ドリーム小説

それに気付いたのは偶然だった。

どこからか呻く様な声が聞こえて来て、は自然と足を止めた。

不審な声の出所を探るべく、音の方へ歩き出すと廊下に何か転がっていて身構えた。

それはモソモソと動きながら苦しそうな声を上げていた。

恐る恐る近付くと、驚いた事にそれは伊達家の重臣、伊達成実であった。




「成実さんっ?!一体どうしたんですか!」

「あ、・・・もう俺、死んじゃう」

「しっかりして下さいー!」

い、今はに殺されそう・・・




ガクガクと揺れるがままに成実を揺らすに気持ちが悪そうに成実が呟いた。

揺れすぎて顔色が悪くなった成実が回復するまで少々時間が掛かったが、ようやくまともに話が出来るようになった。





「つまり、政宗さんにやられたと」

「うん。普段はそんな事ないんだけど、今日の梵の寝起きが最悪で、起こしに行ったら死にかけた」

「それは・・・大変でしたね」

「でも起きてくれないと今度は小十郎に俺が殺されちゃうわけ!頼む!、梵起こしてきて!」

無理です

「そんなキッパリ言わなくてもー!なら絶対梵飛び起きるはずだからー!」




泣きながらどこまでも足に縋り付いてくる成実に恐れを成したは思わず首を縦に振ってしまった。

深々と何度も溜め息を吐きながら、奥州筆頭の寝所に向った。

一応、部屋の前で声を掛けてみるものの、やはり返答はなく、諦めてこっそり部屋に入り込む。

薄暗い部屋をキョロキョロと見渡しながら奥へ進むと、布団から寝息が聞こえてきた。

見慣れた姿に少しホッとして、側に座り込むと反対側に政宗の相棒とも言える刀が置いてあるのに気付いた。

すぐ手が届く所に置いてあるのが、何だか政宗らしく思えては苦笑した。




「政宗さん、起きて下さい。朝ですよ」




揺らされるがままの政宗は一向に起きる気配がなく、成実のように吹っ飛ばされる気配もない。

困ったは成実が言っていた事を思い出して眉根を寄せた。




『髪を撫でながらが耳元で囁けば一発で起きるって』

『そんなんで人は起きません』

『梵は起きるよ』




ムスっとしながら、もしかしたら起きるかもしれないと思ったは仕方なくやってみる事にした。

恐る恐る髪に指を伸ばして驚いた。

思った以上に政宗の髪が柔らかく触り心地がよかったため、気付かぬ内に何度もスルリスルリと指を通していた。

ハッとしては耳元に口を近付けて悪戯っぽく囁いた。




 政 宗 さ ん の バ ー カ 




やはり起きる気配のない政宗にはクスクスと自分の言った言葉に笑った。

髪から手を離して込み上げる笑いを耐えていると急に目の前が真っ暗になって驚いた。

何度か目を瞬いてから顔を上げると、政宗の端整な顔がすぐ側にあった。

いつの間にかは政宗に布団に引っ張り込まれ、抱き締められていた。

目の前に鍛えられた肉体があり、引き離そうともがけばもがくほどキツク抱き締められた。




「ちょ・・!政宗さん離して下さい!」




暖かい身体に押し付けられて流石のも慌てるが、相変わらず返事が返ってこない。

まさかと思って動くのを止めると、耳に小さな寝息が飛び込んできた。




「嘘でしょ・・・。まだ寝てるの?」




恥ずかしがるより先に呆れたはもがくのを諦めて溜め息を吐いた。

ドクンドクンと心地よい音が聞こえるのが、不思議では耳を澄ませた。

一定のリズムを刻む心臓の音を聞きながらは小さく笑った。




「成実さーん。“布団に潜り込んで抱き着く”ってやつ、やらなくても不可抗力でそうなったんですけどー」




身動きの取れないはそれ以上、どうする事もできず、だんだん眠気がやってきた。

意識がボーっとし始めた時、は最後に言われた成実の言葉を呆れるように呟いた。




「“朝食は私”・・なんて言って起きたら苦労しないって」

「OK。据え膳食わぬは男の恥ってね」

「へ・・?」




間近から聞こえてきた声に目を覚ましたが見た物は、ニタリと笑った政宗の顔だった。

驚く間もなくクルリと身体を回され、気付けばが布団に寝かされていた。

覆いかぶさる様に政宗がの上に乗っていて、固定するかのように頭の横に両手を着いていた。

何が何だか分からぬ内に髪紐が解かれ、政宗の大きな手が撫でるようにの髪を梳いた。

ぱちぱちと目を見開いていると意地の悪そうな口元が耳に近付いて、吐息がかかる。

がビクリと身体を揺らすと政宗は楽しそうに笑って甘く囁いた。




「男の寝所に忍び込むなんて、襲ってくれって言ってるもんだぜ、Kitty?」




その言葉と髪を梳く手にはハッとして声を上げる。




「最初から起きてたんですね!」

があんまり可愛い事してるから起きたくなくてね」

「またからかって!そこを退いて下さい」

「No,no,no!据えてある物、食うのが常識だぜ、Honey?」

据えてません!

「黙って据えられとけ」

だから据えてないってば




近付いてくる政宗の顔には今度こそ悲鳴を上げた。

見ていられなくて顔を背ければ、首筋に政宗の髪がさらりと触れて肌が粟立った。

ギュッと目を瞑った瞬間、見知った声が低く耳を打った。




ならば私がお灸を据えましょう




天の助けのような声にはパチリと目を開けて泣きそうになりながらその人を見た。

逆に蛇に睨まれた蛙の様に動けなくなった政宗はぎこちなくその人を振り返った。




お早う御座います、政宗様

「よ、よう。小十郎、早いな」

「早起きは三文の徳とは誠のようですね」




お世辞にも優しそうに笑ったとは言えない小十郎の笑顔に政宗は息を呑んだ。

米沢城に轟いた怒声にだけがクスクスと笑っていた。

とんでもなく長いお説教に疲れ果て、精気を失った政宗には笑顔でまだ言っていない言葉を告げた。




「Good morning」




眩しいばかりの笑顔に政宗は目を細めて力なく挨拶を返した。


* ひとやすみ *
   ・BSRアニメ化記念作品!第二弾!
    痛い痛い痛い。ウチの金さん(小十郎)は伊達じゃねぇぞ?笑
    全部掻っ攫っていった小姑(違)に乾杯!Hey,girl.Thank youclapping!(拍手お礼作品)(09/04/15)