ドリーム小説

俺が沢田綱吉と出会ったのは雲雀の一員になってまだ1年と少しの頃だった。

当時12歳の俺に別れを告げる直前で、あの日は珍しく雪が降っていたのをよく覚えている。

俺は一人で街を歩いていた。

仲良くしていたご近所さんに俺が雲雀だとバレて、面白いくらい誰も近付いて来なくなったからだ。

どこをフラフラ歩いても俺の周りに人はいない。

ただでさえクソ寒くて寂しいのに、白い世界に俺一人・・・。

思わず吐いた溜め息が白くなって視界を覆った。

その時、向かいから走ってくる人影が俺には天使に見えた。

いや、まぁ、しょんぼりしていたせいだったのかもしれないけどさ。

長い髪を振り乱して走ってくるお姉さんは本当に可愛くて俺の中で鐘が鳴った。

一瞬にして白く色のない世界が幻想的に見え出して、俺は何を思ったかお姉さんに声を掛けることにした。

今思えば、あんな勇気を振り絞るなんて一生に一度あるかないかだ・・・。




「お姉さん、そんなに急いでどこ・・・」




俺の言葉はそこで切れた。

というか、切れざるを得なかった。

むしろバビュンと効果音が付いていたと断言してもいい。

近年稀に見る清々しいまでの素無視だった・・・。

お姉さんが走り去り、完敗を記した俺は初恋と同時に初失恋の二冠を征した。

どれくらいそこに立ち尽くしていたのか足が冷たさと痺れに悲鳴を上げ、重く感じた。

家に帰ろうと歩き出した瞬間、尋常じゃない足の重さに驚いて足元を見ると何だかおかしな事になっていた。




「・・・・・・」

「・・・・・・」




何だか物凄くコロコロした物が俺のズボンを掴んでいる。

しかもガン見されてるし。

てか、一体いつの間にこんなことに??




「・・・子供?」

「・・・・ぅ、」

「・・・・う?」




1、2歳くらいの男の子は物凄い握力で俺のズボンを握り締めて離しそうにない。

何か言いた気に言葉を発した子供に首を傾げた途端。




「ぅうあぁぁぁぁん」




うえぇぇ?!

そんないきなり泣かれても、一体俺にどーしろと?!

俺の方が泣きたいっつーの!!







***







最近ホントにチビとばかり係わってる気がする。

まぁ、俺も大概チビだけどさぁ・・・。

恭弥と同じくらいの子だからか、扱いも慣れたもので抱き上げてあやすと泣き止んでくれた。

むしろ恭弥は手がかからないから、この子はどちらかと言うとディーノ寄りなんだけど。




「母さんと逸れたのか?」

「家は分かるか?」




まだメソメソしてるが、俺の質問には答えてくれる。

コクンと頷いたり、フルフルと首を振ったり、何だかまるで小動物を手懐けているみたいだ。




「俺は。お前、名前は?」

「・・・つっくん」




つっくん・・・?

つよし、つばさ、つ、つ、つなよし・・・?

え?あはは、いやいや、まさか、な・・・?




「沢田綱吉・・・?」




コクンと頷いた子供を思わず落としてしまいそうだった・・・!

おいおい、マジかよ?!

気付かないって、普通!

面影なんて・・・・、そういや、めちゃくちゃあるけども!!

どこまで情けないんだ、俺・・・。

深々と溜め息を吐いた俺はどうしたものかと頭を悩ませた。

送って行きたいのは山々だけど、家が分からん上に聞く人もいないときた。

迷子の鉄則はその場から動かないことだけど・・・。




「母さんが迎えに来るまで俺と遊ぶか、綱吉」




パァっと顔を輝かせた綱吉はコクリコクリと数回頷いて笑った。

うぅ、可愛いな、チクショー。






***






車のボンネットに薄っすら積もった雪を集めて小さな雪ウサギを作ってみたり、

肩車してやったりして遊んでいると不意に叫び声が聞こえた。

ピクリと反応した綱吉が急に走り出して、俺は顔を上げて凍り付いた。

あー!!さっきのお姉さん!!




「ツっくん!」

「ままっ」




何だろう、この二重のショックは・・・。

俺を無視したお姉さんは人妻で、しかも奈々さんという残酷なオチ付き。

何だか二度失恋した気分なんだが・・・。




「ツッくんと遊んでくれてたんですって?ありがとうね、えーと?」



君ね!ほら、ツッくんも君にありがとうして」

「にーちゃ、ありがと」

「・・・母さんが見付かってよかったな、綱吉」




嬉しそうにコクンと頷いた綱吉はやっぱり小動物みたいで可愛かった。

もちろん奈々さんも可愛い、そして俺はとっても可哀想・・・。

バイバイ、俺の初恋・・・。




「ばいばーい」




振り切るように歩き出した俺の背に綱吉の拙い言葉がまるで失恋に同意するかのように投げ掛けられた。

お前、それ追い討ちじゃね・・・?

うぅ、さすがブラッド・オブ・ボンゴレ。

痛いトコ突きやがるぜ、チクショー。


忘れられるはずもないそんな切ない出会いをした雲雀12歳の冬・・・。


* ひとやすみ *
・なんともショッパイお話です。
 ツナと初めて会った時のことですが、もれなく失恋が付いてきます!笑
 まぁ主人公まだ12歳ですが、奈々さんの魅力には勝てなかったよう。
 そんなこんなで、拍手お礼作品です!!!                     (10/04/01)