ドリーム小説
あー、今年も今日で終わりかー。
新聞のテレビ欄に毎年恒例歌番組の名前を見付けて何となく今年を振り返る。
・・・・・・・・・・・・よく生き残ったよなぁ。
大晦日だと言うのに朝早くから恭弥は見回りに行った。
本人が言うには「年の瀬には草食動物が群れて馬鹿をするから」らしい。
アイツなんであんな並盛大好き人間に育っちゃったんだろう?
解けない謎に首を傾げながら冷蔵庫の中身を見る。
ほとんど空っぽじゃん。
ニューイヤーデートと称して両親はどこぞへと旅行へ出掛けたので今年の年越しは恭弥と二人だ。
買い物に行くなら今日しかないんだけど、恭弥今日帰って来るのかな?
晩御飯を気にしながら俺は携帯を取り出し、恭弥に電話を掛けた。
呼び出し音が耳元で数回鳴ったと同時に、背後で並中校歌が響き渡った。
「恭弥の奴、携帯忘れて行ったな」
椅子の上に落ちていた携帯を見つめて少し考える。
どうしよっかなー。
俺は財布とジャケットを掴んで玄関に向かった。
決めた。
買い物ついでに恭弥を探そう。
俺は寒空の下、ジャケットに袖を通して外へと飛び出した。
草壁Jrに連絡を取ってみた所、恭弥は学校には行っていないらしい。
一体、どこにいるんだか・・・。
ふらふらと町を歩くとちらほらと注連縄やら蜜柑を見付けて、年末だなぁと笑ってしまった。
年末ならではの雰囲気に気を取られていると突如として甲高い声が上がった。
「サマ!!」
「あぁ!君に参加してもらおうよ!」
「さあさこっちだよ!!」
近くにいた女の人達が凄い勢いでガッシリと俺の腕を掴んでグイグイと引っ張る。
え、な、何なの?!
強引に連行され、人の輪の中に押し込められると拍手が起きた。
何で俺、祭り上げられてんのー?!
異様な盛り上がりの集団の中にポツンと置いてあったそれに俺は思わず声を漏らした。
「これって、
杵と
臼[?」
「おうよ!恒例の餅つき大会だ!君もやんな!」
「剛さん?!」
杵を持って楽しそうに声を掛けてきたのは竹寿司の剛さんだった。
何と言うか、やると言わなければ俺が杵で殴られそうな雰囲気で怖い!
おずおずと受け取ると歓声が沸き上がり、俺は目の前のもち米に向かわされた。
・・・頼むから疲れる前に餅になってくれよ?
俺はやけくそで振り上げた杵を湯気を上げる臼に叩き付けた。
・・・・・・・・・あっは!!
何だコレー?楽しいぞ?
振り上げる度に周りから何故かよいしょコールが掛かって何だか笑える。
ひっくり返してくれるおじちゃんがあまりに素早い動きをするから思わず杵をつくのも速くなる。
どんどんスピードが上がってるけど、余裕でひっくり返される。
おじちゃんスゲー!!
「
兄さん、何やってるの?」
振り返ればそこは十戒。
恭弥が歩くたびに人の群が逃げるように割れる。
モーゼか、お前は?!
そういや、俺、恭弥探してたんだっけ。
何してるって見て分かるだろー?
「餅つき」
「僕にはその人をいたぶってるようにしか見えないんだけど?」
えぇー?!おじちゃん何で泣いてるの?!
おじちゃんがひっくり返した餅をついてただけじゃん、俺ー!!
何でー?!
落ち着かない気分で振り返ると恭弥が臼の中の餅をジッと見つめていた。
え?何?お前も餅つきしたかったの?
何だよー。なら早く言えよなー。
俺の持っていた杵を恭弥に貸し、腕まくりをして臼の横に座った。
「やってみろ、恭弥」
俺ってば弟想いのいいお兄ちゃんだー。
恭弥はツンデレだから恥ずかしくてやりたいって言えなかったんだよな。
そんな凄まじく嫌そうな顔をしてても俺には分かるぞ!
恭弥の顔をずっと見上げているとゆっくりと臼に近付いた恭弥は杵を落とすように餅をついた。
ぺちっと音がしたと同時に観客から悲鳴が上がったのは何でだ?
こら恭弥、叫ばれたからって睨まないの!
***
出来上がり味付けされた餅を分けてもらって恭弥の元に戻れば、何故かトンファーを出していて驚いた。
お前、何する気だよ?!
まさかトンファーで餅つきたいとか言わないよな?!
「恭弥、遊ぶなよ」
「・・・兄さん」
いくら餅つきが好きだからって食べ物で遊ぶのはダメだ。
渋々トンファーを仕舞った恭弥の口にあべかわ餅を突っ込んでみれば少し驚いていたけど、もきゅもきゅと食べていた。
何か、餌付けでもしてる気分だ。
面白くてジッと見ていたら恭弥が美味しいと呟いたので驚いたけど、俺は嬉しくなって視線を逸らした恭弥の手を掴んだ。
「帰るか」
「そうだね」
何だか巻き込まれた形での参加だったけど、餅つき楽しかったな。
この時の俺は恭弥がついた餅が魔除けの餅として恐ろしいスピードで出回る事をまだ知らなかった。
家が目の前に見えた時、俺はハッとして足を止めた。
・・・・・・買い物するの忘れてた。
「ねぇ兄さん、何か欲しい物ある?」
は?何だいきなり?
買い物に行こうと恭弥に言おうとした途端にそう言われ思わず眉根を寄せる。
「何か買い忘れか?食料がないから俺も・・・」
「違うよ」
「?」
呆れたような顔をして首を振る恭弥に俺は目を瞬いて首を傾げる。
さっぱり分からん。
何なんだ、一体・・・?
「明日、兄さんの誕生日でしょ」
・・・・・・あー。
冷蔵庫の中身に焦りまくっててすっかり忘れてた。
そういやそうだ。
それで何が欲しいの?とどこか呆れたような声で恭弥が聞いてくる。
そんなこと言ったって欲しい物なんてそうすぐに思いつかないって。
悩む俺に何でもいいよって言う弟は何だか逞しい。
んー、何でもいいのかー。
そうだな、なら・・・。
「初日の出を一緒に見に行こう」
「・・・そんなのでいいの?」
そ、そんなのって言うなよー!
必死に考えた物なのに!
キョトンとしている恭弥に少し拗ねながらもやっぱり嬉しいの方が大きくて、俺は思わず恭弥の頭を撫でた。
だって俺のこと祝おうとしてくれたんだよな!
「1年の初めを恭弥と始めれるんだ。それで充分だろ?」
一瞬驚いたような顔をして眉を顰めて視線を逸らした恭弥に俺は笑った。
その気持ちだけで充分だよ。
照れてる恭弥の手を引いて元来た道を戻り、今度こそ買い物へ向かう。
「来年もよろしくな、恭弥」
「当然だよ」
「まだ年も越してないのに改まった挨拶は変な感じだな」
「いいんだよ。明日は兄さんに年始の挨拶を言うつもりないから。兄さんが生まれた事を祝うだけで手一杯だよ」
あー、もう!
俺の弟、めちゃ可愛いでしょ?!
でも残念、俺のだからあげない!
恭弥は明日、祝いの言葉は誕生日おめでとうしか言うつもりがないらしいから、俺が今の内に言っておこう。
明けまして・・・いや、明けましたらおめでとう!
来年もどうせチキンなヘタレだろうけど、俺をどうぞよろしく頼むよ、諸君!
んじゃ、よい年をな!!
* ひとやすみ *
・イブです!前夜祭です!大晦日ですッ!!
クリスマスで反省したので正月くらいは!と張り切っておいて何故か元旦でなく
大晦日ネタという微妙な感じの仕上がりに・・・・。
いいのかな、これが今年最後の話で・・・?笑
誕生日が発覚しちゃった話でもあるんですが明言してしまって申し訳ないです!
恭弥が可愛いという話でしたが(違)こんな弟欲しいと思った人、残念!
にあげないと言われてしまいましたねー。笑
あいかわらずグダグダですが来年も頑張りますので最弱ヒーローはもちろん
よあけうたをどうぞよろしくお願いします!では、よいお年を!! (09/12/31)