ドリーム小説

げぇー・・・。

部屋の扉を開けて見たものにはゲッソリとした。

話があってここに足を運んだものの、中には物凄く機嫌の悪いザンザスが我が物顔で座っていた。

いや、まぁ、ザンザスが大人しい方がおかしいんだけど。

はそんな事を思いながらもいつも以上の不機嫌さに首を捻り、近くにいたルッスーリアに目配せした。

説明しろと言わんばかりの視線に肩を竦め、ルッスーリアが近付いてくる。




「オフだったのに急に仕事が入ったのよ」

「あー、なるほど」




心底納得したような顔で頷いたにふと説得に尽力していたスクアーロの視線が絡む。

ピリリと走った嫌な予感にはすぐさま踵を返した。

その努力も虚しく、背後で聞こえたのは最終宣告。




「だったらも連れて行きゃいいじゃねぇかぁ!」




背中に全員の視線が刺さるのを感じながら、ぎこちなく振り返れば興味を持ったようなザンザスの顔。

面倒を片付けるには今だと動いたベルがザンザスに何かを耳打ちすれば、限りなく寄せられた眉がピクリと動いた。

書類整理だの雑用は手伝えても、外に出るような暗殺部隊の仕事なんてに手伝えるわけがない。




「さっさと片付ける。行くぞ、




絶望的な顔をしたを部屋の面々は鮮やかな笑顔で見送り、楽しげなザンザスに背を押され渋々同行する事となった。







***






車に乗り込んだは真っ青な顔をして膝の上の手を握り締めていた。

ザンザスはそれに気付きながらも面白がって、何の説明もしていなかった。

ずっと黙ったままだったが口元に手を当て、気分が悪そうにしたのを見てザンザスは流石にギョッとした。

不安を煽りすぎたのだと気付いての肩を抱き、初めて震えていた事に気が付く。

そうだった。コイツが前に外へ出たのはマフィア関連で誘拐された時だった。

自分の迂闊さに舌打ちして、ザンザスはの頭に唇を落としながらあやす様に声を掛けた。




「ただの話し合いだ。危険はない」

「・・・ほ、んとに?」




ぎゅっとザンザスの服を掴み、不安そうに瞳を揺らして見上げてきたに思わず言葉に詰まる。

普段が普段なだけにの上目遣いはザンザスにとって物凄い破壊力があった。

それはもう苛めて楽しもうという本来の趣旨を反転させるくらいには強力な物で。

何より、ザンザスは甘やかして甘やかして甘やかした時のが見たくなった。

不安そうなの頬を手の甲で撫でてやると、くすぐったそうに目を閉じる。




「心配するな。だけは俺が守ってやる」




ザンザスが囁くようにそう言えば、はほっと息を吐いて柔らかく微笑んだ。

頬に当てられたザンザスの手の甲に擦り寄るようにありがとうと返した

耐え切れなくなって顔を近付ければ、も素直に目を閉じた。

二人の間に甘い空気が流れ、その唇が触れるまであと少し・・・。




「到着しました」




触れ合う直前に無粋にもパカリと開かれた扉にザンザスが銃をぶっ放したのは言うまでもない。












「え、えぇ?何でドレス?!」

「隊服なんか着せて行けるか」




状況がさっぱり飲み込めないは突然着せられたダークブラウンのロングドレスに動揺を隠せない。

突然車から降ろされ入った店の中でスタイリストに引ん剥かれ、着替えさせられ、髪を弄られたのだ。

大胆に開けられた背も、際どく裂かれたスリットも何もかもスースーして落ち着かない。

短時間で仕上げた店員は皆一様にハイタッチで健闘を称えあう。

としても悪い気はしていない。

確かに派手だが、色合いのせいかどことなく落ち着いていて品がある。

しかもこのコーディネートをあのザンザスがしたと言うのだからビックリだ。

センスがあったのかとしみじみと見下ろしていれば、ザンザスの視線に気付く。

首を傾げれば、近寄ってきたザンザスがの顎を掴んで上を向かせる。

ドキリとして赤い瞳を見返せば、乱暴に袖で唇を拭われた。

・・・・は?




「お前には赤よりオレンジの方が似合う」




キョトンと瞬きすれば、いつの間に手にしていたのかアプリコットカラーのルージュを丁寧にの唇に乗せた。

ザンザス、あんた、化粧まで出来るの・・・?

ルージュに蓋をしたザンザスは初めて気が付いたようにに視線を合わせて口の端を上げた。




「何だ、キスされるとでも思ったのか?」




不敵に笑ったザンザスがあまりにカッコよくては顔を赤らめた。

その背後で顔を手で覆い指の隙間からこちらを窺い見る店員に内心文句を言うと、

ザンザスはの耳に触れるように小さく囁いた。




「あとでいくらでもしてやる」




ザンザスに翻弄されるまま店を出たは火照る頬に手を当てて再び車に乗り込んだ。

今日のザンザスは絶対変!!

そんなに優しく見つめられたらドキドキして心臓が壊れてしまいそうだ。

頑なに窓の外を眺め、こちらを見ないの心を見透かすようにザンザスは喉を鳴らして笑った。






***






辿り着いた屋敷に入ればすぐに屋敷の主人と顔を合わせる事になった。

ギョッと目を見開いたのはだけでなく、主人もだった。

話し合いっていうか、これパーティーじゃん!

慌てて寄って来た主人がザンザス様が来るとは思わなかったと言うのを聞いて

最初は嫌だと駄々捏ねてたんですよと内心はそんな事を思った。

というか、パーティー嫌いなくせに何で突然来ようと思ったのかの方が謎だ。




「そちらの美しいご婦人はザンザス様の?」

「あぁ。妻だ」




妻ぁ?!

まさか婦人でなく夫人だとは思わず驚いた主人と同様には驚愕の視線をザンザスに向けた。

面白がっているような視線でを見るザンザスに眉間に皺が寄る。

これは、喧嘩売られてる?

そっちがその気なら、とはカチンときた心を隠すように主人に柔らかく微笑んだ。




妻のと申します。お会い出来て光栄です」




隣の旦那の腕に腕を絡めれば、主人は酷く焦ったように挨拶を返してきた。

それから小難しく血生臭い話を少しばかりした二人を余所には周りの視線に気付く。

ん?何か見られてない?

眉根を寄せて辺りを見回していると腰を引き寄せられ、カプリと噛まれた鎖骨に声を上げる。




「え、ちょ、こんな所で!」

「見せ付けてやれ」




気が付けば主人はそこにはおらず、ザンザスが甘えるように絡み付いてきた。

そそくさと視線を外したギャラリーに申し訳なく思いながらも、離れないザンザスに溜め息を吐いた。




「今日のザンザスやっぱり変よ」

「嫌じゃないだろが」

「そりゃ、まぁ、ね」




普段こんな事がない分、優しくされるのが嫌なわけじゃない。

だけど何だかむず痒くて落ち着かないのだ。

一体ベルに何を唆されたのかと視線で訴えるとザンザスはあっさり口を開いた。




「は?デート?」




キョトンとしたにザンザスは眉根を寄せる。

仕事ついでにデートして来れば、と言ったベルに乗ったのは、とあまり出掛けられないザンザスの罪滅ぼしと

今日一日自分の傍にいて欲しかったという我儘だ。

普段なら今日が何の日だろうと気にもならないのだが、なぜか無性にと離れたくなかった。

デートしたかったのかと首を傾げるに無言で返せば、苦笑したがそっとザンザスの腰に手を回した。




「仕方ないなぁ。今日だけだからね、旦那様」




思わぬ言葉に固まったザンザスにはクスクスと笑って、その気遣いに愛情で返そうと背伸びした。

今日はアナタが生まれた日だから特別。

アプリコットオレンジがザンザスの頬に触れ、腕の中で見上げてくるが優しく微笑んだ。




「アナタに会えてよかった。誕生日おめでとう、ザンザス」


* ひとやすみ *
・ま、間に合った・・・!!
 何が何でもザンザスの誕生日に上げなきゃと必死こいて出来た話。
 中編終了後の話を一足先に書いてみました。
 珍しく中編の二人が甘々で楽しかった!実は器用で甘えんぼなボスも素敵!みたいな。笑
 とりあえず、ハピバースデー、ザンザス様!!                             (09/10/10)