ドリーム小説

ある朝、兄さんが姿を消した。

誰にも何も言わずに何の前触れもなく忽然と姿を晦ました。

最後に話した時も特に変わった様子もなく、少し散歩をしてくるような気軽さで兄さんは出て行ったけれど、

それきり帰って来なかった。




様はまだ見つからないの?!」




執事が狂ったようにあちこち電話をしているが、状況は芳しくないらしい。

当初、僕はまたこの執事が以前のように兄さんを拉致したのだと思っていたけど、

鬼気迫る勢いで兄さんを探しに家に駆け込んできたのを見て彼女も与り知らないところで何かが起こったことを覚った。

兄さんをよく知る跳ね馬ディーノや沢田綱吉、その他ヴァリアーにも問い質したが収穫はゼロ。

兄さんの足取りは飛行機で国外に出た所までは追えたものの、その先は完全に撒かれており未だ不明。

誰にも兄さんの行方が分からない。

つまりこれは兄さんが何らかの事件に巻き込まれ連絡も取れない状況にあるか、

もしくは兄さんが足跡を残さないように意図的に消えたかのどちらかだろう。

執事以下の組織は徹底的に痕跡を探すことを決めているようだけど、僕は少し違う。

あの兄さんが不覚を取るとは思えない上に、手掛かりすらないのは不自然だ。

僕には、兄さんが自分から足跡を残さないように消えたのだとしか思えなかった。

もし本当にそうだとしたら、あの兄さんが相手だ。見つかるはずがない。

僕は深々と溜め息を吐いて、兄さんが残した相棒を手に取った。




「兄さんの馬鹿。連絡は必ず入れろって言ったのに、どこほっつき歩いてるんだか・・・」




こんな大事なを残して行って一体何をしてるのか?

僕に何の相談もなく消えたことにモヤモヤしながらもう一度深く溜め息を吐いた。

この後、世界各地で兄さんの目撃情報が入って自主逃亡が確定するわけだけど、兄さんを掴まえられた奴はいない。

そして、僕たちはいたちごっこを数か月くり返すのだった。













そして、半年後、唐突にそれは終わる。

ずっと行方を晦ませていた兄さんが同じようにふらりと突然並盛に帰って来た。

もちろん駆けつけた関係者で騒然としたが、それ以上にとんでもない爆弾を持ち帰った兄さんに周囲は絶句した。

なぜか傷だらけでボロボロの兄さんが、腕に抱えていたそれを地面に置いて僕らに言う。




「息子だ。面倒見てやってくれ」




・・・・・・は?

呆然とする僕達とそれを置いて兄さんは少し寝るとフラフラしながら奥へと消えて行った。

言葉もなくその背中を見守った後、視線を彷徨わせると子どもと目が合う。

不安そうな表情をしているが、黄金色の瞳は真っ直ぐ僕を射抜いた。

僕の膝ほどの背丈の子どもだというのに、その目に背筋がゾクリとする。

酷く咽喉が渇いて声が出ない。

このおかしな状況をどうすればいいのか困っていると、緊張の糸が切れたのか背後で悲鳴が上がり周囲に混乱が連鎖した。




様の子どもぉぉ?!」

「嘘だろ?!」

「えぇぇぇぇ?!」




兄さんの子ども・・・。

有り得ない。本当に・・・?

兄さんにそっくりな小さな子どもにもう一度視線を向けて、僕は考えるのを止めた。

うん。無理。




「ぎゃあぁぁ!雲雀さんが倒れたぁぁぁ!」




ざわつく空気の中、闇が全てを遮断した。








***







目が覚めたら全部夢だった、のならどんなに良かったか。

僕を覗き込んでいた小さな子どもと目が合うと、子どもはすぐに傍にいた人物に駆け寄った。




「父さん、おきたっ」

「あぁ。恭弥、大丈夫か?」




子どもを撫でながらやって来た兄さんに僕は再び打ちのめされる。

・・・あぁ、やっぱりあれは兄さんの子どもなのか。

否定したくても否定できないくらい、あの子どもは兄さんに瓜二つだった。

二対の金の瞳が見下ろしてきて、現実逃避すらさせてもらえない状況に溜め息を吐いた。




「・・・兄さん、半年も連絡なく何してたの?」

「悪い。已むを得ない事情があった」

「それで、説明してくれるの?」




黙り込んで答える気のない兄さんに深く溜め息を吐いて諦めた。

半年前、ある日突然消息を絶った兄さんが、明らかに血縁である子どもを連れ帰った。

この時点で意味が分からない。

なのに子どもはどう見ても4、5歳くらいで、全く計算が合わない。

兄さんの隠し子?

・・・今頃、ディーノも執事も同じく卒倒してるんじゃないの?




「・・・兄さんの子ども?」

「あぁ。・・・まぁ、俺に子どもがいたことを知ったのは半年前だがな」




兄さんも知らなかった。

それはつまり、スケコマシで女タラシの兄さんがやらかしたってことか。

・・・いつかやるとは思っていたけど、実際にそうなると呆れてものが言えない。

兄さん最低。

あまりの事態に頭痛がして頭を支えて目を閉じる。




「母親は?」

「・・・死にたいのか?」




兄さんの昏く冷たい目を向けられて肌が粟立つ。

子どももいつの間にか青褪めて俯いている。

母親の話はタブーだったらしい。

どんな女が母親なのか気になる所だが、この反応からするとどうやらもうこの世には居なさそうだ。

すぐさま首を振って話を変える。




「兄さんの子どもとして扱えばいいんだね?」

「あぁ」

「・・・ねぇ、君、名前は?」




アルバムで見た幼い頃の兄さんにそっくりな子どもがちらりと僕を見る。

子どもは怯えたように顔を引き攣らせていたが、しばらくして小さく呟いた。




「・・・ジュニア」




その瞬間、兄さんを睨む。

ねぇ、それ、名前じゃないって知ってる、兄さん?

ふいと視線を逸らしながら兄さんは付け加えるように言った。




「・・・しばらくはそう呼んでやってくれ」




・・・分かった。兄さんに子育ては無理だ。

僕がしっかり育てないとダメな大人になるに違いない。

ビシバシ鍛えて立派な大人にしてあげるからね、ジュニア。


* ひとやすみ *
・お待たせしました!といっても特殊ネタすぎて万人受けしないやつです。
 夢小説の主人公の子どもとか誰得?俺得です。本当ごめん。
 兄様の子ども出ます。受け付けない人はここで戻って下さいませ。
 話の内容的に冒頭で注意喚起できず申し訳ありません。
 何それもちろん読むよという勇者はしばらく続くので今後もよろしくです!笑
 恭弥が張り切っている。嫌な予感しかしないけど、何卒またこの兄弟をよろしくお願いします!            (18/05/20)