ドリーム小説

久しぶりに並盛に帰ってきたら、基地に人の気配がして思わず足が速くなった。

この風紀財団の地下基地に僕の許可なく入れる人間は一人しかいない。

急いでいることを知られたくなくて、息を整えてから部屋を覗くと、やっぱりそこには兄さんがいた。

脇息に肘を付き、障子の外にある人工の庭を眺めて酒を煽っている。

やっぱり、和室にしたのは正解だった。

昔ながらの日本家屋であるウチに似せたのだから和室になって当然だが、兄さんの和服姿は男の僕でも惚れ惚れする。

ウチと同じように気楽に和装でいられるここが居心地いいと、兄さんが笑った時からここは和服着用区域になった。

兄さんにずっとここにいて欲しいんだから、当然でしょ?

頃合いを見て兄さんに声を掛けると、今、気付いたようなふりをして、おかえりと言ってくれた。

哲が追い付いてきたので、僕は着替えてくると、声を掛けて部屋を出た。

その際に、匣の中で暴れていたロールを出してやった。

よっぽど兄さんと遊びたかったんだろう。

僕だって遊びたいのに。

不貞腐れながら歩いていると、ポケットにいれていた物の存在を思い出した。




「そうだ。これ、兄さんにあげる。僕はいらないからね」




術士もどき達から奪った指輪を投げ渡すと、兄さんは微妙な表情を見せた。

余計なことをするなってことかもしれないけど、表情が微妙すぎて判断出来ない。

今、兄さんの指には指輪は一つもない。

いくら炎なしでも強いとはいえ、今の兄さんは無防備にもほどがある。

唯一付けていたあの指輪は失くしたらしく、Cランク程度では兄さんの強大な炎を

受けきれないだろうけど、ないよりマシだ。


所詮、指輪なんて術士を咬み殺したらついてきたおまけだ。

だから気にするなって言ってるのに兄さんは変な顔をする。

相変わらず何を考えてるのか僕には全く分からない。

前に僕が六道骸をすごく気にしてるみたいなことを言ってきたことがあったから、

そのことを気にしているのかもしれないが。

僕が術士を調べてるのは、兄さんが術士だからだというのに、相変わらず兄さんはどこかずれてる。

確かに六道骸という男はかなり、・・・いや、物凄く気に入らない。

油断も隙もなく、兄さんにくっ付いてくるし、昔から兄さんの弟の座を狙ってちょっかいかけてくる変人だ。

余計なことを考えて何だか嫌な気分になり眉根を寄せると、すぐに着替えて兄さんの元へ戻った。




「ねぇ、ロールの後ろにいるあれ、何?」




戻った僕は何だか可笑しな鳥が庭に降り立っているのを見付けた。

あれだけ純白に光り輝いていれば目立たないはずがない。

白い身体と赤い鶏冠は間違いなく鶏なんだけど、あれはどう考えても普通の鶏ではない。

まず身体は大きく、足が長すぎるし、長すぎる尾羽は垂れ下がって床に着いている。

燃え盛る紅い鶏冠は獅子のたてがみのようにも見え、そして死ぬ気の炎を宿していた。

色合いはどうみても鶏だが、僕には鶴にも白鷺にも見えた。

知性を見せる金色の瞳が僕をジッと見つめると、威嚇するようにその鳥は翼を広げた。

するとその鳥は凛とした佇まいで鶏冠の炎をキラキラと何色も変化させた。

・・・面白い炎だ。

間違いない。あの複雑で何とも言えない炎は兄さんのだ。

あれは兄さんの匣。存在感といい、あの涼しげな瞳といい、兄さんそのもののようだ。




「・・・へぇ。あれ、兄さんのだよね?」

「・・・キーンっていう」




相変わらずこの人は秘密が多すぎる。

この様子だと、匣を見せるのは初めてなんだろう。

不機嫌そうに喋る兄さんに思わず僕は頬を緩めた。

また一つ兄さんのことを知れた上に、面白い研究対象が増えた。

僕を警戒しながらもキーンは咥えたちくわでロールを叩き潰そうと遊んでいる。

小心者のロールは面白いくらい震えて動けない。

兄さんの匣兵器であるキーンは本当に驚くほど兄さんと似ている。

秘密主義もいい所だ。

あの鉤爪のある長い足といい、長い尾羽といい、細く鋭い嘴といい、

おそらくあれは本来の姿ではないのだろう。

もっと大型の猛禽類に似た何か・・・。

僕はまた知るべき不思議に出会い、咽喉を鳴らして笑った。

本当に兄さんは予測不能だ。




「鳥ってハリネズミ食べるのかな?」




怯えてコロコロ転がるロールを見て、面白がってそう呟けば、ロールは勢いよく青褪めた顔で僕を見た。

すると一目散に僕の元へロールが逃げ込んできて、そのまま匣へと飛び込んだ。

キーンも逃げ去るロールを横目で見送ると、小動物で遊ぶのに満足したのか、鋭く一鳴きして匣へと消え去った。




「アイツがロールを食ったりするわけないだろ」

「分かってるよ。からかっただけ。あんまりすごい怯え方だったから」

「・・・お前な。あんまりいじめたらキーンに嫌われるぞ」




ロールの震えてる姿をからかったのだけど、呆れたように言う兄さんに僕は目を瞬いた。

どうやらキーンは仁義を尊ぶ生き物らしい。

この後、基地で目撃情報が出てくるが、兄さんの言葉通り、僕がキーンと会うのはかなり時間が経ってからになる。


* ひとやすみ *
・はい。恭弥視点での考察いかがだったでしょうか?
 何だかキーン様がカッコよく見えてきたら、してやったりなんですがね!笑
 相変わらず兄様が別人にしか見えないのが、書いてる私も不思議でなりません。(え
 さて、番外ヒーロー、少しは楽しんでいただけたでしょうか?
 今年もあと少しになりましたが、どうぞよいお年を!!                  (12/12/30)