけはあるというか、セイヤーは素早い動きでティエラの首根っこを掴むと、

酒瓶を口に突っ込んで一気に流し込んだ。

怪我人になんてことするんだよ、この野郎。

非難の目を向けていると何を勘違いしたのかセイヤーはサムズアップで爽やかに笑った。




「大丈夫!これ度数強いし即効性だかんな!」




何が大丈夫か?!

セイヤーを追い払おうと急に動いたティエラは目をトロンとさせて頭を揺らしていた。

うわー、医者って容赦ねーな・・・。

薄れゆく意識の中でティエラは俺の方を見て呂律の回らない舌で喋った。




「ごめんえぇ、ー。チクワもいないしぃ、もうしかいないのぉ。あとおねがいしあす」




パタリと机に伏せて眠ってしまったティエラに目を瞬かせていると、セイヤーが彼女の手を取った。

机を叩きすぎた左手が赤く擦れているのを手当てしながら呟いている。




「チッ。医者の前で怪我増やしやがって」




めちゃくちゃだが、やっぱ医者は医者なんだな。

セイヤーはベッドに寝かそうとティエラを担いだところで、思い出したように俺を振り返った。




「ボス、今回あの爆弾魔の後手に回って今リーダーはそっちの対処に追われて居ない。黒幕は無邪気な姫さんだが、

 はっきり言って目的のためには手段を択ばない馬鹿だ。そんでその標的はボスあんただ。・・・敵討ち頼むぜ」




えーーーーーーーー?!

ツッコミどころが多すぎていろいろ追いつかないんだが、どうしよう?!

え?え?つまり何?!

この状況、俺に解決しろって言ってんのーーー?!


* ひとやすみ *
・お久しぶりです。ちょっと気になるリクをいただいたので番外編投下です。
 いただいたリクとは少し違うのですが、想像力の乏しい私は普段の兄様から想像できず
 こんな形でのリク消化になりました。リクの内容含め、詳しくは次話以降で。
 相変わらず上手にまとめきれず中編と化しました!(番外5話と他視点+αで全6話予定)
 思い付き話ですのでいつもの残念クオリティですが、よろしければどうぞ。                         (14/07/01)